ファッション

夏場も続くマスク着用、「日焼け止め」は使うべき?

 経済活動や人の移動が再開する一方で、新型コロナウイルスの流行は「収束」とは言いがたい状態が続いている。今しばらくは外出時、特に人が集まる環境下において、マスク着用は続きそうだ。本格的な夏を迎えるにあたり、個人的に気になるのは「マスクと紫外線」の関係である。「この夏はマスク焼けするかもね」と、冗談まじりで話していた時期もあったが、実際問題マスクの下にもUVケア(日焼け止め)は必要なのだろうか?資生堂グローバルイノベーションセンターの中西紘美研究員に話しを聞いた。

一般的な不織布マスクは、紫外線を通すのか?

 マスク着用時は、顔の半分をすっぽり覆われている状態にある。素朴な疑問として、マスクは紫外線を透過するのだろうか? 中西研究員は「意外に透過しているんだな、というのが実験をしていた時の正直な感想です」という。

 「肌に何もつけていない時の紫外線透過率を100%とすると、一般的な白い不織布マスクの場合、厚みや繊維の構造にもよりますが、私たちが実験したマスクの中では約14%~20%透過していました」。だとすると、8割も紫外線をカットしているわけで「UVケアは必要ないのでは」と思う方もいるだろう。しかし、透過する紫外線量と紫外線を浴びる時間を、SPF値の観点から数値化し、UVケアを塗布した場合と比較してみると「意外に透過している」という言葉の意味が理解できる。

 「肌に何もつけていない場合の紫外線透過率を100%とすると、SPF50+・PA++++の UV ケアを正しく塗布した場合、理論値で考えると紫外線の透過率は『2%以下』に抑えられると考えられます。しかし、実験で使用した不織布マスクのみの場合、『約14~20%』透過していました」。

 実に7倍以上の差があるわけで、紫外線を浴びる状態が続くほど、ダメージの蓄積にも差がつく可能性がある。目に見える日焼けはもちろん、肌内部に炎症を発生させたり、コラーゲン組織の破壊にも影響を及ぼし、光老化の原因となることも。「このことから、マスク着用時にもUVケアは必須であると資生堂は考えています」と、中西研究員。

色や素材によって、マスクの紫外線透過率は変わる

 現在ファッションブランドのオリジナルデザインや、ハンドメイドのマスクを含め、実に多種多様なマスクが存在している。素材、色、厚み、繊維の密度、そして形状もさまざまで、全てを一概に語ることは難しい。

 「あくまで一般論としてですが、白などの薄い色よりも黒など濃い色の方が、紫外線の透過を防ぐ働きがあります。また編み目が粗い繊維より、密に編み込まれた繊維のほうが、透過しにくいといえるでしょう。また顔にピタッとフィットする形状と、隙間が空く形状では、後者のほうが紫外線を浴びる可能性が高まります」。

 一方で、どんな色、素材、形状のマスクであっても、ランチの時など「生活の中でマスクを外すシーン」は、必ず存在すること。加えて仕事が外勤であったり、内勤の場合もオフィスの席が窓際にある方は、紫外線リスクも高い状態にあり、夏場はUVケアの使用を推奨したい。ちなみにマスクに覆われている……という、特殊な環境下において、選ぶべきUVケアとはどんなものだろう?

マスク着用時に選ぶべきUVケアの条件とは?

 「夏場は皮膚温が上昇し汗もかきますので、マスクの中は高温多湿で崩れやすい状態になります。まずは汗・水に強い、ウオータープルーフタイプが望ましいでしょう。また、マスクを着脱するシーンは生活の中に必ず存在しますので、こすれに強い機能も必要です。これまで、このようなタイプのUVケアはレジャーシーンでの使用を想定されていましたが、夏場のマスク着用時には合っていると思います」という。

 物理的にマスクで顔を覆う分、SPF値は日常紫外線をカットするSPF30程度あれば十分という。ただ、個人的な肌感覚としては「汗水に強く、こすれにも強いUVケアは、それこそ高SPF値のレジャー仕様では」と思わなくもないけれど……。

 「ひと昔前までは高SPF値のUVケアに、白浮きや伸びが悪い、肌に負担になりそうというイメージをお持ちの方も多かったと思います。近年ではテクスチャーが進化して、日常的に心地良くお使い頂けるものも増えています。フィット感が軽く、肌に負担を感じないものであれば、もちろん高SPF値のUVケアをお使い頂いて大丈夫です」と語る。

 その一方で、これだけ長期間に渡りマスク着用習慣が続くのは、これまで経験したことのない状況でもある。資生堂の研究でも、マスクによって肌の不調を感じている人が増えているという。「いつもと違う肌状態を感じたら、無理せずに低刺激設計のUVケアをお使い頂けたらと思います」と、中西研究員。

