アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)は7月27日、米証券取引委員会(The Securities and Exchange Commission以下、SEC)から不正会計の疑いで法的措置を受ける可能性があるとの通知を受け取ったことを明らかにした。
これは“ウェルズ・ノーティス(Wells Notice)”と呼ばれるもので、調査対象に釈明の機会を与えるため事前に送付される。今回、SECはアンダーアーマーの2015年7〜9月期(第3四半期)から16年10〜12月期(第4四半期)の会計処理を調査した結果、売り上げを前倒しに計上して収益が好調であるように見せかけた疑いがあるとして、同社のケビン・プランク(Kevin Plank)創業者兼エグゼクティブ・チェアマンと、デイビッド・バーグマン(David Bergman)最高財務責任者にこの通知を送付した。
同社はSEC向けの開示資料で、「会計処理は適切に行っており、解決に向けてSECと対話を進めていく」と述べているが、さらなるコメントは差し控えるとした。なお同社は、会計処理を巡って17年からSECの調査対象となっていたことを19年11月に発表している。
アンダーアーマーはここ数年ほど業績が低迷しており、17年と18年はそれぞれ50億円程度の赤字を計上。19年は売上高が前期比1.4%増の52億6713万ドル(約5583億円)、純利益は9213万ドル(約97億円)と赤字を脱出したものの、20年1〜3月期(第1四半期)は新型コロナウイルスの影響もあり、売上高は前年同期比22.7%減の9億3024万ドル(約986億円)、純損益は前年同期の2247万ドル(約23億円)の黒字から5億8968万ドル(約625億円)の赤字となっている。
ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス(Ross School of Business, University of Michigan)のエリック・ゴードン(Erik Gordon)教授は、「こうした不正会計などを行っているのはアンダーアーマーだけではない。アパレルや小売業界では、返品条件を緩やかにしてでも過剰に商品を販売して、とりあえず当期の売り上げ目標を達成し、返品などによる損失は来期に回していくという“慣例的な手法”が長年まかり通っている。今回のSECによる通知は、そうした手法は違法だと業界全体に対して警告したとみることもできるだろう」と語った。