2016年にニューヨークで設立されたデザイナーズブランドの「シエス マルジャン(SIES MARJAN)」が、新型コロナウイルスのパンデミックによるビジネス停滞の影響を受けてブランドを終了する。同ブランドを手掛けるサンダー・ラック(Sander Lak)=クリエイティブ・ディレクターは声明の中で、「独立した若手ブランドの私たちにとって、新型コロナウイルスの影響は非常に大きかった。心苦しく思うが、ビジネスをたたむという苦渋の決断に至った」と述べた。
「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」でキャリアを積んだ後、ニューヨークのファッション界で才能を発揮してきたラック=クリエイティブ・ディレクターは、美しい色使いや繊細な技術を生かした機能性、サステナビリティへの取り組みで支持を集めてきた。中でも、都会的なムードと控えめなエレガンスが共存する、パステルやレインボーカラーの流れるようなドレスやゆったりとしたセットアップで知られている。ブランドの終了に関して彼は、「これまで取り組んできたことを通して、夢をかなえられた。『シエス マルジャン』に多大な時間と才能を注いでくれた皆に感謝している。私たちは唯一無二のブランドを築き上げた。そのレガシーは洋服とコレクションの中だけでなく、これまで貢献してくれたそれぞれの心に残るだろう」と述べ、「業界内でのパートナーや顧客、素晴らしいチームの5年にわたる支援と愛に感謝している」と締めくくった。
新型コロナ感染拡大による営業停止の影響は、小規模な独立ブランドに特に重くのしかかっている。中にはスタジオやアトリエをマスクや防護服など個人防護具の生産拠点として活用できたブランドもあったが、苦戦を強いられたブランドも多い。2020-21年秋冬コレクションのオーダーのキャンセルや減額が当たり前になる中、アメリカファッション協議会(Council of Fashion Designers of America以下、CFDA)は21年プレ・スプリングに向けた生産を控えるよう強く要請している。またCFDAは、新型コロナによる打撃を少しでも緩和できるように、創業2年以上のファッション業界の中小企業に対して支援を行う基金を設立した。ラック=クリエイティブ・ディレクターが同基金に応募したかどうかは不明だが、初回の受給者に彼の名はなかった。