ファッション

ONE WWD JAPANの決意

 ファッションが、大好きです。大学卒業後、地元の新聞社で社会部の事件記者となって自ら企画して作った記事は、「カフェごはん」や「王様コート」「メンズビューティ」などなど。その記事は当時の会社、および上司の理解を得られず、組織とのミスマッチを痛感しました。(この記事はWWDジャパン2020年7月6日号からの抜粋です)

 だから現状には、心から感謝しています。無論、涙を流したこともあります。私が入社して最初に下した、文字通り“涙ながらの決断”は、今から13年前のこと。産声をあげようとしていたビューティ週刊紙「WWDビューティ」編集部への異動を迫られた時でした。

 「ビューティでやっていけるのか?」。心配は杞憂でした。今は異動して良かったと心の底から感じているし、必要性を諭してくれた当時の上司に感謝しています。例えば莫大な研究・開発費を投じるがゆえにファッションの数十倍も愚直に泥臭く製品を売ろうとする姿勢とビジネス戦略には今なお感銘を受けるし、ちょうど十数年前からオーガニックやナチュラルコスメが台頭し始めるなどソーシャル・グッドへの取り組みもファッションより先行しています。一方ビューティに移って、ファッションの魅力も再認識できるようになりました。テクノロジーやテクニックでもあるビューティは、感情に訴えるエモーショナルなアプローチや激変するダイナミズムなど、ファッションから多くを学べると思っています。以来「ファッションとビューティは、どうやったら融合できるのか?」「それを融合できるのは、ファッションにもビューティにも『WWDジャパン』という名前でアプローチしているオピニオン・メディアの私たちだけではないのか?」と考え続けています。けれど正直、2つの世界は、まだまだ遠いです。

 誤解を恐れず、申し上げます。ファッションの皆さん、ビューティをナメていませんか?「洋服と違って、体のごくごく一部だけを彩るもの」とか「バッグ&シューズに比べ、はるかに単価の安いもの」と思っているでしょう?一方でビューティの皆さん、そんな風にナメられているように感じるから、ファッションを必要以上に敬遠していませんか?お互い相手が隣にいるのはわかっているのに、歩み寄ればもっと面白くなることも想像できるのに、アプローチしない理由はなんですか?2つの業界を覗き見している私には、双方の、不思議な感情が透けて見えます。消費者は誰も意識していない、余計な感情です。

 そこで「WWDジャパン」は、「ONE WWD JAPAN」というスローガンを掲げ、いよいよファッションとビューティは等しきもの、ともに消費者の気持ちと毎日を豊かにしてくれるものと訴え続ける姿勢を鮮明にします。「ONE WWD JAPAN」の「ONE」には、1.「ファッションとビューティを1つにすること」、2.ソーシャルからウェブ、週刊紙、後述する月刊誌、そしてイベントまで、あらゆる「WWDジャパン」もファッションとビューティ同様に等価値で、ゆえに「一体となってメッセージを発信すること」という2つの意味を込めています。

 まず「WWDビューティ」編集部は「WWD JAPAN.com」編集部に統合し、デジタルと紙メディアの垣根を取り払います。拡充する「WWD JAPAN.com」編集部はデジタル・ファーストを貫きながら、ビューティ・コンテンツをファッションの週刊紙だった「WWDジャパン」にもアウトプット。週刊紙の「WWDジャパン」には、ファッション業界人にも届けたいビューティ・コンテンツを詰め込む予定です。一方、ビューティ週刊紙だった「WWDビューティ」は、判型を改めることでデジタルデバイスでの利便性を高めながら月刊化。雑誌の形態とすることによる保存性の向上を踏まえ、データと提言に満ちた、これまで以上にプロフェッショナルなオピニオン・メディアを目指します。このプリントメディアを作るのも、デジタル・ファーストな「WWD JAPAN.com」編集部です。「WWD JAPAN.com」編集部は、ファッションもビューティも、デジタルもプリントも、さらにはオン&オフラインのイベントやセミナーに至るまでのコンテンツまでを生み出す部隊へと進化し、呼応するように進化する「WWDジャパン」編集部とますます緊密に繋がります。

 ビューティ週刊紙の「WWDビューティ」やウェブサイト「WWD JAPAN.com」が、ファッション週刊紙「WWDジャパン」から生まれた経緯があるせいか、弊社においてもデジタルよりプリント、ビューティよりファッションというヒエラルキーが存在したのは否めません。デジタルが盛り上がる今は、今度は私がプリントメディアの中核メンバーを置き去りにしているのかもと反省しています。あらゆるクロスオーバーを前提とする今回の改変で、私たちは脱皮します。ファッションとビューティ、デジタルとプリントを行き来する今後の私たちは、必ずや刺激的な業界の未来像を体現すると信じています。

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