香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG)傘下のファースト ヘリテージ ブランズ(FIRST HERITAGE BRANDS)は、フランスの靴ブランド「クレジュリー(CLERGERIE)」をプライベート・エクイティ・ファンドのフレンチ レガシー グループ(FRENCH LEGACY GROUP)に売却する。買収額など金銭面での条件はまだ明らかにされていない。
フレンチ レガシー グループはスイスを拠点とするミラボー アセット マネジメント(MIRABAUD ASSET MANAGEMENT)の傘下にある。ミラボーは18年12月に、ラグジュアリーおよびライフスタイル業界の歴史ある企業に特化したプライベート・エクイティ・ファンドのミラボー パトリモワーヌ ヴィヴァン(MIRABAUD PATRIMOINE VIVANT)を設立しており、シャツブランドの「アン フォンテーヌ(ANNE FONTAINE)」や仏老舗ジュエラーの「モーブッサン(MAUBOUSSIN)」、仏スポーツブランド「ルコック スポルティフ(LE COQ SPORTIF)」、シューズを展開する「カレル(CAREL)」「カルヴィル(CARVIL)」といったブランドにも投資している。
ミラボーのウェブサイトによると、同プライベート・エクイティ・ファンドのパートナーには、仏政府の中小規模事業大臣やLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の北米部門トップを歴任したルノー・デュトレイル(Renaud Dutreil)や、シャネル(CHANEL)共同オーナーのジェラール・ヴェルタイマー(Gerard Wertheimer)を父に持つデヴィッド・ヴェルタイマー(David Wertheimer)が名を連ねている。
ブランド創設者のロベール・クレジュリーは、マスキュリンなデザインのウィメンズシューズを先駆けて提案したデザイナーの一人であり、レースアップスタイルのオックスフォードシューズやラフィア素材のサンダル、厚手のソックスとの着用を提案した冬用サンダルなど、時代の中で新たなスタイルを生み出してきた。87年には米国初の直営店をオープンし、国外進出を進めてきた。しかし、消滅寸前の経営危機に直面していた2011年、ジャン・マルク・ルビエ(Jean-Marc Loubier)社長兼最高経営責任者(CEO)率いるファースト ヘリテージ ブランズが「クレジュリー」親会社の株式を90%取得し、デザイナーに自身のブランドを持つローラン・ムレ(Roland Mouret)を起用。かつて履き物産業の中心となったフランスのロマンシュルイゼールに工場を持ち、“メード・イン・フランス”を掲げて同ブランドの製品周知にも尽力してきた。17年には、ブランド名を改称。ダヴィッド・トゥルニエール・ボーシエル(David Tourniaire-Beauciel)=クリエイティブ・ディレクターが就任し、ペリー・オースティング(Perry Oosting)CEOと共にリブランディングを進めていた。現在はパリやロンドン、ニューヨークなどに店舗を持つ。
なおファースト ヘリテージ ブランズは、ベルギーの老舗レザーグッズブランド「デルヴォー(DELVAUX)」も傘下に持っており、ブリュッセルやフランスにも製造拠点を拡大している。しかし昨年には、所有していた「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」の売却先を探していたが、見つからず精算する結果となった。