ファッション

藤原ヒロシが考える、フリマアプリとインターネット

 コロナ禍でさまざまなインターネットサービスが注目を集めている。フリマアプリの「メルカリ(mercari)」も例外ではない。そんな同サービスで5月末、藤原ヒロシが「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のアイテムを購入したと自身のインスタグラムに投稿。その後実名のアカウントを作り、アイテムをいくつか出品したことが話題となっている。この一連の行動には、藤原のフリマアプリに対する独特の考えが背景にあるようだ。彼はフリマアプリ、ひいてはコロナ禍で起きたデジタル化の波についてどのように考えているのか。

WWD:「メルカリ」でモノを売ろうと考えた理由は?

藤原ヒロシ(以下、藤原):「メルカリ」の人と「『メルカリ』とはどういうモノか」について話をして、面白そうだなと思って。まずは“「メルカリ」でモノを売る”という行為そのものや、出品のシステムを知りたくて、いくつか出品してみました。

WWD:具体的にはどういった点が面白いと思ったのか?

藤原:モノを売るというよりも“物々交換”に近い感覚だな、と個人的に思ったんですよね。今って現物としてのお金が見えづらい世の中なんじゃないかなと感じていて。僕は現金を使うとしたら駐車料金くらいで、あとは基本的に電子決済なり、Suicaなりで支払っている。でも、モノには必ず価格がある。もちろん「メルカリ」でも価格があるわけだけど、売ったお金はアプリ内に貯まっていく。その貯まったお金で「メルカリ」内で欲しいモノがあれば買う。そういった部分が交換に近くて、すごくプリミティブな行為だし、久々に聞いたアナーキーっぽい話で面白いな、と。

WWD:実際に物々交換をしたことはあるか?

藤原:ありますね。若い頃ですが、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)やマルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)のパンクな服が好きで、ロンドンに行く際に日本で「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の服をセールで買って持っていき、交換してもらいました。当時のロンドンでは「ヨウジ」や「ギャルソン」が人気で、けっこう交換しましたね。

WWD:藤原さんの周囲の人たちで、フリマアプリを“交換”のような感覚で使っている人はいるか?

藤原:使っている人自体はいるし、話題に上ることもあるけど、“交換”という感覚がある人はそこまで多くないかもしれないです。やっぱり安く買いたい、高く売りたいという感覚の方が強いと思いますね。

WWD:自身が「メルカリ」で出品したアイテムには、何か思い入れなどはある?

藤原:特にないです。単に要らないモノや、いくつか持っているモノを出しただけなので、そんなに特別なことではないです。今後も何か「売ってみようかな」と思ったモノがあれば出品していこうかなとは思っています。

WWD:出品アイテムの値付けに関しては、どのように決めた?

藤原:値付けも適当ですが、変に安くも、高くも売りたくないとは思っています。要らないモノを欲しいモノと交換する感覚ですね。なので、「メルカリ」で出た売り上げ金は現金化せず、欲しいモノが見つかるまで「メルカリ」内に貯めておくつもりです。

WWD:インスタグラムでは、「アンダーカバー」のアイテムを「メルカリ」で買ったと投稿し、話題となっていた。これまでにも何度か「メルカリ」で購入したことはあったのか?

藤原:探していた軍モノのトレンチコートを買ったことがあります。それくらいかな。

WWD:「メルカリ」でも、藤原さんが手掛けたアイテムは高値で転売されていることも多い。そういったことについて何か感じることはあるか?

藤原:まあ仕方ないな、とは思います。僕自身、欲しいモノがあれば高くても買うので。ただ、転売とかを商売にして、自分が好きでもないモノを何個も買うとかは愛がないので嫌だなとは思います。「シュプリーム(SUPREME)」とかに並んで、せっかく並んだから、2個買えるなら買って、1個売ろうという考えは愛のある転売で、アリな気がするけれど。

WWD:「メルカリ」の利用増に始まり、コロナ禍でインターネットサービスが注目され、さまざまな面でデジタルシフトが起きている。この現象についてどう思う?

藤原:取材や打ち合わせに関して言うと、「Zoom」で十分だな、と思うこともあるし、やっぱり対面でないと伝わらないなと思うこともあります。個人的には、デジタルを使ってデジタルっぽいことをするよりも、世の中を便利にするようなテクノロジーで、プリミティブなことをする方がアンバランスで面白いなと思っています。そういった意味では、「メルカリ」はデジタルを使いつつ、“物々交換”という最もプリミティブな側面を持っているのが面白い。「Zoom」も同様で、新しいように見えるけど、みんなの部屋が見えるし、究極的には普通の取材だったり、打ち合わせだったりする。逆にバーチャル背景みたいなものは個人的には面白くないな、と思います。

WWD:藤原さんにとって、オンライン、オフラインそれぞれの良さとは?

藤原:必要なことを的確に伝える、という点でオンラインは良いと思います。だから仕事によってはオンラインで完結できるのかもしれない。でも、僕にとってはオフラインの良さはその100倍くらいある。例えば会話の際に「その靴いいですね、どこのですか?」といった会話はオフラインでしか生まれない。これが個人的にはすごく大切で、得るものも多い。だから必ずしも仕事じゃなくても、食事などで人と会うのは大切だと思います。大勢の人に会いたい、いろいろな所に行きたい、といった気持ちはないけど、仲の良い何人かに会えて、情報を得ることができれば良い。自粛期間中は外食もできず、あまり人と会えなかったけど、緊急事態宣言の解除後、久しぶりに人たちと食事をして「本当に面白いな」とオフラインの良さを改めて確認して。そういった再発見の感覚は、コロナ期間中は今後もあるんじゃないかと期待しています。

WWD:再発見から、新しいモノが生まれることもある?

藤原:何かが変わるだろうな、とは思います。それこそ「メルカリ」でも、オフラインをやってみてもいいなと。お金を一切使わずに、“物々交換”だけするイベントとか。後はお金の価値観とかも変わってくるような気がしています。この前友人と、お金が一切使えないエリアを作ってみるのも面白いよねと話していて。そのエリアに入る前にポイントを渡して、あとは物々交換なり、ポイントなりを使う。飲食店でも「無料だけど、食べたらインスタに上げてください」とかで成立できるし、意外とお金を使わない楽しみというのが今後出てくるんじゃないかな、と思っています。

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