暑い日射しを遮ってくれる夏の味方は、つばの広い帽子です。どこか懐かしいバケットハットはしばらく前から人気ですが、2020年春夏シーズンのランウエイでは、多くのブランドがエレガントでボリューム感のある新モデルを投入。広いつばはソーシャルディスタンシングや紫外線(UV)カットの両面で役立つので、この夏はつば広帽をコーディネートのキーピースに迎えたくなります。
「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、背中側がすだれのように長くなった、異形のつば広ハットを披露。後頭部の日焼けを防ぐ効果が期待できるうえ、背中側からの視線も受け止めてくれそう。不規則に波打つつばも、気負わない雰囲気を印象づけます。この夏に向けて、さまざまなブランドから、普段使いにも役立つ帽子コーデが提案されています。
深めクラウンはノーメークでも安心 小顔効果も発揮
髪と頭を収めるクラウン部分が深いタイプは、程よく顔の上半分が隠れて、ノーメークでも安心してかぶれます。マスクとの兼ね合いで、メイクを控えたい昨今の事情にも好都合。ミステリアスなムードだけでなく、小顔効果まで引き出してくれます。
「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」の帽子ルックは、どこかサファリ気分のたたずまい。軽やかトレンチコートにショートパンツを引き合わせて、“街中アウトドア”の装いにまとめ上げました。バケットとクロッシェ(釣鐘帽)をミックスしたかのような、深いクラウンのハットで、クール&マニッシュのムードを全体にまとわせています。
甘めレーシーワンピースを上品クールに味付け
つばが広く、リボンをクラウンに巻いた優美なタイプは“女優帽”とも呼ばれ、装いにエレガンスを寄り添わせてくれます。麦わら帽子のように、つばがフラットな形はサマールックになじませやすいシルエットです。
「セリーヌ(CELINE)」のニットワンピースはレース編みが涼しげ。つばの広いハットで、さらに夏のムードを濃くしています。70年代ヒッピーの感覚がどこか漂うスタイルを、上品テーストにアレンジ。帽子の黒リボンと、レザーバッグ、ロングブーツを響き合わせて、清涼感の高い“白×黒”コーデに整えました。
バケット×ストローで休日リラックスムード
帽子を取り巻く近ごろの新傾向は、異なるタイプを融け合わせたような“ハイブリッド”のシルエット。夏のカジュアル帽子の代表的なストローハットも、人気の続くバケットハットの形と組み合わせた新顔が登場しています。
オーバーサイズのリラクシングなトップスを主役に迎えて、伸びやかなコーデを組み上げたのは「ディオール(DIOR)」。フロントポケットが印象的なゆったりパンツは、ワンマイルのお出かけにぴったり。植物素材のバケットハットがナチュラル感をプラス。オフ感たっぷりの自然体コーデに仕上がりました。
特大日除けハットでマリン気分を満喫
紫外線をブロックしたい夏にこそかぶりたいのが、つばが破格に広い“スーパー女優帽”。広いつばに主張があるから、着こなしのイメージチェンジャーを任せられます。周囲とのスペースを確保できるソーシャルディスタンシング効果が見込める点でも、この夏に使える帽子です。
「ランバン(LANVIN)」はスカーフ柄のようなモチーフを全面にあしらったプリントワンピースで、リゾートやマリンのテーストを呼び込みました。海のムードを漂わせる決め手は、海賊風のつば広ハット。正面を折り上げて、顔周りを明るく演出。ビッグバッグでボディの華奢感を印象づけています。
顔をくるんで、ドラマチックな特別感
大胆なビッグハットは、さっぱりしがちなサマールックに華やぎをもたらしてくれます。時に試したいのは、帽子をキーピースに据えたスタイリング。全体をワントーンでまとめれば、ドラマチックな着映えが完成します。
「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」は、布をふんだんに使った、たっぷりドレープのドレスで、ファビュラスな装いに導きました。艶美でミステリアスなドレス姿に、同じ色のつば広ハットが主張と特別感を上乗せ。大ぶりのフラワーモチーフも添えて、顔周りを華やがせました。
つば広ハットはかぶるだけで、夏コーデのムードを変えてくれるため、手軽な着回しに役立ちます。手持ちのワードローブから別の表情を引き出すうえでも重宝するので、UVカットとソーシャルディスタンシングも兼ねて、夏の装いに取り入れてみては。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い