スニーカーのキュレーションメディア「足元倶楽部」や、メンズファッションのキュレーションメディア「SNS世代」をインスタグラム上で運営する株式会社いいねは6月20日、アパレルD2Cブランド「カロリイ(CARORIE)」をローンチした。同ブランドが“bigger”と呼ぶ、体の大きい人に向けて、ストレッチ性や速乾性があり、かつシワになりにくい生地で作られたベーシックアイテムをそろえる。第一弾のアイテムはTシャツ(1万6000円)とカットソー(1万8000円)、シャツ2型(各2万8000円)、ボトムス2型(各3万円)の計6型。現在、公式サイトで受注販売中で、9月以降順次配送する。同ブランドには身長175cm、体重100kgと、自身も“ヘビーウェイト”ないいね社長である小林稜氏の、並々ならぬこだわりと熱意が込められている。しかし、小林氏はファッションに関する専門知識は全く持たない“素人”だ。「本当に分からないことだらけだった」と語る彼が、ブランド立ち上げまでに辿った軌跡を追ったコラムを、前後編に分けてお届けする。(前編の記事はこちら)
知人に紹介された振り屋との取り組みが決まり、実際にサンプルの作成に進むことになった。しかし、そこでもさまざまな試行錯誤があったようだ。特に最初に作ったサンプルはうまくいかなかったという。「1stサンプルはデザイン性を強くしたのですが、結果的に上級者向けで、ショップで試着しないと分からない服、ネット上で売るのが想像できない服になってしまいました」と小林氏は問題点を話す。そこで今度はアイテムをベーシック路線にシフト。チーム体制も一新し、振り屋が依頼していたパタンナーも交えて綿密に打ち合わせを行い、次のサンプルの作成に当たった。しかし、仕上がった2ndサンプルでは、サイズ感の問題が浮上した。「ネック部分や極端にサイズ感を変えて見たところ、デカすぎて僕が着たら甚平のようになってしまいました」と苦笑交じりに反省する。そこで、3rdサンプルではサイズを調整。実際に販売するモノとほぼ同じ、6型の商品が仕上がった。「周囲のブランドを手掛けている方々からは『(サンプルを)3rdまで上げたのか』と驚かれました(笑)。“bigger”のための服として、生地も大量に使っていることもあり、価格も当初想定していた価格よりは上がってしまいました。でも、僕としては妥協できなかった」と語る。
そうして3月末、小林氏が「体格の良い人が着たい究極の服」と呼べるモノが完成した。しかしそんな折、新型コロナウイルスの影響で、物流などさまざまな面が不透明になり、4月に予定していたブランドのスタートも一度保留になってしまう。ただ、小林社長は何もせずにコロナの収束を待っていたわけではなかった。「自粛期間中はサンプルを毎日着用し、毎日洗うことで生地感などに変化が出るのかなどを調べていました」と語る。「でも、生地は全然くたらないなど、ポジティブなギャップが非常に多かった。改めて自信が持てたし、モチベーションも上がりました」と振り返る。
アイテムの機能性やデザインを自身で着て確認する傍ら、インスタグラムアカウントでの発信や、EC構築サービスを使ってのサイト開設など、着々と準備を進めていく。「インスタ上では、『カロリイ』の服だけでなく、僕が思う“bigger”のファッションなどについて、飾らずに発信していくつもりです。ブランドのSNSアカウントは一方通行になりがちですが、『カロリイ』では、フォロワーとコミュニケーションを取り、“bigger”にとって有益な情報を発信していければいいなと思っています」。
小林氏はSNS上でのメディア運営を行っており、インフルエンサーとのコネクションもある。そういったリソースはどのように活用するつもりなのかと尋ねると、意外にも「あまり活用する気はないんです」と話す。「もちろん今まで自分が培ってきたコネクションなどは活用できるのかもしれません。でも、そういった人たちを巻き込む、といよりは、『カロリイ』のアイテムに興味を持ってくれたり、共感してくれたりした人と、何か一緒に取り組めれば、程度に思っています」。
そうこうするうちに政府の緊急事態が東京でも解除され、ブランドローンチの準備も徐々に再開。6月20日、ブランドを始動することとなった。しかし、これで終わりではない。「ブランドをローンチして、やっとスタートラインに立った感覚です」と小林社長。「これから売れない理由や売れる理由を分析したり、ネットやリアルの場でお客さんのフィードバックを得たりしながら進んでいくつもりです。『カロリイ』はもちろんビジネスとして考えていますが、作って共感したいという気持ちが強いです」。