パタゴニア(PATAGONIA)のローズ・マーカリオ(Rose Marcario)最高経営責任者(CEO)が6月12日付で退任し、ダグ・フリーマン(Doug Freeman)最高執行責任者(COO)が当面の指揮をとると発表されたが、後任探しは難航しているのかもしれない。
フリーマンCOOはパタゴニアに入社してから商品開発部に9年間勤め、次いで「オバマイヤー(OBERMEYER)」「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などのアウトドアブランドでもキャリアを積んだ人物だ。その後、2004年にアジア担当の調達部門マネジャーとしてパタゴニアに戻り、生産製造部門担当副社長を務めた後、13年にCOOに任命された。当時のケイシー・シアン(Casey Sheahan)元CEOはフリーマンCOOの就任に際して「このようなビジネスの重要な領域を監督するダグ(・フリーマンCOO)の能力を信頼している。彼は運営に関する幅広い経験だけでなく、ブランドへの深い理解や豊かな歴史を持っている」と評価していた。
情報筋によると、マーカリオ前CEOの後継者に関する話し合いは数週間前から行われてきたという。シアン元CEO退任の際は、すぐにではなく、2週間をかけて引き継がれた。ブランドとして環境問題とその草の根運動に取り組んできた40年の歴史を考えると、パタゴニアの文化をよく知るベテランから後継者を選ぶことは妥当に思える。しかし今回の急な退任と後任の選定を急いでいないという予想外の発表は、同社が外部の人材に目を向けている可能性を示唆している。
CEOに求められるものは
過去に行われた「WWD」のCEOサミット調査によると、経営者110人のうちの半数は、21年までにCEOには戦略的で実績のあるデジタル経験が求められるようになり、その役割は変わるだろうと考えていた。そして20年現在、すでに大きな変化が見られ、経営幹部の期待は高まっている。「パタゴニアのような社会的理念を持つブランドにふさわしい後任を探すことは簡単ではないだろう」と語るのは、ファッション界のサステナブルなベンチャー企業に出資する投資会社、アランテ・キャピタル(Alante Capital)のP・C・チャンドラ(P.C. Chandra)=アドバイザーだ。サステナビリティへの取り組みと経済対策の両立の大切さを説くと同時に、「パタゴニアがダイバーシティーを優先事項に掲げて次期CEOを探していることを願う」と述べた。マーカリオ前CEOの退任と直接的な関連性はないものの、元パタゴニアのスタッフなどは多様性の欠如を指摘している。
雇用の機会を広げるために、職場環境の包括性を重視する団体と協業するなどの成果もあって、一般的にアウトドア企業における女性の比率は高い。「フォーチュン(FORTUNE)」誌の“最も多様性のある職場ランキング”によるとパタゴニアにおける男女はほぼ半々だ。今回の退任は急なものとみられたが実際には時間をかけて考えられてきたことで、「19年末から引き継ぎについては考え始めていた。今が次の世代にブランドを託すべき時だと信じている」とマーカリオ前CEOは語る。しかし記録的な売り上げだけでなく、パタゴニアを環境保全をはじめとする社会貢献活動の代名詞にした彼女の功績やリーダーシップを考えると、後任を探すのは容易ではなさそうだ。