今年創業10周年を迎えるスウェーデン・ストックホルム発のジュエリーブランド「オール ブルース(ALL BLUES)」。フレデリック・ナトホルスト(Fredrik Nathorst)とジェイコブ・スカラッゲ(Jacob Skragge)による同ブランドは、ジェンダーレスなミニマルデザインで、性別や年齢を問わずに幅広い層から人気だ。アイテムにはリサイクルされたスターリングシルバーやゴールドが用いられており、ストックホルムで3代にわたる鋳物工場が手作業で製作する。ECサイトのほか、世界11カ国のセレクトショップで販売されており、日本ではビオトープ(BIOTOP)、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、ジャックポット(Jackpot)などで取り扱う。
10周年を記念して、ビオトープ(BIOTOP)とのコラボコレクションが7月23日に全国のビオトープと公式ECサイトで発売される。創業者の一人、ジェイコブ・スカラッゲにこれまでの軌跡やコラボレーションへの思いを聞いた。
WWD:2人はどこで出会い、なぜジュエリーブランドを始めようと思ったのか?
ジェイコブ・スカラッゲ「オール ブルース」創業者(以下、スカラッゲ):僕とフレデリックは高校で出会った。僕らはナイーブで好奇心旺盛なところが似ていて、音楽やファッションの趣味も共通していた。当時の僕らにとって、これだけたくさんのブランドが世の中に溢れているのに自分たちとつながりを感じるジュエリーブランドがないことが不思議だった。そこで僕らは自然とこの分野で何かできるかもしれないと考え始め、高校卒業後20歳のときに「オール ブルース」を立ち上げた。
WWD:ジュエリーやビジネスに関する知識はどこで学んだ?
スカラッゲ:僕らは初め、専門的な知識が何もなかったんだ。しかし、知識がないままに進むのは非効率だったので僕はビジネスを、フレデリックはアートディレクションを学ぶためにあらためて学校に通い、学びながら実践していった。おかげでたくさん失敗もしたが、とにかく良い製品を作ろうとひたすら努力した。現在デザインは2人で考えているが、フレデリックは主にクリエイティブに関すること、僕はビジネスに関することを担当している。
WWD:ブランド名に込めた思いは?
スカラッゲ:マイルス・デイビス(Miles Davis)の曲からとった。10年前にフレデリックの家のキッチンで自分たちの商品を製作していたころ、僕たちはジャズとブルースばかり聴いていた。中でもこの曲は当時の僕たちが感じていた若さや興奮をよく表現している曲だったんだ。
WWD:10周年を迎えた気持ちは?
スカラッゲ:10年も続くなんて思ってもいなかったよ。もちろんうれしいけど、僕の性格上あまり過去を振り返るタイプではない。こんなに長く同じことを継続できるなんてエキサイティングだ。
WWD:女優のエマ・ワトソン(Emma Watson)が愛用者として知られている。彼女はどうやって「オール ブルース」を見つけた?
スカラッゲ:ある日、彼女のスタイリストのレベッカ・コービン・マーレイ(Rebecca Corbin Murray)から連絡があった。彼女がエマに「オール ブルース」を紹介してくれたんだけど、僕たちのブランド哲学や、ストックホルム内で製作している背景などにも共感してくれたんだ。エマのような素晴らしい人が着用してくれたおかげで、信頼できるブランドだと人々に思ってもらえるきっかけになったと思う。
WWD:なぜストックホルムでの生産にこだわるのか?
スカラッゲ:まずは製品のクオリティーを保つためだ。この土地には素晴らしいクラフツマンシップがある。ほかで作ればコストを抑えられるかもしれないが、何世代も受け継がれてきた知識や技術を守ることの方が大切だと考えるからだ。実際に僕たちがお願いしている金細工職人の工場は、僕らのオフィスのすぐ近くにある。職人たちの近くで働くことで、知識のない僕たちは効率よく学ぶことができた。材料の輸送など交通に関わる環境コストを抑えられることもメリットだ。
WWD:デザインへのこだわりは?
スカラッゲ:日常使いができてリラックスできるデザインにこだわっている。シンプルなものは一歩間違えればつまらなくなる。僕たちはシンプルなデザインの中にもスピリットやエナジーを感じられるように心掛けているんだ。
WWD:ジェンダーを意識させないデザインも特徴だ。
スカラッゲ:ユニセックスのブランドだが、特定の女性や男性をイメージして作るときもある。しかし女性だからこうあるべきだ、というようなラベルを貼ることはしない。僕らは従来のファッションマーケットが生み出してきた偏ったジェンダーイメージに違和感を覚えていて、「オール ブルース」ではリアルな人々の個性を大切にしたいと思ったんだ。
WWD:この10年の間に顧客層に変化はあったか?
スカラッゲ:最初はメンズジュエリーブランドとして開始した。その後2015年にウィメンズ商品を発売し、女性客も増えた。今ではジェンダーレスなブランドとして、幅広い年齢層の顧客がいる。僕らの商品が多様な人に受け入れられていることはとてもうれしい。美しさの本質を理解していればどんな顧客ともつながることができるんだ。
WWD:広告ビジュアルにも多様性を取り入れている。
スカラッゲ:その通り。僕らにとって年齢は関係ない。どんな人でもナチュラルなメイクと光でその人の個性が出るビジュアルを意識している。そのナチュラルな雰囲気が「オール ブルース」らしさだ。
WWD:ビオトープとのコラボについて教えて欲しい。なぜ今回コラボすることになったのか?
スカラッゲ:ビオトープは日本で初めて「オール ブルース」を取り扱ってくれた店だ。そのビオトープが偶然にも僕たちと同じ年に10周年を迎えることを知り、何か特別なアイテムを一緒に作ろうという流れになった。思い入れの強いビオトープと一緒にコラボできてとてもうれしい。コレクションは僕らの共通点でもある数字の“10”をテーマにデザインした。どれもシンプルで、僕たちが何者であるかをよく表現できていると思う。
WWD:これから挑戦したいことは?
スカラッゲ:今年の挑戦として、夏に初の店舗をストックホルムに出す。また新しいECサイトも立ち上げる予定だ。いつか成し遂げたい夢は、大好きな日本に店舗を出すことだ。