ファッション
連載 YOUTH

ZOZO傘下入りの26歳のyutori社長を直撃 「30歳までの上場、いけるんじゃない?」

 インスタグラムを中核に古着やビンテージ風ウエアのファンによるコミュニティを創出した後、「ナインティナインティ(9090)」や「スプーン(SPOON)」などのD2Cブランドをスタート、さらにはバーチャルインフルエンサーのプロモートまでを手掛けるyutoriの片石貴展(たかのり)社長はこのほど、株式をZOZOに売却。ZOZOがyutoriの51%の持ち分を取得した。「ZOZOのオンラインと、僕らのコンテンツでyutoriの上場を目指す」という。

 yutoriという社名から連想する「『緩やかな成長で満足』みたいな気持ちはない?」と投げかけると、「一切ない」と今年も27歳を迎える片石社長。ZOZOグループ入りの狙いは?

WWD:今回のZOZOグループ入りの背景は?

片石貴展yutori社長(以下、片石社長):「コロナ、ヤバい」という感覚が働き、2月くらいから資金を調達すべく、いろんな人にお会いしてきた。話しているうちに、ZOZOとは「一緒にやったほうが、相互補完できる」と思うようになった。最近のアパレル企業の上場と言えば、TOKYO BASEくらい。TOKYO BASEは、店舗というアセットがある“手堅いビジネスモデル”。ZOZOのインフラと、yutoriのコンテンツの双方が揃えば、めちゃくちゃ強くなれる。

WWD:具体的には、どんなビジョンを描いている?

片石社長:アパレルの商品企画や製造でシナジーが発揮できる。今あるD2Cブランドを大きくすることもできるし、数を増やすことも可能だ。僕らはこれまで、自分たちだけでブランドを作ってきた。蓄積してきたノウハウをシェアし、誰かと一緒にやるだけでも、新しい展望が待っている。

WWD:これまでのノウハウとは?

片石社長:レガシーブランドと違って、「知らない人に、知ってもらう」を考えながらビジネスを拡大してきた。インスタグラムのフォロワーを伸ばし、コンバージョンを上げ、売り上げを積み上げる経験を重ねている。小さな正方形の画面の中でブランドを伝えるには、ディテールではなく、アティチュードやメッセージ、グラフィックが大事。その文脈をどう作るのか?コンセプトとルック、プロモーションを立体的に組み合わせてきた。

WWD:ならば、業績は伸びている?

片石社長:去年の4~6月と比べると、今年のD2Cブランドの売り上げは9倍に達している。

WWD:yutoriという社名だから「こんなに成長しているし、もう十分」なんて思うことはない?

片石社長:一切ない(笑)。いい会社になってきたとは思うけれど、今回の資本・業務提携をきっかけにダイナミズムを追求し、自分たちの考えを広めたい。創業以来、「臆病な秀才の最初のきっかけを、創り続ける。」を目標に、洋服は好きだけど、アパレルの経験はない人たちと数字を作ってきた。自信が生まれ、火がついたり、変わったりしてきた子が増えている。作家より編集者タイプの僕は関わる人数が増えたほうが楽しいし、yutoriで自分に自信が持てるファッション好きが増えればと思う。ネットが当たり前のゆとり世代やZ世代は、数字とともに生きてきた。今の売り上げがもっと大きくなれば、それぞれの自信も大きくなるし、自信を持てる人が増えると思う。

WWD:例えば今のyutoriには、どんな風に自信を持ったスタッフがいる?

片石社長:ZOZOの会見で使ったグラフィックを作ったのは、今ハタチのスタッフ。渋谷の街でリアルに写真を撮り、それをデジタル上でコラージュした「デジタル・ストリート」なビジュアル。18歳で入社した彼は高校生の時、引きこもりだった。それが今はバーチャルインフルエンサー事業を手掛けるVIMでグラフィックデザインを担当するなど楽しそうで、自分のことを好きになっているカンジがする。創業時からのメンバーは今、大学のミスコンに出ている。それまでは部活動のマネジャーをやっていて、でも実はあんまり楽しくなくって、服は大好きだけど、業界には飛び込めないってカンジだった。それが今は、「ナインティナインティ」というブランドのクリエイティブを担当している。今は社員とアルバイトで30人程度の会社だが、これを機に新たな人材を獲得したい。

WWD:今欲しいのは、どんな人?

片石社長:正直、ビジネスの経験者が欲しい(笑)。これまでは本当に若い子たちだけで、一緒に育つ感覚だった。その感覚は必要。でも業界での経験が3、4年あれば、成長への道のりをショートカットできそう。今の最年長は28歳なので、30歳くらいの、しっかりした、ファッション好きが入ってくれれば。

WWD:片石社長の働き方も変わる?

片石社長:僕は今後、もっとZOZOと協働することになる。yutoriとZOZOを組み合わせたらどうなるかを想像して、実践する。既存ブランドや事業は、他のメンバーだけで大丈夫。得意な、人が楽しめる環境づくりにも今以上に注力したい。

WWD:上場はいつまでが目標?

片石社長:自分が30歳になる2023年のうちに上場したい。「いけるんじゃない?」って思う。起業して2年でこうなるとは思わなかったので、「みんなで頑張れば、いけるんじゃないかな?」と。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。