ファッション
連載 ゲームカルチャー解体新書

ゲームカルチャー解体新書Vol.2 ゲーム課金とファッションの相性とは?

 約15年にわたり、ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わる私が、ファッション業界をはじめ、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性や新しい価値を提供することができたら。そんな想いで新連載をスタートさせていただきました。

戸簾俊広(以下、戸簾):ゲストを迎えての初回は、ゲームカルチャー協会の松岡雅幸・代表理事に来ていただきました。ゲームカルチャー協会とは、どういう団体なのでしょう?

松岡雅幸ゲームカルチャー協会代表理事(以下、松岡代表理事):大義を持って活動している団体です。海外に比べると日本は、大会の賞金が少額。ゲーマーのポジションや法的なルールも課題が多く、スケールし辛い環境です。そんな課題を内閣府と通じて、ユーザー目線で解決しようという機関です。首相官邸のホームページにも紹介してもらっているんですよ。

戸簾:松岡さんの大義を聞いて、「ゲーム業界とファッション業界がつながったら、面白そう」って思ったんです。ファッション業界は、ゲーム業界と最も積極的にコラボレーションすべき業界だと思っています。

松岡代表理事:日本独自の課金モデル「ガチャ」は、ヨーロッパでは法律で禁止されているんです。逆にそのくらい「ガチャ」には市場力がありますから、海外の主流であるアバター課金のビジネスモデルは、日本人には馴染みが薄いかもしれません。でも日本でもアバター課金が広がれば、ファッションが絡むのは当たり前になりそう。最近、良い事例が出始めましたね。「あつまれどうぶつの森(あつ森)」です。「あつ森」のマイデザインには企業やブランドが参入していて、ブランドの洋服やメイクが登場しています。

戸簾:普及すればファッション業界にとって、明るい未来の可能性になりますね。

松岡代表理事:海外市場の大きさも魅力的ですよ。特にリーチを増やすなら、インドネシアなどのスマホ大国を狙うべきです。スマホが当たり前の国は、ページビューが圧倒的に多いんです。今日本で一番メジャーなスマホゲームは「モンスターストライク」で、ユーチューブの公式チャンネル登録者数は約105万人。ところが海外では「リーグ・オブ・レジェンド」という作品が有名ですが、MOBAという同様のゲームジャンルのモバイルバージョン「モバイル・レジェンド」っていうゲームのユーチューブの公式チャンネル登録者数は約715万人です。インドネシア専用のアカウントだけでも約90万人が登録しています。母数が全然違うんです。こうした視点でゲーム業界を見ると、ファッション業界の方にも魅力的に映りませんか?

戸簾:日本と海外では、なぜこんなに市場成長も大会の賞金も、ゲーマーポジションも違うのですか?

松岡代表理事:もちろん人口の影響も大きいのですが、一番の問題は法的環境です。日本のゲーム業界は、景品表示法と賭博法、風俗営業法という3つの法律で規制されています。まず景品表示法では賞金の最高額が10万円までと規制され、賭博法では参加費の一部を賞金に充てることが禁止され、風営法ではゲームセンターなどの施設ではイベントを主催することさえできません。非常に厳しい、日本らしい法環境です。それをくぐり抜けるべく、日本eSports協会(JeSU)が立ち上がりました。JeSUはプロライセンスを発行できる機関で、消費者庁に申し込み大会開催の許可を得たものだけにプロライセンスを発行。パフォーマーやインフルエンサーなどのプロの人には、「出演料」という名目でギャラを支払います。そうすると、金額が変わるんです。

戸簾:なるほど!ゲーマーの方々は、そういう事情を知ってるんですか?

松岡代表理事:人それぞれですが、僕みたいにゲームの大会で知り合った人とコミュニティを広げたい人もいれば、好きな事で稼ぎたい人もいます。単純に名誉で頑張っている人もいるんですよ。

戸簾:オリンピックの公式種目なんて話もあるんだから、国は夢を見られる環境を整えて欲しいですね。ファッション業界がサッカーや草野球チームみたいに「ゲームチーム」を作って、ゲームのコミュニティーの中で人気者になって、その販売員とコミュニケーションできる機会があっても良いですね。

松岡代表理事:ゲームカルチャー協会は立ち上げて1年ぐらいですが、メンバーには東京大学を卒業後にアクセンチュアを経てアプリ開発のスペシャリストになった吉積礼敏さんや、スクエア・エニックス米国法人の最高執行責任者だった岡田大士郎さんら強いネットワークを有しています。面白い事ができますよ。

戸簾:最近、ネガティブな話も多かったから、とても楽しかったです。今回は本当にありがとうございました。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

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