※この記事は2020年6月15日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
国産の服は何%?
日本に流通する服のうち国産品の割合はどれくらいだと思いますか。
5割? 3割? 1割? いえいえ、正解は2.0%です。
日本繊維輸入組合が5月に発表した「日本のアパレル市場と輸入品概況」の2019年度の数値です。つまり家庭のタンスに100枚の服があるとすれば日本製はたった2枚。個人差はあるでしょうが、平均するとそうなる。1990年には5割が国産品でした。平成の約30年間で激減しているのです。
もう少し数字を細かく追っていきましょう。日本に流通する衣料品は約39億枚で、うち8741万枚が国産です。かつて10億枚以上だった国産は09年に2億枚を割り込み、その後10年も経たないうちに半減しました。国産品は高価格帯の商品が多いため、金額ベースでは10%台のシェアがあると言われていますが、それもかつてに比べて40ポイント以上も低下しています。平成の時代は、中国などアジアに生産拠点が雪崩をうつように移転し、低コストで作られた低価格の服が市場に溢れかえりました。一方で国産品は風前の灯になってしまいました。
5月のレナウンの経営破綻に続き、同社の子会社でスーツを製造するダーバン宮崎ソーイング(宮崎県日南市)が民事再生法を申請したと報道されました。全従業員150人が解雇されたそうです。“メード・イン・ジャパン”の代表的な工場として、けっこうメディアでも紹介されてきました。私も取材したことがあります。レナウンの親会社である中国の山東如意科技集団は、この工場をブランド化して中国で売り出そうと計画したこともあります。
新型コロナウイルスによって製造業の国産回帰が注目されています。サプライチェーン(供給網)をグローバルに複雑に広げすぎたため、今回のように不測の事態が起こった際に調達できなくなる。2月から5月半ばまで店頭から消えてしまったマスクなどが典型です。
しかしアパレルに関していえば、盛り返すのは極めて厳しいと言わざるをえません。そもそも店頭で服が売れなければ、工場の経営はひっ迫してしまう。コロナ禍で大手セレクトショップの突然のキャンセルによって工場が大量の在庫を抱えるトラブルもありました。長期の消費低迷が予測される中、アパレル各社は今後の生産量をぐっと絞り込むでしょう。
2.0%のメード・イン・ジャパンを死守するための知恵が求められています。
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