ファッション

リカルド・ティッシが語る 「バーバリー」オンライン発表の狙いとロックダウン中の過ごし方

 「バーバリー(BURBERRY)」は、2021年春夏コレクションを9月17日にオンラインで発表する。イギリスの大自然の中でショーを無観客で開催し、そのライブ配信を行う。なおロンドン・ファッション・ウイークは同月18〜22日に開催される予定だが、その方法はまだ明らかになっておらず、「バーバリー」の参加については現段階では未定だ。

 リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーに、今回のショーの狙いや、ロックダウン(都市封鎖)中はどのように過ごしていたのかについて、米「WWD」が独占インタビューを行った。

WWD:9月のショーについて教えてほしい。

リカルド・ティッシ=チーフ・クリエイティブ・オフィサー(以下、ティッシ):実際にショーを行い、それをライブ配信する。現地にはモデルとスタッフしかいない状態だが、旅行をすることがほぼ不可能な中、世界中の人たちがショーを体験できる“空間”をつくりたかった。それが実現できることを、とてもうれしく思っている。

WWD:ショーのコンセプトやムードはどのようなもの?

ティッシ:最近は現実逃避することや、自分を創造的に表現する方法について空想していた。自然と一体化することの単純で純粋な喜びをまた感じたいと思うようになっていたので、イギリスの美しい大自然の中でショーを行い、クリエイティブな体験をみんなで楽しみたいと考えた。当ブランドの設立者であるトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)も自然をこよなく愛していたので、ルーツをたどり、原点に立ち返るという意味もある。

WWD:実際のショーの代わりになるものはあると思うか。クリエイティブ面での工程において、また各シーズンのメッセージを伝えるために、ショーはどの程度重要か。

ティッシ:ファッション・ウイークをやめるべきだとは思わない。私たちが住むこの“新たな世界”に合わせて、再構築する必要があるだけだ。ファッションショーは、会場にあふれるエネルギーといい、始まるまでの期待感といい、ほかにはないエキサイティングで美しいものなのでなくならないでほしいと思う。

しかし世の中が変化しているので、新たな表現方法を見つけて適応しなければならない。私にとっては、服の生地やそれがどう動くのかなどをこの目で見て理解するといった、ファッションの物質性がとても重要なのだが、これも新たな方法で実現していきたい。

また、近年はファッションから“感情”が失われているように思う。私がキャリアをスタートさせた頃は、業界に本物の感情的なエネルギーが満ちていた。当時はマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)らが、むき出しの感情を注ぎ込むようにして服をデザインしていた。もちろん今でもさまざまなデザイナーからクリエイティビティーを感じるが、真の意味での独自性に少し欠けているのではないか。コレクションの本質を取り戻すことで、ファッションの純度をまた高められると思う。

WWD:誰もがショーにアクセスできるようにする理由は?

ティッシ:現在はつながることや連携すること、創作することがこれまでよりもさらに大切になっているので、誰もがショーを体験できて、“参加している”と感じられることが重要だと思った。また個人的にも、こうしたクリエイティビティーの民主化や、コミュニティーを大切にする精神は大切だと以前から思っていたからでもある。

WWD:自然が楽しめる場所で好きなところは?アウトドア体験で好きなものはある?

ティッシ:私はイタリアの小さな町で生まれ育ったので、自然とはとても深くロマンティックなつながりを感じていたし、世界中の美しい場所に行ってみたいと夢見ていた。その後、こうしてこの地球上にあるさまざまな素晴らしい場所を訪れる機会に恵まれて、とても幸運だと思っている。

私は何かを体験することがとても好きで、外に出ることは私のクリエイティビティーを大いに刺激してくれる。今回のショーでは、イギリスの自然を称えることが重要だと思った。イギリスは景観が本当に素晴らしいし、自然は「バーバリー」の伝統に大きな影響を与えているものだから、このテーマを探索するのはとても楽しい作業だった。

WWD:ロックダウンが解除されたら、自然の中に行きたいと思っていた?またロックダウン中は、どのように過ごしていた?

ティッシ:もちろんそう思っていたよ。幸運なことに、ロックダウン中は母と姉の一人とイタリア北部のコモで過ごすことができた。17歳で実家を離れて以降、これほど長く母と一緒にいたのは初めてのことだった。母とまた強い結びつきを得ることができて、本当に美しい時間だった。都会やそのせわしない日々から離れて過ごしたことでとても癒やされたし、いろいろとインスパイアされた。

あまり知られていないことだが、私には静かな時間が必要だ。私はにぎやかなタイプだと思われているけれど、静けさこそがクリエイティビティーを呼び覚ます。この数カ月間は、一度足を止めて自らを振り返り、また前に進むための準備ができてとてもよかった。

ロックダウンが解除されて、外出できるようになった今、周囲にあるものに対してより敏感になっていると思う。屋外にあるほんの小さなものに気づくようになったし、感謝するようになった。現在はロンドンに戻ってきているが、ジョギングの際には美しい庭や公園が以前よりも目にとまるようになった。ショーがとても楽しみで、わくわくしているよ。

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