※この記事は2020年7月1日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
今回は「やるか?やらないか?」の議論も大事︎
「ディオール」(無観客)に続き「ヴァレンティノ」(イタリア人のみ招待)、そしてパリコレ(デジタルで補完)がリアルなランウエイショーを再開します。アメリカを筆頭に「第2波」を思わせる感染拡大が続く中、率直に「大丈夫なの?」と思うのですが、ラグジュアリーからデザイナーズブランドのトップは、「ショーは、やはりコレクションのストーリーを伝える最高の方法。それは物語の始まりであり、その後の店舗展開において非常に重要だ」(シャネルのブルーノ・パブロフスキー=ファッション部門プレジデント)と切望しています。議論は「やるか?やらないか?」ではなく、「どうやるのか?」みたいです。
私自身は普段「やるか?やらないか?」を議論するよりも、「どうやるのか?」を話し合いたいタイプです。だって「やるか?やらないか?」の議論って、大抵、(ものすご~く時間を費やして)「やらない」にたどり着いちゃう場合が多いから(笑)。「やるか?やらないか?」はスキップして「どうやるか?」を話し合ったほうが、結局、心にゆとりを持った状態で取り組めるとも思っています。会議ではまず、「この件については『やるか?やらないか?』ではなく、『どうやるか?』について話し合いたいです」と言い切ってしまうタイプ、それが私であります。
でも、今回についてはどうでしょうか?「ランウエイショーをやるか?やらないか?」の議論が比較的短期間で終了し、いずこも「ランウエイショーをどうやるのか?」にシフトしているのは、そんな僕さえ、ちょっと残念に思っています。「ここで新しいことに挑戦しなければ、いつやるの!?」って思うし、そもそも「ストーリーを伝える最高の方法は、本当にランウエイショーなのか?」について、もう少しじっくり考えても良いと思うんです。そう1回くらい、「ランウエイショーをやらない」を経験し、そこでももう一回「ランウエイショーをやるか?やらないか?」を考えてみれば良いのに。
そして、それを熟考するには、これまでのランウエイショーを比較対象とする相対論ではなく、それにとらわれない絶対論をベースにしてほしい。そうしたら、何か、まだ面白いことが生まれそうな気がするんです。「ストーリー」って言うくらいだから、絵本とかどうでしょう?上顧客にはカワイイ装丁、ニューカスタマーには電子版。たとえば、そんな突拍子もない考えだってアリだと思います。
かつてのランウエイショーについて考えるのは、最初のほんの一瞬。「ランウエイショーでは、何が達成できて、今、私たちは何を実現したいんだっけ?」と取捨選択するときです。ランウエイショーは、洋服を見せる舞台として使っていたのか?ゲストの社交場として機能していたのか?とにかく「このメゾン、スゴい!!」というパワーを見せつけるものなのか?実際のランウエイショーは全てをある程度満たしてくれますが、おそらく、1つのデジタル施策で叶えられるのは、そのうちせいぜい1、2個です。今ブランドは、そのうち何を一番の目標とするべきなのか?それを考えるときだけはランウエイショーを思い出して欲しいけれど、あとは一度忘れても良いのに。正直、そんな風に思っています。
個人的にはメンズシーズンの開幕を告げる、下で紹介する「エルメス」に期待しています。確固たるポリシーを有するブランドは、取捨選択上手。「エルメス」は、その代表的メゾンだと思うのです。メゾンが何を、どう見せたかったのか?反対に何は、重要度が低いから諦め、割愛したのか?プレゼンテーションのムービーから考えてみたいと思います。
FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。
エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。