ルルレモン・アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA以下、ルルレモン)は6月29日、ホームフィットネスのスタートアップ企業ミラー(MIRROR)を5億ドル(約530億円)で買収したことを発表した。
2018年創業のミラーは、等身大の鏡型のデバイスと、ライブやオンデマンドでのフィットネス講座を提供している。そのデバイスに映し出されるトレーナーと共に、自宅でさまざまなエクササイズができるという仕組みだ。ルルレモンは18年10月にミラーの少数株主となっており、ミラーの講座で瞑想やトレーニングクラスを開講している。
カルバン・マクドナルド(Calvin McDonald)=ルルレモン最高経営責任者(CEO)は、「今回の取引は当社のデジタル化およびインタラクティブ機能をさらに強化するものだ。ミラーとの協業で、自宅でのパーソナルフィットネスをいっそう推進していきたい」と語った。
ブリン・パトナム(Brynn Putnam)=ミラー創業者兼CEOは、「正式な“ルルレモンファミリー”となることができて、大変うれしく思っている。ルルレモンが持つ顧客やコミュニティーとの深いつながりに加えて、その店舗網やECチャネルなどのインフラを活用することで新たなユーザーを獲得し、さらに成長できるだろう」と述べた。なお同氏は、かつてルルレモンのブランドアンバサダーを務めていた。
取引は20年第2四半期に成立する予定。買収後もミラーは独立した企業として運営され、パトナム創業者兼CEOは現職にとどまる。両氏はアナリスト向けの説明会で、ルルレモンとミラーの顧客は50%程度が重複しており、双方にとって事業メリットのある取引だとコメントした。
ルルレモンはECやデジタルに強く、熱心な固定客が多くいることから、ここ数年にわたって順調に成長してきた。しかし新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされたことによって、20年2~4月期(第1四半期)決算は売上高が前年同期比16.6%減の6億5196万ドル(約691億円)、純利益は同70.3%減の2863万ドル(約30億円)となっている。
マクドナルドCEOは、「業績悪化は一時的なものだと確信している。新型コロナウイルスによって変化するものと変化しないものがあるが、アクティブなライフスタイルを送りたいという消費者の気持ちは、その変わらないものの一つだ。自宅で安全に運動をしたいというニーズは当社の追い風となる」と分析した。
実際、北米や欧州で店舗の休業措置が取られた3月中旬に、ルルレモンがインスタグラム(Instagram)で開催したライブでのトレーニングセッションにはおよそ17万人が参加したという。また中国語圏で店が休業していた際には、中国で人気のアプリ「ウィーチャット(微信、WeChat)」のフォロワー数が急増している。同氏は、「新型コロナウイルスは、“未来”が現在となるスピードを速めた。ミラーの買収はパンデミックの前から進めていた案件だが、当社のさらなる発展に寄与するだろう」と述べた。