ベルリンを拠点にするストリートウェブメディア「ハイスノバイエティ(HIGHSNOBIETY)」は、「ノット イン パリス(NOT IN PARIS)」と題したオンライン・エキシビジョン・イベントを6月24日〜7月2日に開催する。国境やアートの枠組みを超えたデジタルの取り組みで、ラグジュアリーアイテムやストリートウエアからアート、音楽、建築、さらに高級ワインまでを取り上げるほか、イベント関連グッズの販売も行う。開催のきっかけは、新型コロナウイルスの世界的流行により2021年春夏パリ・メンズ・ファッション・ウイークの物理的なイベントが中止となったこと。ファッション業界内でファッション・ウイークの未来やバーチャルランウエイの魅力が話し合われる中、「ハイスノバイエティ」は独自のソリューションを提案する。
参加ブランドは、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「エルメス(HERMES)」といったラグジュアリーブランドから「ゲーエムベーハー(GMBH)」「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」「マリーン セル(MARINE SERRE)」などの新進ブランドまで多岐にわたる。「エルメス」は象徴的なシルクスカーフの歴史を披露するためにアーカイブを開放し、「ゲーエムベーハー」は今回のためにベルリンで映像を撮り下ろした。さらにルクセンブルク美術館(Musee du Luxembourg)の協力によるマン・レイ(Man Ray)のファッション写真展や、グッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)とデビッド・ツヴィルナー・ギャラリー(David Zwirner Gallery)によるレイモンド・ペティボン(Raymond Pettibon)の作品展もオンラインで開催する。
「ハイスノバイエティ」のトム・ベットリッジ(Thom Bettridge)編集長は、「私たちが普段記事にしている多くのイベントがキャンセルになったため、自分たち自身をカルチャーにおけるプロデューサーと考えざるを得なかった。それなら独自のカレンダーを作って、プロジェクトを基盤としたメディアブランドになろう、世界で(イベントが)何も起こっていないならば自分たちで形にしようと考えた」と述べ、「これはファッションイベントではなく、コンテンツイベント。皆がフォローしているブランドの世界観に浸るためのものだ」と語った。
「ハイスノバイエティ」は直接ブランドとタッグを組み、読者の要望に正確に応えることを重視している。これについて、「新型コロナウイルスが発生した直後にとったアンケートでは、読者の3分の2が経済的なストレスを感じているか、周りがそういう状況にある中で目立った買い物をすることに罪悪感を持っていることがわかった。しかし同時に、85%はスタイルとカルチャーに思い入れを持っていると答えた。読者はファッションの持つ物語に夢中で、もっと文化的側面を知りたいと意欲的だ。コンテンツを届ける側にいる私たちにとってこれはすごく重要なことで、目的意識を感じた」とベットリッジ編集長。さらに同編集長は、このような若くファッションに関心を持つ層にとっては、実際にランウエイで披露される新シーズンのアイテムよりも、アーティストとのコラボレーションの背景にあるストーリーやショー音楽などがはるかに重要だと加えた。
また、「ハイスノバイエティ」は新型コロナ終息後も同イベントの存続を目指すとともに、オブザーバーにとどまらず対等の関係でブランドと提携するメディアビジネス運営の新しい方法を示す。「過去にもこのような連携はあったが、それをより幅広く行うことができたのは素晴らしいこと。これまでショーや街中にあるものには少し恣意性が感じられたが、今は目の前にあるものの中から何と対話するかを決めることができる。キュレーターの視点から考えると、とても自由だ。オンラインであることの素晴らしさは、メディア、店舗、エージェンシーの境界線がなくなること。今では全てが同じ場所(オンライン上)で行われている」と、ベットリッジ編集長は述べた。