ビューティ

頼もしい!!SNSでも大義を発するビューティ勢 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年2月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

頼もしい!!SNSでも大義を発するビューティ勢

 ターゲティングされているのか、それともアルゴリズムなのかは分かりませんが、出張先のロサンゼルスでツイッターのタイムラインに流れてきたプロモーション投稿は、大義や意志を発信する高尚なものが多かった印象です。例えば「ニューヨーク・タイムズ(NEWYORK TIMES)」のプロモーション投稿は、同メディアの新プロジェクト「1619」に関するもの。「『ニューヨーク・タイムズ』は、#1619project、奴隷として連れてきたアフリカ人を乗せた船がバージニアに着岸した1619年に歴史を刻み始めたアメリカを考えるエッセイや批評、アートをお届けするプロジェクトを始めました」という文章で、2000を超える「いいね」と500近いリツイートという高インプレッションを叩き出しているようでした。ベライゾンは、「1つのネットワークと、1億3000万の異なるストーリー。今週は、アフリカン・アメリカンのピント一家にフォーカスして、それぞれのユニークなストーリーに敬意を表します」という投稿です。TVCMとかキャンペーンのお知らせばっかりな、日本の携帯キャリアの投稿とは一線を画しています。

 ただ、アメリカでもファッション系の投稿は、まぁ予想通りでした(笑)。「ジャストフィット?それともリラックス?あなたの体にピッタリなデニム、5つのシルエットがあります」とか、「純白のシャツという定番が、アナタの凡庸な日常をスペシャルなものに」とか。インプレッションは、「ニューヨーク・タイムズ」やベライゾンと比べると、ゼロが2つは少なそうです。歴然たる差を見て、先週お話しした新連載に向けて取材した方がファッション業界について、「デザイナーは素晴らしい志のもとに洋服を生み出しているのに、『インフルエンサーが使ってくれた』とか『バズった』みたいな形でしかプロモートしないし、それでしか認められないように見える業界でツラそう」と話しているのを思い出したり。いずれにせよ、「共感」が大事な時代にも関わらず、そして、意志を堂々と発信できるハズのアメリカでさえ、ファッションのSNSは「共感」のとっかかりである意志が発信できていないのです。

 なんてちょっと寂しく思っていたところ、出張の主たる目的だった「SK-Ⅱ」の東京2020オリンピックに向けたプロモーションがスタートし、心救われた気持ちになりました。「SK-Ⅱ」は先週、夏のオリンピックに向けて、望まない競争を克服してきた6組のアスリートによるSNS投稿を皮切りに、女性を苦しめる美における競争、例えば思い描く理想像や他人との比較から解放されることを願うキャンペーンをスタートしました。

 正直に言えば、このキャンペーン、概要を理解するのは決して簡単じゃありません。大義への思いが強すぎるせいか、東京2020オリンピックというハレの舞台を意識しすぎてしまったせいか、“頭でっかち”な印象もあります。でもファッション&ビューティの世界から、こんなに大義を堂々と掲げ、SNSにおいてさえチャラい投稿は潔しとしない心意気を見せつけたことが嬉しいのです。6組のアスリートの1人、体操のシモーン・バイルスのインスタグラムを見ると、彼女の投稿には早速、膨大なレスポンスが寄せられています。ブランド公式アカウントの投稿も、8割はポジティブです。ただ、分かりやすいセレブにまつわる投稿に比べれば、インプレッションは少ないよう。でも返信の質は、明らかに今回のキャンペーンの方が高いように見受けられます。量より質をとるべき時代、「SK-Ⅱ」のようなプレミアムブランドならなおさら、正直そう割り切っても良いくらいの時代。ブランドの戦略は、未来につながる一歩として、正しい判断に基づいているように思えます。

 実は今、同じくビューティの世界でもう1件、大義を前面に押し出し、反対に製品はほとんど出さないキャンペーンの取材に携わっています。こちらも影響力のある人の発信を皮切りに、議論が巻き起こり、最終的には女性が古臭い何かから解放されることを真剣に願っており、正直、だからこそ取材に携わりました(笑)。皆が大義を持ち、それを発信しようとする取り組みが加速したら、ファッション&ビューティの世界はもう一度盛り上がるでしょう。少なくとも僕の取材は、日々もっと楽しくなるなぁとワクワクします。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。