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LAのカオスな売り場を見て思う エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年2月12日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

LAのカオスな売り場を見て思う

 今週はロサンゼルスに出張中です。現地で、何度か考えさせられる光景を目の当たりにしたので、皆さんにお話したいと思います。

 最初のショッキングな光景は、ビバリーヒルズのバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)。経営破たんに伴う閉店セールの終盤戦でした。

 キラキラしていたバーニーズの面影は、もうどこにもありませんでした。ショップは、まるで暴動にでも遭ったかのようです。店内は「EVERYTHING MUST GO(完全売り尽くし)」などのポスターに覆われ、70~90%オフの商品は残りわずか(それでも「ヴェトモン」のブルゾンは同じ色が20着以上並んでおり、無計画なバイイングの一端も垣間見えます)。商品が売れて空いたスペースには立ち入り禁止のテープが貼られ、残りの洋服は別のラックに移されてギュウギュウ詰め。シューズは散乱。ハンガーは折れ、ショーケースの上にはスターバックスのカップさえ放置されていました。地下のビューティ売り場では、香水が10ドル~という破格値で、文字通り「投げ売り」されています。香水のテスター、カラーコスメを拭き取るコットンなどのゴミ箱は、バーニーズの黒いショッパーでした。

 写真は数枚撮りましたが、その後は悲しくなってスマホのシャッターが押せません。およそ15年前、NYの貧乏学生だった僕にとって憧れの存在だったバーニーズの、アメリカでの終焉を実感しました。

 ビバリーヒルズのバーニーズは、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)とサックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)の並び、ロデオ・ドライブの手前にあります。バーニーズの帰り際にニーマンとサックスにも立ち寄りましたが、平日の夕方という時間帯のせいもあったのでしょう。グランドフロアのバッグ&シューズ売り場さえ、買い物客の姿はまばらでした。一方のバーニーズは、長年のファンという感じではありませんが、多くの人で賑わい、皆ショッパーを持って店を後にしています。そりゃ、そうですよね。2019-20年秋冬の商品が70~90%オフで買えるなら、誰もがバーニーズを選ぶことでしょう。

 翌日はダウンタウンに移動し、市内のオフプライスストアを見て回りました。ノードストロム・ラックと、メイシーズ・バックステージです。こうしたオフプライスストアは通常、郊外や定価販売店から離れたところに位置しますが、両店の立地はダウンタウンの中心部。メイシーズ・バックステージはなんと、ロサンゼルスのメイシーズ旗艦店の地下1階に位置しています。さぁ、雰囲気は……。皆さんの想像通りです。特にメイシーズは、ヒドい。こちらは土曜日のお昼に見学しましたが、ビューティフロアの1階さえ買い物客はまばらです。そしてオフプライスストアのメイシーズ・バックステージは、昨日のバーニーズ同様のカオスです。こちらは人さえ少なかったのですが(苦笑)、ビューティコーナーには破損したコスメも多く、什器はファンデーションまみれでした。

 お願いだから、アウトレットやオフプライスストアは、もう街中に進出しないで!!「甘っちょろい」と言われるのは百も承知ですが、心の中で、そう叫び続けた週末でした。メイシーズにいたっては、旗艦店の数メートル下でオフプライスストアを展開するなんて、自分たちの首を締めているのみならず、プロパーで商品を買おうとしている消費者さえ愚弄しているようで腹が立ちます。「あなたたちの在庫処理で、業界全体への不信感を煽らないでいただけますか?」、そう進言したいくらいです。

 日本でもオフプライスストアが増えそうな気配ですが、お願いです。都心には出店しないでください。オフプライスストアが都心に巣食ってしまったロサンゼルス、アウトレットが街中に溢れるミラノを見る限り、それは中・長期的な視点で考えると、業界のためにならないんです。

 幸い、日本ではアパレル企業のワールドが、オフプライスストアの先駆的存在になりそうです。ワールドには、事業体としての視点ではなく、業界の一員という視点で出店戦略を立案していただきたい。遠いロサンゼルスの空の下から今、そう願っています。

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