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「マスク荒れ」増加! 女性のリアルな声と正しいスキンケア法を伝授

 最近目にする機会が増えたのが、「マスク荒れ」に関するニュースや美容記事だ。新型コロナウィルスの流行が始まってから4カ月以上、冬場から継続している場合は半年以上も(しかも夏場まで……!)マスク着用の習慣が続いているわけで、確かにこれは過去に経験したことのない状況といえる。果たして実際に「マスクによる肌荒れ」は増加しているのか?もしそうなら、肌とどう向き合えば良いのか? 今回は、資生堂 グローバルイノベーションセンターの、菊田雅之研究員にお話しを伺った。

20~30代では、過半数の女性が「マスク荒れ」を実感中

 資生堂には、接客をつとめる店舗のビューティーコンサルタントから「コロナ禍を経て肌が敏感に傾いている」「肌荒れしている」というお客さまの声が急増しているという意見が寄せられたという。「そこで実際に20~40代の女性にウェブを通じてアンケート調査を実施し、コロナ禍後に美容で変化したことを尋ねました。『マスクをつけることで肌荒れするようになった』が38.4%、同じくマスク着用により『肌がかゆくなるようになった』が43.3%。『ニキビができやすくなった』が、34.3%という回答を得ています」(菊田研究員)。

 内訳をひもとくと、年代によってマスクによる肌荒れの内容に差があるようだ。「『かゆみが気になる』は20~30代が多く、20代が52.9%、30代が51.5%と、ともに過半数を超えました。『ニキビが出来やすい』は20代が最も多く55.9%。『肌荒れするようになった』も20代が67.6と最も多く、これは敏感に傾く人とニキビが出来やすくなる人が混在していることや、生活習慣も関係していると考えられます」(菊田研究員)。

 いずれにせよ、マスク着用により肌荒れを感じている女性は、全体の約4割近くにのぼり、特に20~30代では過半数の女性が何がしかの肌不調を感じている。確かに「マスク荒れ」は増加しているといえそうだ。

夏のマスク内は「湿度」「汗」「皮脂」の三重苦

 「マスク着用によって肌荒れが生じる原因の1つは、マスク内の湿度が高くなることです」と、菊田研究員。湿度が高いと聞くと、一見肌には良さそうに思えるかもしれないけれど……?

 「一般的な生活シーンにおいて、快適な湿度は50~60%と言われています。湿度が過剰な環境下にいると、肌の最外層を守る角層がいわばふやけた状態となります。この状態の角層は外部環境の影響を受けやすくなり、マスク着脱時に水分量が急激に変化しやすい。バリア機能にも影響を及ぼし、水分が蒸散しやすくなる。これは、お風呂上がりの肌と似た状態ですね」(菊田研究員)。

 ちなみに医療現場で用いられる密閉性の高い「N95マスク」を着用した場合、内部の湿度は約80%まで上がるという論文も。一般的な不織布のマスクはそこまで気密性が高くないとはいえ、マスク内が高湿度であるのは間違いない。

 「加えて夏場は皮膚温が上昇し、汗や皮脂の分泌も増加します。過剰な汗が原因で、かゆみを引き起こすことがある。また同じく過剰な皮脂がアクネ菌のエサとなり、ニキビを誘発する原因となります」(菊田研究員)。

マスクの「つけ外し」に要注意。温度差も肌荒れの要因?

 実はマスク荒れの要因は「マスクをつけたり外したりする行為」にも存在するという。飲み物を口にする時など、日常生活の中には一瞬マスクを外すシーンが必ず存在するはずだ(ここ最近外を歩いている時など、暑くて一瞬マスクを外し『ぷはっ』と息をついてしまう)。1日に何度か繰り返すマスクの着脱によって、肌とマスクがこすれ、角層がダメージを受けること。さらにマスク内の高温・高湿環境から、いきなり肌が外気にさらされて、温湿度の変化を受けることも問題だ。

 「資生堂の研究で、急激な温度・湿度の変化により、肌内部で酵素カスパーゼ14の働きが低下することが判明しています。カスパーゼ14は、肌のバリア機能や保湿機能の育成に関与する酵素。つまり、肌が急激な温度・湿度の変化を感知すると、バリア機能や保湿機能の低下の要因となります」(菊田研究員)。

 マスク着用でただでさえ角層がふやけて弱っているところに、突然温度・湿度の急激な変化を経験することで、バリア機能低下に拍車がかかってしまうというわけだ。これらの要因が複合的に重なった結果、多くの女性がかゆみ、ニキビ、肌荒れといった「マスク荒れ」を実感しているように思う。

マスク荒れには「低刺激のスキンケア」を

 マスク荒れやストレスの影響か、コロナ禍後「スキンケアに対する女性たちの意識」も変化しているようだ。「前述のアンケート調査では、コロナ禍を経て『肌を守れるようなスキンケアを使いたい』という回答が71.1%にものぼりました。また『保湿を重視するようになった』という回答も55.2%と、過半数を超えています」(菊田研究員)。

 具体的には、どのようなお手入れをすべきなのか?バリア機能が低下すると、洗顔や保湿、衣服が肌に触れるなど、普段なら何でもないことが刺激になる。「このような肌状態の時には、まず低刺激性のスキンケアをお使い頂くと安心です。お手入れのうえで大切なのは、肌に摩擦をなるべく与えず、しっかり保湿することです」(菊田研究員)。

 汗や皮脂の分泌が増加する夏は、帰宅したらすぐに肌に付着した汚れを落とそう。クレンジングにはとろみやクッション性のあるテクスチャーを選び、肌に負担を与えずに汚れを浮き上がらせる。洗顔料はたっぷり泡立て、泡をクッションにして同じくやさしく汚れを落とすのがポイントだ。