 以上をまとめると、1、汗・水に強いもの。2、こすれに強いもの。3、感触と塗布膜が軽やかなもの。4、(敏感に傾いた場合は)低刺激性のもの。5、SPF値は30以上、これらが夏のマスク着用下にふさわしいUVケアの条件といえそうだ。以下に、今シーズン登場したUVケアから、マスク着用時に最適なものを、いくつかピックアップしたい。

汗・水・熱で塗布膜を強化する、高機能UVケア 「アネッサ」

 紫外線防御効果と、崩れにくさに定評がある、資生堂の「アネッサ(ANESSA)」シリーズ。「パーフェクトUV スキンケアミルク a」はSPF50+・PA++++という国内最高基準の紫外線防御効果に加え、こすれにも強く、汗や水に触れることで塗布膜を強化する、独自の技術が採用されている。さらに今シーズンは、夏特有の「熱」を感知すると、塗布膜が強化される機能も追加に。高温多湿、こすれやすいマスク着用の環境に、あらゆる角度から対応する点が頼もしく、みずみずしい感触で肌を1日中守ってくれる。

空気のように軽やかな、ストレスフリーのつけ心地 「イヴ・サンローラン」

 現代女性特有の「過労肌」に注目した「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のスキンケア、ピュアショットシリーズから誕生した「ピュアショット UV50」。従来品の8分の1という薄さのエアリーフィルム処方を採用し、空気のように軽やかなつけ心地を実現。薄膜で肌にフィットし、紫外線や大気汚染物質など外的環境からも肌を守りながら、シトラスピールとビタミンE・B3の力で、肌を明るく整える効果も。マスクで覆われた状態でもストレスを感じることなく、1日中いたわりたい。

「赤色光」を味方につける、新発想の日中用美容液 「ポーラ」

 太陽光に関する斬新な知見で「日中のスキンケア効果」を追求したのが、「ポーラ(POLA)」の「B.A ライト セレクター」だ。SPF50+・PA++++のプロテクト効果で、肌にダメージを与える紫外線と近赤外線はしっかりカット。同時に肌の土台となる構造を強化し、ハリ・弾力感を支える「赤色光」のみを選択的に透過するというスマートな設計だ。B.Aシリーズと共通のスキンケア成分を配合し、マスクの着用で機能が低下した肌をいたわる働きも。大人の肌のための日中用エイジングケアとして活躍させたい。

敏感に傾いた肌を守り、1品で薄化粧効果も 「アクセーヌ」

 まるでスキンケアクリームのように柔らかな保湿感で、敏感に傾いた肌をいたわる「アクセーヌ(ACSEINE)」の「スーパーサンシールド ブライトヴェール」。SPF50+・PA++++の紫外線防止効果と同時に、肌に負担を感じにくい低刺激設計にこだわった1品だ。今シーズンは角層のセラミド生成力を促す効果が加わり、肌自らのバリア機能をサポートする働きが向上。ほんのりピンク色で、肌を自然にトーンアップする効果も。1品で薄化粧効果もある多機能さが、デリケート肌の女性たちに支持されている。

マスク着用時は「ぬり方」にもひと工夫を

 崩れやすく、こすれやすい「夏のマスク着用時」のUVケアは、塗り方にもちょっとした工夫を取り入れたい。「まずは塗りムラができないことが重要です。顔全体に塗布する場合は、両頬・額・鼻筋・あご先の5点にUVケアを置き、そこからフェイスラインや顔の中央に向け、均一に伸ばしていきます」(中西研究員)。

 手のひらに取りそのまま塗布すると、塗り始めの部分にぼてっと厚くつきやすくなる。しかし、5点に置いてから伸ばすと、顔全体に均一に広がりやすいという。「マスクの着脱でこすれやすい肌との境目と内側は、特にしっかりカバーを。資生堂はこのエリアをチューリップゾーンと名づけ、重ねづけを推奨しています」。

 そして、「適量」を使うこともポイントとなる。使用量が少ないと塗りムラが発生しやすいことに加え、製品に表示されたSPF値の防御効果を発揮できない場合もあるからだ。使用量の目安を守り、顔はもちろんマスクから露出するフェイスラインもしっかりプロテクトしよう。

 改めて「真夏に長期マスクを着用する」という経験はこれまでになく、「多くの女性がマスク着用を経験するであろう」という意味で、今シーズンは極めて特別な夏といえそうだ。紫外線や蒸し暑さと折り合いをつけながら、光老化から肌を守るために、UVケアとも上手につき合いたい。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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