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対処療法を脱して、原因療法に エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年2月21日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

対処療法を脱して、原因療法に

 ここで予告ばっかりして、「いい加減、記事アップしてよ!!」と言われてしまいそうですが(苦笑)、構想中の新連載で取材した方が、「『時間がない』という人は多いが、『時間がない』の正体は何か?を考えることが大事」とおっしゃった時、「なるほどなぁ」と思いました。「時間がない」のはナゼ?ではなく、「時間がない」ってナニ?を考えるのは、僕も20年言い続けてしまっている常套句にサヨナラするための第一歩なのかもしれません。「『時間がない』のはナゼ?」と考え始めると、多くの人は会社の愚痴か自己批判で終わっちゃいそうですが、「『時間がない』ってナニ?」と考えてみると、例えば僕の場合は、「仕事が最優先と決めちゃったから(一応w)、他の時間を捻出できないんだな」となりまして、それを是とするか、非とするかの判断に迫られます。是とするなら、自分で決めたんだから「時間がない」って愚痴る機会は減りそうだし、非として別の何かを始めると決断したら、それはそれで自分で新しいタイムマネージメント、もしくは24時間・365日の配分を再考しそう。これまた「時間がない」って口走っちゃう機会は減りそうです。

 と、今はなるべく対処療法ではなく、原因療法的なアプローチを取るよう意識しています。もう一つ、対処療法と原因療法について考えたエピソードをお話ししましょう。「『WWD JAPAN.com』に上がってくる、“ニュース”が足りない」問題です。

 皆さん、なんとなくお気づきかもしれませんが、最近の「WWD JAPAN.com」は、いわゆる昔から変わらないニュースが減り、ストーリーにシフトしています。その理由をお話しするとメチャクチャ長くなるので別の機会にと思いますが、事実関係だけを網羅したニュースから、業界を長年見続けてきた記者だからこその組み立て方、視座、意見、想いを盛り込んだストーリーに発展させようと試みており、賛否両論ありますが、数字の上ではかなりの成果をあげています。が、それでも「WWD JAPAN.com」が最新情報をお届けするメディアであり続ける限り、ニュースは切っても切り離せません。こと勝手気ままな僕と一緒に仕事をしてくれる、日々のコンテンツを統括するウェブデスクは「ニュースが足りない!」と危機意識を感じており、デスク会議はしばしば「ニュースは、どうすれば出てくるのか?」を考える時間となります。具体的には、紙とウェブの住み分けから、デスク陣の後輩への指導・監督、記者本人のタイムマネージメントなどが話し合われるワケです。

 しかし最近、それでいいのかな?と思っています。周りは「めんどくさい」と思っているかもしれませんが(笑)、僕は、「良きタイミングだから、ニュースってナニ?」を考えるべきでは?と思っているのです。

 ぶっちゃけた話、私には、ストーリーもニュースです。パフォーマンスが良いのでミラノでも頑張ろうと思っているドタバタ日記は、ブロークンな文体ではありますが、デザイナーの人間性やメゾンの変遷に基づく最新コレクションの咀嚼法を語っているものと信じており、読者に新たな知見を提供できているとしたらニュースと同等です。ゆえに「ニュースは、どうすれば出てくるのか?」に対する僕の意見は、「ニュースは、出ている」。おそらく、個々の記者がもっとのめり込めるハズのストーリーもニュースと皆が解釈できたら、議論すべきは住み分け方や指導・監督、タイムマネージメントではなく、自主性の尊重や取材カテゴリーと表現方法の拡大、記者のパーソナリティー強化とその発信などにシフトします。対処療法の議題より、ずっとワクワク。正直、長年議論し続ける、つまり何にも前進してない「ニュースは、どうすれば出てくるのか?」から決別できそうな気がするのです。

 こんな風に対処療法ではなく、原因療法的アプローチで物事が考えられると、パラダイムシフト真っ只中の今と向き合うマインドセットが、ずっと能動的かつ前向きになりそうです。コレに転換するのは容易ではないのかもしれませんが、試す価値アリかな、と思っています。

 ちなみに「対処療法」。別名を「姑息的療法」と言うそうですね。姑息なコトばっかりを考えて生きるのは、イヤだなぁ(笑)。

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