 「バリア機能を立て直すために、夏場であっても手厚い保湿が必要です。肌がデリケートに傾いているときは、ちょっとした摩擦も刺激になることがあります。化粧水や乳液は、手のひら全体で丁寧に塗布を。クリームも手のひらでそっと肌を押さえるようになじませると良いでしょう」と、菊田研究員。手のひらを用いると「自身の肌状態を確かめながらお手入れできる」という利点もある。

 以下に、敏感肌用ベーシックケアの注目アイテムをご紹介したい。この夏から秋にかけては、高機能敏感肌ケアが続々登場する予定であり、新製品を中心にセレクトしてみた。

肌の常在菌バランスに注目し、自ら潤う力を育む化粧水 「d プログラム」

 資生堂の敏感肌総合ブランド「d プログラム(D PROGRAM)」のベーシックケアが、2020年8月21日に新処方へと進化を遂げる。今回新たに注目したのは、肌の上に存在する「皮膚常在菌」のバランスだ。スキンマイクロバイオーム研究を背景に、敏感肌特有の常在菌バランスを解明。肌に有効な働きを持つ「美肌菌」の働きを促し、自ら潤う状態へと導くことを目的としている。「モイストケア ローション MB」は、まろやかな感触で角層深部まで潤いで満たす化粧水。美肌菌を味方につけ、バリア機能を健やかに保ちたい。

ヒルドイドの成分とコーセーの技術を融合した敏感肌シリーズ 「カルテ」

 保湿・抗炎症薬「ヒルドイド」の開発を手掛けるマルホの技術と、コーセーが長年培った化粧品の製剤技術を融合し、9月16日に誕生するのが「カルテ(CARTE)」の「ヒルドイドシリーズ」だ。マルホから医薬部外品に始めて提供される「ヘパリン類似物質HD」を配合し、肌の保湿機能を担うラメラ構造の再構築をサポート。「モイスチュア クリーム」は、濃密な感触が肌の上で滑らかにとろけ、深い潤いで密閉するクリーム。バリア機能を立て直し、もっちりとした健やかな肌へと導いてくれる。

敏感肌特有の「老化サイン」に注目したエイジングケア 「ミノン アミノモイスト」

 1973年から敏感肌を見つめ続けてきた「ミノン アミノモイスト(MINON AMINOMOIST)」から、8月25日に誕生するのは待望のエイジングケアシリーズだ。敏感肌に生じるエイジングサインを研究し、弾力低下の根本要因として脂肪層に注目。9種類のアミノ酸に加え、新たにハリシェイプペプチドを配合し、内側からふっくらと満たされた肌へと導く。「アミノモイスト エイジングケアミルククリーム」は、乳液とクリームの中間のようにやわらかな感触。軽やかに広がり、しっかり潤いを閉じ込めて、ハリのある健やかな肌を手に入れたい。

サステナブルな低刺激ライン登場 「雪肌精」

 ブランド誕生35周年を迎えた、コーセー「雪肌精(SEKKISEI)」に、9月16日サステナブルな処方にこだわった「クリアウェルネスシリーズ」が誕生する。透明感を追求するブルーの高機能ラインに加え、新たにホワイトの「低刺激ライン」を設置。「クリアウェルネス ジェントル ウォッシュ」は、ポンプひと押しで、ふわふわの泡が誕生する低刺激処方の洗顔料だ。きめ細かくクッション性に優れた泡は、肌を摩擦することなく汚れを吸着。肌本来の潤う力をサポートしながら、スッキリ汚れを落とせるはず。

美容液オイル配合の、敏感肌用トリートメントクレンジング 「フリープラス」

 国内外で支持されているカネボウ化粧品の敏感肌シリーズ「フリープラス(FREEPLUS)」。最新作は、美容液成分を配合した「オイルセラムクレンジング」だ。メイクとなじみの良いアミノ酸系の洗浄オイルと、保湿作用に優れた美容液オイルをベストなバランスでブレンドし、自然にメイクになじんで軽やかに浮き上がらせる。べたつきを残すことなく、こすらずにスルッと洗い流せる処方は、フィット感の高いUVケアを使用する夏場の敏感肌の頼もしい味方。洗顔後は、キメの整ったしっとり滑らかな肌へと導いてくれる。

今後ますます存在感を増す「敏感肌ケア」

 今回ご紹介したアイテムは、当然コロナ禍以前から開発が進められていたものだ。つまりそれだけ、近年女性たちの間に「敏感肌対策のニーズ」が高まっていた証といえる。「マスク着用」や「ライフスタイルの変化」といった、思いもかけないコロナ禍によるストレスで、その潜在的な敏感肌ニーズが一気に加速した面も大きい。

 「肌が敏感に傾く要因には、睡眠や食生活も関係しています。ストレスケアも含め、ライフスタイル全般の見直しが必要となります」と、菊田研究員。その肝心のライフスタイル自体が、大幅な変化を余儀なくされている今。これまで以上に「敏感肌スキンケア」の存在感は、高まるのではないだろうか。

 睡眠時間を確保する、リラックスする時間を取り入れる、など自分にできる可能な範囲でライフスタイルを見つめ直すと同時に、敏感肌ケアは「揺らぎやすい肌のために、今できること」の1つでもある。実は外出の機会が増えて以降、首筋や顔に赤みやかゆみが生じ、個人的にも敏感肌ケアのありがたさを実感中だ。肌の揺らぎを感じた時の1つの対策として、女性を心理的にもサポートしてくれる存在であると思う。

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