「どうも~クロチャンネルで~す!」。どこか癖になるユーチューバー風のあいさつと屈託のない笑顔で新商品の紹介動画を投稿するのは、ビームス 二子玉川の黒澤亜美さんだ。ビームスのオウンドメディア内のスタッフビデオ投稿コンテンツで、異色の存在感を放っている。
同じ店舗に勤めるスタッフのビデオ投稿にゲスト出演したことをきっかけに、1年ほど前に「クロチャンネル」を始めた。今では週に1回のペースで、これまでに約50本を投稿している。どうせやるなら見ている人に楽しみながら洋服のことを知ってほしいと、ユーチューバーのコメントや早送りの仕方、テロップの出し方などを研究した。撮影は、閉店後の店内でほかのスタッフにiPhoneを渡し、5分ほどで終了。なんとNGはほとんどない。
担当売り場の「ビームス ボーイ」の新商品や人気が高い定番商品を、解説を交えながら紹介する。「『ビームス ボーイ』の洋服にはこだわりのあるものが多い。例えば、何年代のミリタリーアイテムから着想を得ているなどといった商品の背景を伝えたり、別注アイテムであればどこがポイントかなどを説明したりする」と黒澤さん。ただし、動画も接客の延長だと考え、「ビデオだから特別ではなく、商品の特徴やおすすめポイントを店頭でお客さまに伝えるのと同じ感覚で取り組んでいる」と続ける。
撮影した動画は無料アプリの「VLLO」で編集し、サムネイルは無料お絵描きアプリの「アイビスペイントX」で作成している。ユーチューブを観て、見よう見まねで覚えた独自の編集や手書きの文字などに親近感が湧くと好評だ。動画を投稿する際のポイントは1分~1分半にまとめること。「移動中の電車の中でもデータ容量を気にしないで手軽にサクッと観てもらえるように、長くても2分以内に収めるようにしている」。動画には同じ店舗のスタッフをゲストとして呼ぶこともあり、バリエーションも豊富だ。1時間かからないほどの編集作業で、1本の動画が完成する。
黒澤さんはビームスのコンテンツ内でスタイリングのスナップ投稿も行っているが、ビデオの反響はそれ以上だ。「動画を観ていただいたお客さまから接客してほしいという声をいただき、とてもありがたい。SNSで知ったビームスのない地域のお客さまから、二子玉川店にお問い合わせをいただくこともある」と、スナップでは分からない人柄にも興味を持ってもらっている。
新型コロナウイルスによる店舗の臨時休業中には、ビームスのユーチューブコンテンツである「ビームス アット ホーム ビデオ(BEAMS AT HOME VIDEO)」に「クロチャンネル」の出張版「韓国語講座」も投稿した。「コロナを機にますます店頭だけではなく、オンラインを通しての発信が大切になっていくと思う。今後はインスタライブなど、生配信にもチャレンジしたい」と意気込む。
6月29日号「WWDジャパン」の販売員特集では、黒澤さんのほかにもたくさんの“人間力”あふれる販売員を取材している。
ビームス公式オンラインの“ビームスビデオ”投稿を飛び出した出張版「クロチャンネル」