※この記事は2020年2月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
言う・言わないは自由 でも言う時、プレッシャーを感じない環境を
実は右耳は聞こえが悪く、携帯電話は常に左耳。話し相手は正面、もしくは左側にいて欲しいし、特に海外の方が右側に座っての会食は、かなりの集中力を要します(とはいえ、口の動きでだいぶ分かります)。僕は左耳だけピアスを大量につけているのですが、それは学生の頃、「左耳に注目してもらえたら、会話がラクになるな」と思ったのがきっかけでした。
と、「なんで今更、そんなコトを話したのか?」と言いますと、「最近、そんな話をしたから」なんです(笑)。「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」が日本でも発売する、障害者に贈る新ライン“トミー ヒルフィガー アダプション(以下、アダプション)”の展示会で、そんな話になったのです。今の会社に入って13、4年経っていますが、あんなに自然に耳のことを話せたことはありません。多分、今回のお手紙で「え、そうなの!?」と思っている同僚は多いと思います(笑)。それが“アダプション”の展示会では、初対面の人にさえ、振り返ればビックリするくらい自然にお話できたんです。
無論“アダプション”の展示会では、「障がいのある人は~」とか「手が不自由でも~」なんて話がたくさん登場します。そこで記憶に蘇ったのは、大学で専攻した障害児教育の知識と幾らかのボランティア活動。「実は大学で障害児教育を専攻しまして~」なんて話から、「その理由は、右耳が聞こえないからでもあるのですが~」となったワケです。すると、その場にいらっしゃった方が、「僕は胸にペースメーカーを入れていて~」と続けます。で最後は、「こういう洋服があると、なんだか言いやすいかもしれないねぇ」と笑ってバイバイ、となりました。
そうなんです。僕は別に右耳のコトを隠しているつもりはありません。ただ、殊更にいう機会もないんです。だから周りは当然知らなくて、もしかしたら「話しかけた時、無視された」なんて思っている人もいるかもしれない。実は社内では同僚に「話しかけづらい」と思われているフシがあるのですが(笑)、もしかしたら「言う機会がない」から「相手は知らない」状況は、その理由の一つなのかもしれません。
昨年、インクルージョン&ダイバーシティー特集で取材した「ルルレモン(LULULEMON)」は開店前、些細なことでも口にする時間を設けているそうです。例えばその時間に飛び出すのは、「実は子どもが熱を出しちゃって、今おばあちゃんが看病しています。だから私、今日はスマホをたくさん見ちゃうかも」くらいの話。些細ですが、話を聞いていれば「あぁ、熱出したんだもんね」と納得できて、反対に話を聞いていないと「何で今日、スマホばっかり見てるの?仕事中だよ!!」ってストレスが溜まる。だからこそ、なんでも口に出すのです。
この手の話は、「言ってくれれば~」と言っちゃう機会が多いのですが、そうじゃないんですよね。「言ってくれれば~」は、言える環境じゃなかったってコトなのです。目指すは、「言う」「言わない」は自由だけれど、「言う」と決めた人が、プレッシャーを感じずに言える環境を作るコト。とりあえず私は、「話しかけづらい」のイメージを払しょくせねば、と思います(笑)。
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