「ユニクロ(UNIQLO)」2020-21年秋冬物の展示会で、前回のコラムで紹介した「アップデート」と共にキーワードになっていたのが「端境期」でした。「端境期」とはシーズンとシーズンの間の時期を意味し、ファッション業界ではよく使われる言葉です。ここ十数年ほど、暦上の春夏秋冬の区切りと体感としてのシーズンが年々大きくズレるようになってきており(本来は秋なのにまだまだ暑いため夏物でいい、暦上では冬なのにコートがいらない、など)、それにいかに対応するかはコロナ禍以前からのファッション業界の大きな課題となっていました。「ユニクロ」も一昨年、昨年の暖冬で冬物が売れず、「端境期」対応に苦慮していたという経緯があります。2年の苦しみを経た「ユニクロ」が考える「端境期」対応とは?
クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)による「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」では、まさに「『端境期』に着られるもの」「『端境期』を念頭に置いている」といった説明がありました。基本的に、厚手のアイテムをそれ1枚で着るというよりも、薄手のシャツやニットをレイヤードするという提案で、暖冬にも厳冬にも対応できるようにしていました。「ユニクロ ユー」ウィメンズの注目アイテムはワンピースです。これは最近ファッション業界でよく言われていることなのですが、薄手のワンピースって(あとは薄手のスカートも)、年中着られるオールシーズンアイテムなんですよね。ビスコース地やコットンサテン、ニットポロなど、薄手の素材感でさまざまなワンピースを企画していました。秋口のまだまだ暑い時期には1枚でサラリと着られて、気温が下がってきたらインナーにタートルニットを合わせれば、暖冬、厳冬どっちに転んでもしっかり売れる、という考え方でした。
「ユニクロ ユー」メンズは薄手のアウター類が充実していました。たとえばウール混のオフィサージャケットは、シャツと本格的なジャケットの中間的な厚みです。去年、ウィメンズで“シャケット(シャツとジャケットの中間)”といった名称で売れたアイテムの延長ですね。あとはコーデュロイのアウターも豊富。コーデュロイも見た目には秋冬感がありつつ、実際のところはそこまで地厚ではなく、まさに「端境期」にピッタリの素材だと思います。
薄手のアイテムをレイヤードしていくことで、暖冬にも厳冬にも対応するという考え方は、もちろん「ユニクロ」の通常ラインにも貫かれていました。そもそも、「ユニクロ」の冬の看板商品である“ウルトラライトダウン”や“ヒートテック”、フリースも、レイヤードによる温度調節を念頭に置いたアイテムですよね。あとは、通常ラインのメンズで薄手のハンティングジャケットを推していましたが、それも「日本の冬は、もうこれくらいの厚みのアウターで十分」といったメッセージのように感じました。