アマゾン(AMAZON)は6月29日、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で社会の機能を維持するために物流倉庫やスーパーマーケットなどで働いていた従業員に、一人当たり150〜3000ドル(約1万6000〜32万円)のボーナスを支給すると発表した。
対象となるのは、アマゾンおよび同社が擁するホールフーズマーケット(WHOLE FOODS MARKET)の従業員と、配達業務の提携先であるデリバリー・サービス・パートナー(DELIVERY SERVICE PARTNERS)とアマゾン・フレックス(AMAZON FLEX)の配達員などで、支給総額は5億ドル(約535億円)程度になるという。
新型コロナウイルスが世界的に流行し始めた3月半ばごろに、アマゾンは倉庫で働く従業員の時給を一時的に2ドル(約200円)上げたほか、時間外労働の時給を2倍にし、無給の休暇を無制限に取得できるようにした。なお一時的な賃上げ期間は2度延長されたものの、5月末で終了している。
アメリカでは、アマゾンの倉庫で働く従業員のうち、これまで7人が新型コロナウイルスに感染して死亡した。また倉庫で感染者が確認されたにもかかわらず、従業員に周知しなかったことなどに対するストライキが起きたが、同社はストの主導者らを解雇。こうした措置に抗議するとして、アマゾン ウェブ サービス(AMAZON WEB SERVICES)のティム・ブレイ(Tim Bray)=エンジニア兼バイス・プレジデントが辞任した。ドイツのアマゾンでは、やはり倉庫で30〜40人の感染が確認されたことから、同国内にある6カ所の物流拠点でストライキが起きている。
アマゾンは巣ごもり需要が追い風となり、2020年1〜3月期(第1四半期)の売上高は前年同期比26.3%増の754億5200万ドル(約8兆733億円)と増収だったが、安全対策や物流業務の円滑な運営のための費用がかさみ、純利益は同28.8%減の25億3500万ドル(2712億円)と減益となった。しかし3カ月間の売り上げが8兆円を超える企業が、文字通り命懸けで働いた従業員に対して支払うボーナスとして、総額535億円が十分かどうかは意見が分かれるところだろう。