化粧品専門店のウルタ(ULTA)はクリーンビューティ専門店のクリード ビューティ(CREDO BEAUTY以下、クリード)とパートナーシップ契約を締結し、クリードで取り扱うブランドの販売を開始する。まずは今秋から、クリードで取り扱う8ブランドをウルタの100店舗およびECで販売するという。今回の提携により、ウルタは注目が高まるクリーンビューティ市場への本格的な進出を果たす。一方で、米国で9店舗を展開するクリードは、米国国内最大級の化粧品専門店であるウルタとのパートナーシップ締結により企業規模の拡大を見込んでいる。
ウルタで取り扱いを始めるブランドには、「インナーセンス オーガニック ビューティー(INNERSENSE ORGANIC BEAUTY)」「ワン ラブ オーガニックス(ONE LOVE ORGANICS)」のほか、女子プロテニス選手のヴィーナス・ウィリアムス(Venus Williams)とクリードによる日焼け止めブランド「イレブン バイヴィーナス ウィリアムスxクリード(ELEVEN BY VENUS WILLIAMS X CREDO)」などが名を連ねる。ウルタのチーフ マーチャンダイジング オフィサー(CMO)のモニカ・アルナウド(Monica Arnaudo)はクリードについて、「クリーンビューティの草分け的存在だ。化粧品業界においてクリーンビューティに尽力していく上で、今回のパートナーシップは互いにとって有益なものとなる」と話す。
セフォラ(SEPHORA)出身の故シャシ・バトラ(Shashi Batra)とアニー・ジャクソン(Annie Jackson)最高執行責任者(COO)により設立されたクリードは、2015年にサンフランシスコに第一号店をオープンした。以降、ニューヨーク州、イリノイ州、カリフォルニア州、テキサス州、マサチューセッツ州と米国各地に店舗を構えた。クリードが発行したクリーンビューティ製品の原材料に関する規約は、クリーンビューティへの参入に目を向ける小売り店にとっての規範となっている。
またここ数年で、セフォラ、ブルーマーキュリー(BLUEMERCURY)、ノードストーム(NORDSTROM)といった主力の化粧品専門店は、クリーンビューティの施策に着手している。セフォラは18年にクリーンビューティブランドの取り扱いを強化し、昨年時点で68のブランドで計3000のクリーンビューティ製品を取り入れている。なお、ウルタは3月上旬、ボストンのクリーンビューティ専門店、フォレイン(FOLLAIN)の自社ブランドの取り扱いを400店舗で開始するなど、参入への準備を進めていた。
クリーンビューティ市場はまだ小規模ではあるものの、成長を続けるカテゴリーだ。米市場調査会社のNPDによると、新型コロナウイルスが米国で広がる前の3月時点では、プレステージスキンケア市場の売り上げの13%をクリーンビューティが占めていたという。また、4月には新型コロナウイルスによる店舗の閉鎖でプレステージ化粧品の売り上げが14%減少したが、クリーンビューティに関しては11%増加した。こうした流れを踏まえ、ジャクソンCOOは「クリーンビューティやサステナブルパッケージへの認知が高まっている今が絶好のタイミング。私たちが今、地球で体感しているあらゆることを踏まえると、今以上にクリーンビューティというカテゴリーが重要になるタイミングはない」と言う。
なお、クリードの店舗のほとんどは、ニューヨークのソーホーやサンフランシスコのフィルモアストリートなど、大都市の繁華街に位置している。一方で、ウルタが展開する約1200の店舗は主に、市外の小型ショッピングセンターに入居している。ジャクソンCOOは「ウルタの顧客のクリードの認知はそれほど高くはないかもしれないが、これはその認知を広げる機会。興味関心の矛先が同じであることは確信している」とし、この顧客の差異を活かしていくと話している。今回のパートナーシップで、クリーンビューティがいよいよ全国規模で広がることとなる。