「バーバリー(BURBERRY)」のライセンス契約が2015年6月末で終了すると発表した三陽商会。売上高の半分を占める基幹ブランドを失う大きな危機に直面する同社に、はたして起死回生の策はあるのか。渦中の杉浦昌彦・社長を直撃した。
杉浦社長は、ポスト・バーバリーの新しい方針を説明するため全国の百貨店への挨拶回りを続けている。「多くのトップの方からありがたい支持を頂いた。ただ、社長レベルと現場レベルではかなりの温度差があるのも事実だ。あとは我々の商品企画と販売の力にかかっている」と気を引き締める。大きな焦点は、継続することになったブルーレーベルとブラックレーベルの扱いだ。都心の百貨店では1店あたり数億円を売り上げる稼ぎ頭である。杉浦社長は「どんな名前になるかはまだ言えないが、我々の鋭いクリエイションを提案することで、お客さまに認めてもらえるようにする。これまで許可されなかったeコマースも展開できるなど、自由度は広がる」と話す。ブルーレーベルとブラックレーベルに関しては、3年間という短期契約だが、「決して英バーバリー社が3年間でやめたいわけではない。ブランドの可能性を見極める上で3年くらいがちょうど目安になるからだ」と説明する。
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もう一つの注目が「バーバリー・ロンドン(BURBERRY LONDON)」の後継に指名した新ブランド「マッキントッシュ・ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」である。既存の「マッキントッシュ・フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」と合わせて中計の最終年度の2018年12月期には、マッキントッシュ事業で売上高300億円を計画する。かなりハードルが高い目標に見えるが、杉浦社長は「『マッキントッシュ・フィロソフィー』はすでに100億円が射程に入っており、『マッキントッシュ・ロンドン』を200億円に育てることで実現できる」と言い切る。現在「バーバリー・ロンドン」の商品企画に携わっている社員の相当数を「マッキントッシュ・ロンドン」に異動させる。すでに昨年7月から商品企画チームを始動させており、今年秋には「しかるべき場所でみなさんにお披露目する。我々が培ってきたモノ作りの集大成をお見せしたい」。「マッキントッシュ・ロンドン」のデビューは15年秋冬。1年前という異例の前倒し発表で、ファッション関係者に向けてブランドを鮮烈にアピールする考えだ。
「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」については「中国、韓国、台湾など海外展開の可能性も大いにある」という。同ブランドは三井物産が12年末に買収。米国やアジアでの出店拡大を表明しているが、三陽商会によるライセンス品による進出も考えているという。「エポカ(EPOCA)」は今秋にイタリア人の新しいクリエイティブ・ディレクターを起用してブランドを刷新した。「モードの色を取り入れることで、新しい顧客も獲得したい。『エポカ』はクリエイションやモノ作りはもちろん、当社が手薄だったマーケティング活動に力を入れていくつもりだ」。