「アナ スイ(ANNA SUI)」が新体制で日本のビジネスを進めている。3月末で三越伊勢丹ホールディングス(HD)が婦人衣料および雑貨のマスターライセンサーから撤退したが、4月1日付でジャパン社がスタートし、加藤圭氏が社長に就任。7月14日には、ジャパン社主導でバラの花柄をプリントしたガーゼマスク(700円)をファミリーマートで発売し話題になった。今回のマスクのように、「今後はジャパン社が率先して新しい販路を開拓し、マーケティングをしていく」(加藤社長)考えだ。
加藤社長はもともと、三越伊勢丹HD時代の「アナ スイ」と契約し、ブランディングコンサルタントなどを務めていた。三越伊勢丹HDと「アナ スイ」の契約終了にあたり、アナ・スイ本人と三越伊勢丹HDの両者から相談を受け、ジャパン社を立ち上げることに至ったという。三越伊勢丹HDが事業から撤退した4月以降も、化粧品のアルビオンやバッグ・革小物のクイーポなど国内のライセンシー11社は、ライセンス商品の生産・販売をそれぞれ続けている。
ジャパン社で加藤社長が強く意識しているのが、「コアなファンをもっと探すこと」。ブランドとして以前からの根強いファンはいても、近年はなかなか新しいファンをつかめてこなかったという経緯がある。「ファンになってくれそうな層を点でマーケティングしていきたい。たとえば、あるコミック(マンガ)のファンがブランドと親和性がありそうならば届けたいし、アーティストとブランドに共通点が見込めそうなら同様に届けたい」。そのように異業種と協業することで、新しいファンの開拓を目指す。同様にして、日本だけでなくアジアでのファン獲得も狙っていく。
販路の考え方も、百貨店中心だったこれまでから広げていく。「ディスカウントストア以外なら販路として考えたい」とし、コンビニでマスクを販売したような仕掛けも積極的に行っていく。マスクはファミリーマートの澤田貴司社長に直接プレゼンして実現した。商品としてマスクを選んだのは、「女性が使いやすいもので、日用品というジャンルはとてもいいと考えた」から。マスクならばライセンシー11社の領域と重ならない点もポイントだった。ライセンシー各社も基本的に主販路は百貨店であり、今後の販路政策は彼らにとっても課題ではある。「ジャパン社から特にライセンシーに対して指示などはしないが、マスクのようにわれわれがまず新しい販路を作っていくので、そこに共感してもらえたら嬉しい」。
ジャパン社としては実店舗の出店は現状想定していないという。その分、ECでブランドの世界観をしっかり伝えていく。これまでは化粧品やウエアなど、ライセンシーによってECサイトが別だったが、ジャパン社のもとで、本国からのインポートのウエアと一部ライセンシー商品(化粧品、バッグ・革小物、傘、アクセサリーなど)を集めた統合ECサイトをローンチ。秋以降はEC用の倉庫もライセンシーを超えて同一にし、カテゴリーの異なるアイテムでもギフトラッピングなどに対応する。