「ディオール(DIOR)」は6月21日に開かれたオンライン記者会見で、2021年クルーズ(プレ・スプリング)・コレクションのランウエイショーを7月22日に南イタリア・プーリア州のレッチェで開催することを発表した。衛生面を考慮して無観客で行い、その模様をライブ配信する。今回のショーは当初5月9日に予定されていたもので、新型コロナウイルスのパンデミックにより無期限延期となっていた。
世界から600人以上のメディア関係者が参加した記者会見には、ピエトロ・ベッカーリ(Pietro Beccari)=クリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)社長兼最高経営責任者(CEO)とマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターが登場。ロックダウンよりも前にコレクション制作を始めていたキウリ=アーティスティック・ディレクターは、「父がプーリア州出身なので、私にとってこのプロジェクトはとても大切なものだった。そして、私に困難なときでも自分自身と未来を信じることを教えてくれた父に、このショーを捧げたいという気持ちもある」と、ショーにかける特別な思いを語った。
一方、ベッカーリ社長兼CEOはショーを“美しい映画”に例え、モデルやフォトグラファー、ヘア&メイクアップアーティスト、イベントプロデューサーから職人や大工、電気技師まで1000人以上が携わることになるだろうと明かす。開催を決めた理由の一つとしては、「ラグジュアリーはエモーションであり、ファッションに関してはリアルなファッションショーほど感情を喚起するものはない」とコメント。大きなメーカーから家族経営の工房まで多くのサプライヤーだけでなく、新型コロナの最も深刻な影響を受けた国の一つであるイタリアへの支援を表すための取り組みでもあると説明した。さらに、第2次世界大戦直後にメゾンを立ち上げた創業者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)の勇気と前向きな姿勢に触れ、「これが私たちのDNAだ。この特別な時代に、ファッション界のために『ディオール』が立ち上がり行動を起こすことは象徴的だと思う」と述べた。
また、ベッカーリ社長兼CEOは9月に再開予定のパリ・ファッション・ウイークでショーを続ける意向も示し、「ファッションの世界には、生のファッションショーが常に存在するだろうと考えている。9月のパリでは、少なくともある程度の観客を呼べることを期待している」という。キウリ=アーティスティック・ディレクターも「ファッション・ウイークはファッション界にとってだけでなく、開催都市にとっても重要」と、パリに与える経済的影響を強調した。
なお、7月6〜8日のオートクチュール・ファッション・ウイークでは、6日14時半(現地時間)から発表が予定されている。生のショーは行わないというが、形式の詳細については明言を避けた。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。