ファッション

4つのオーガニックコスメブランドが真摯に取り組む海洋プラスチック問題

 「WWDビューティ」の5月28日号では、毎年恒例企画「オーガニック・ナチュラルコスメ特集」を企画した。2015年に国連機関で「SDGs(持続可能な開発目標)」と「パリ協定」が採択されて以降、サステナビリティへの関心は年々高まっている。そこで今号は、持続可能な農業生産法の一つとされるオーガニック(有機栽培)原料を用いる化粧品ブランドを取材し、製造から販売までサプライチェーン全体で取り組む環境対策について聞いた。

 その中の一つである海洋プラスチックごみの問題は、世界中で関心を集めている事例でもある。特にウミガメの鼻にストローが刺さった映像が広がったことで、一気にプラスチック製のストローが廃止されたことも記憶に新しい。ただ、現在も年間800万トンが海洋に流入しており、50年にはその量が海にいる魚の量を上回るという予測もされている。ビューティ業界は化粧品のボトルにプラスチックやガラスを使用することが多いため、海洋プラスチック問題に真摯に取り組んでいる。中でもオーガニックコスメブランドはその先陣を切っているといっても過言ではないだろう。代表的な4つのブランドの活動を追う。

製品原料にプラスチックビーズなどを使用しないパイオニア的ブランド「ヴェレダ」

 1921年創業のオーガニックブランドのパイオニアである「ヴェレダ(WELEDA)」は、天然由来成分に徹底してこだわっていることから、製品原料としてプラスチックビーズやシリコーンなどは使用しないというポリシーを持つ。プラスチック容器に関してもバイオプラスチックや再生プラスチックの割合を22年までに65%以上(18年時点は29%)にすること目標とする。

 また使用済みの容器は、リサイクル事業を手掛けるテラサイクルと協業し店頭での回収が日本でも始まっている。ガラス瓶も継続して使用しながら、プラスチックの利便性(輸送時のCO2削減など)を生かしつつマイナスの部分は企業努力でカバーし、今後も環境と人にとって最適な選択をしていく。

プラスチック廃棄を年間34トン以上削減する「ロゴナ」

 1970年代にドイツで初めてオーガニック食品を取り扱った店をルーツに持つオーガニックブランド「ロゴナ(LOGONA)」(2018年からロレアル傘下)は、高品質なオーガニック成分を使用し、自然由来成分による界面活性剤を開発する技術力に長けており、シャンプーやクレンジングなど洗浄系の製品の製造を強みとしている。消費者への透明性も重視しており、ドイツの化粧品ブランドとして最初に全成分表示を始めたことでも知られる。

 「ロゴナ」では自然療法士の国家資格を持つ創業者が唱えた「エコロジカルな経済活動が、世界をよりよくしていくために貢献する」という理念のもと、製造から物流、販売までサプライチェーン全体で環境に配慮する。プラスチック廃棄物削減にも力を入れていて、昨年からシャンプーを手始めに、100%リサイクルPETによるプラスチックボトルへの切り替えを進めており、ドイツでは年内にスキンケア製品のボトルが新しい容器に変わる予定だ。それに伴せて化粧箱も廃止する。プラスチック容器の使用に際しては、密閉性がないため中身が揮発することを前提としながら、化学成分による防腐加工をせずに安定を維持する処方の実現に技術をつぎ込むとともに、再生プラスチックの衛生面や安全性のテストにも時間をかけた。「ロゴナ」では100%リサイクルPETへの容器への切り替えにより、プラスチック廃棄を年間34トン以上削減する。

化粧品会社で初めて100%再生PETのパッケージを2002年に導入した「アヴェダ」

 米国発の「アヴェダ(AVEDA)」がリサイクル素材をパッケージに使い始めたのは1993年。可能な限り最高の品質を確保するためのベストな方法をテストし続け、徐々にシフトしていった。そうした取り組みが実を結び、化粧品会社として初めて100%再生PETのパッケージを2002年に導入した。さらに08年には、100%再生高密度ポリエチレンのボトルと100%再生ポリプロピレンのキャップを採用したのも、化粧品業界で初めてだった。今年1月には、100%再生高密度ポリエチレンのボトルを使用した、スーパーフードのパワーを実感できる新ヘアケアシリーズ「ニュートリプレニッシュ」を発売し話題を集めた。現在は全製品の約85%が再生PETのパッケージとなっており、今後は100%を目指す。

 店舗での使用済み製品の回収にも乗り出し、19年にテラサイクルのサポートを得て東京・表参道の旗艦店アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ 南青山に回収ボックスを設置。今年2月からは、新宿ミロード店と伊勢丹新宿本店、そごう横浜店にも回収ボックスを設置し、資源の循環を推進するリサイクルプロジェクトを実施している。回収した製品容器は分別・再資源化し、プランターなどに再生して再利用する計画だ。

マイクロプラスチックの根絶を啓発する「トリロジー」

 ニュージーランドのオーガニックブランドでローズヒップオイルで知られる「トリロジー(TRILOGY)」は、化粧品のスクラブ剤として使われるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、アクリル樹脂、ナイロンなどの、直径が0.5mm以下のプラスチック粒子の使用に反対する運動を行っている。ニュージーランドは島国であることから、ナショナルアイデンティティーに不可欠な海の環境と健康とのつながりを訴える。植物は肌が必要とする全てを与えてくれるという信念のもと、エクスフォリエント(角質ケア)製品にマイクロビーズを使用しないことを約束している。州や国単位でのそれらの使用を禁止する世界的なビート・ザ・マイクロビーズ運動を支援し、「ジェントル フェイシャルエクスフォリエント」と「アクティブ クレンジング クリーム」は13年の発売以来「グッドスクラブガイド」に掲載されている。パッケージにはマイクロビーズ根絶を啓発するデザインを取り入れているのも特徴だ。本国では、海の清掃活動にも参加している。

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