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シャネル、今後18〜24カ月はコロナ禍で減収と予想

 シャネル(CHANEL)の2019年12月通期の売上高は、前期比10.3%増の122億7000万ドル(約1兆3128億円)、営業利益は同16.6%増の34億9000万ドル(約3734億円)だった。営業利益率は28.5%となり、前期の27%からやや上昇している。

 地域別の売上高では、アジア太平洋地域が同14.7%増の54億3000万ドル(約5810億円)、ヨーロッパは同5.9%増の45億3000万ドル(約4847億円)といずれも増収だったが、成長率は前年よりも緩やかになっている。南北アメリカは同9.7%増の23億1000万ドル(約2471億円)となり、前年を上回る成長率だった。部門別ではファッション部門が特に好調で、およそ28%の増収となった。

 19年は、シャネルにとって忘れ難い変化の年となった。2月には長年にわたって「シャネル」のクリエイティブ・ディレクターを務め、“モード界の皇帝”と呼ばれたカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏が死去し、その後任には同氏の右腕として30年来活躍してきたヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が就任した。そうした変化に加えて、香港やフランスでは政府に対する大規模なデモが長期化して小売り環境が悪化していたが、シャネルは強い需要に支えられて過去最高の売上高を達成した。しかし、20年は新型コロナウイルスの世界的な流行による大幅な減収は避けられないという。

 フィリップ・ブロンディオ(Philippe Blondiaux)最高財務責任者(CFO)は、「現在も続いている危機的な状況の影響を受けることは免れないため、20年度の売上高や利益は大幅に減少すると予想している。コロナ禍が今後もラグジュアリー業界全体の業績に響くことは間違いなく、当社も少なくとも18〜24カ月程度の影響があると見ている」と語った。

 同氏はまた、「世界中の店舗の15%ほどがまだ休業しているものの、営業を再開した店は地元の顧客に支えられ、売り上げが2ケタ、場合によっては3ケタの成長を記録している。特に中国をはじめとするアジア地域が好調であるほか、フランス、イタリア、ドイツを含むヨーロッパでもポジティブな結果となっている」と述べた。その一方で、「こうした堅調な動きも外国人旅行客の不在や免税店の売り上げがないことを補填するには十分ではないし、これらは早くても21年下期まで回復しないと思われる」と説明した。

 なお、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデントも、「20年度の売上高は2ケタ減となることが予想される」と6月8日の時点で発言している。同氏はその際、それでもウエアやアクセサリー類をオンラインで販売するつもりはないと、引き続きECに消極的な姿勢を示した。

 同社は経費節減のため、予定されていたプロジェクトの延期や裁量支出の据え置き、不急の人材採用の保留、配当金の支払い中止などを打ち出しているが、設備投資は前年並みに行う。ブロンディオCFOは、「19年には7億7100万ドル(約824億円)の設備投資を行ったが、20年と21年にも7億ドル(約749億円)以上を投資する予定だ。外国人観光客の来店が望めないことから、パリのマレ地区に出店する計画は断念したものの、ほかの出店計画の大半はキャンセルではなく延期となっている。これはラグジュアリー業界が中期的には回復すると見込んでいるためで、事態が収束すれば『シャネル』もいっそう力強く成長するだろう」と話した。

 同社はここ数年、店舗網の拡大やデジタル化に投資を続けているほか、レザーグッズなど専門アトリエの株式を取得している。また20年下期には、パリ北部のオーベルヴィリエに建設中の新施設が完成する予定だ。これは地上5階、地下2階の総面積2万5500平方メートルとかなり大規模なもので、シャネルが管理する35の専門アトリエがここに集められるという。

 シャネルは1910年の創業以来、初めての決算を2018年6月に発表しているため、身売りをするのではないかという憶測が何度も流れている。しかしこうして長期的な視点での投資を続けていることから、その可能性は低いと見る関係者も多い。ブロンディオCFOは、「当社のスタンスは一貫して変わっていない。今後も独立した企業であり続けるために盤石な財務状態を維持していくつもりだが、それも(事業を売却するつもりはないという)一つの証左となるのではないか」と説明した。

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