原宿、銀座の新店オープンに「エアリズムマスク」の発売と、このところユニクロが沸いている。それに先駆けて「WWDジャパン」4月27日&5月4日号では、転換期にある同社を特集した。長年、同社の最大の課題は柳井社長の後継者問題と言われ続けてきた。その問題への答えは、「柳井流」(ヤナイズム)を継承しながら次世代型の「チーム経営」にシフトすることだ。各領域のキーマンが柳井社長のDNAを受け継ぎつつ、人々を巻き込みながら、より速く、より創造的にユニクロを飛躍させようとしている。その一人が、1994年に入社して以来、営業や人事、海外を含めた数々のグループ子会社のトップを務めてきた桑原尚郎ファーストリテイリンググループ上席執行役員だ。現在、「お客さまの声」をもとにした商品提供をリードすると共に、社内のあらゆるプロセスを「お客さまの声」をもとに進化させ、「今までにない新しいサービス」「お客さま中心の新しい産業」の創出に取り組んでいる。
――営業本部長や人事部長、ユニクロUK(英国)やユニクロ欧州の最高経営責任者(CEO)を歴任し、2018年9月~19年5月までユニクロ日本CEOを務めてきた。現在はグループ上席執行役員として、フロントエンド本部本部長を務めつつ、グローバルでのカスタマーセンターを見ているというが、桑原さんのミッションは?
桑原尚郎グループ執行役員(以下、桑原):われわれは全社改革である有明プロジェクトを3部門に分けて進めている。商品企画・R&D(リサーチ&ディベロップメント)、マーケティング、クリエイティブの改革を行う「VCP(バリュー・クリエイション・プランニング)」と、生産・物流の改革を行う「サプライチェーン」、そして、私が担当している店舗・ECを改革する「フロントエンド」の3つだ。「フロントエンド」とはお客さまに接している部分のことで、店舗、EC、カスタマーセンターなど有明プロジェクトの最前線の部分を「本当にお客さまを中心にした組織や仕事のあり方」に変えていこうとしている。それには、「VCP」や「サプライチェーン」とも連動しながら動くことが必要だ。(ユニクロの)歴史的に、店舗を皮切りにして、カスタマーセンターの前身であるコールセンターができ、カタログ通販が始まり、その後にECがスタートしている。それぞれの時代に合わせてお店もECもカスタマーセンターも変わってきているが、すでにあるものにつぎ足しながらそれぞれの部分のアップデートを重ねてきたため、まだまだ連携できていないという課題がある。
お客さまは店舗にいながらスマホで買い物をされていたり、ネットで商品を確認してから来店し購入されるなど、ユニクロを縦横無尽に使われている。自社ECの商品画像はもちろんのこと、SNSやユーチューブで紹介された商品画像をスクリーンショットして、「これ、どこにありますか?」と目的買いされる方もいる。カスタマーセンターにも、ご不満やご要望に加え、最近では店舗の販売員に聞かれるような質問を気軽にデジタルでお問い合わせいただいたりもしている。お客さまの生活や買い方が完全に変わり、店舗もECも縦横無人に行き来される中で、われわれもお客さまに合わせて、もっとスムーズに連携し、対応してさしあげなければならない。こういったことが「表側のフロントエンド」だ。
そして、お客さまからたくさんいただく情報やご意見・ご要望に真摯に向き合い、商品開発やコミュニケーション、店舗やECのサービスなどに全部反映していこうとしている。いただく声が増え、(テクノロジーを活用することで)声が集まりやすく、「見える」ようになってきているが、まだまだできていない。この「フロントエンドの裏側」ともいえる、本部や会社の構造、仕事の仕方なども含めて、全部変えていくことが自分の仕事だ。
――手掛けているフロントエンドの改革について、分かりやすい呼称やキーワードなどはあるのか?
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