イタリア・フィレンツェ発の「エルマンノ シェルヴィーノ(ERMANNO SCERVINO)」は、伝統的なサルトリアの仕立てと、刺しゅうやレースなどの職人技に定評がある。2000年のブランド設立以来“スポーツクチュール”をコンセプトに、日常着からイブニングドレスまで幅広くそろえている。これまではミラノでランウエイショーを行ってきたが、このたび初のオンライン開催となったミラノ・ファッション・ウイークに参加し、7月16日に21年プレ・スプリングコレクションを動画で披露した。
「エルマンノ シェルヴィーノ」は20-21年秋冬シーズンから、ウールン商会(大阪府中央区、岩井泰治・代表)と日本における代理店契約を結んだ。ウールン商会は7月から、これまでサン・フレールが運営してきた高島屋日本橋店、高島屋新宿店、高島屋大阪店、大丸心斎橋店の4店舗を引き継ぎ、9月1日には新店舗を東京の帝国ホテルプラザに開く。
日本での新体制やコロナウイルスの影響などについてデザイナーのエルマンノ・シェルヴィーノにメールインタビューに答えてもらった。
WWD:新型コロナウイルスはブランドにどのような影響を与えたか?
エルマンノ・シェルヴィーノ「エルマンノ シェルヴィーノ」デザイナー(以下、シェルヴィーノ):自分の弱さ、小ささを感じる経験になりました。私たちには独自の世界があると思っていましたが、このウイルスにより私たちがどれほどもろく、壊れやすい存在であるかということに気付かされました。しかし私たちは強く、新型コロナとの戦いにも打ち闘てるはずですし、この変化に適応する必要があると考えています。今のファッションには、きらびやかな誇張ではなく、謙虚さが求められると思います。それは、これまでのミニマリズムではなく、全ての年齢の女性が持つ共通の価値のこと。私はこれまでも“美しさ”に焦点を当ててきましたが、それは今後も変わることはありません。
WWD:ロックダウン中はどのように過ごしたか?
シェルヴィーノ:私は幸運なことに、トスカーナの丘に囲まれたカントリーハウスに住んでいます。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)も描いた歴史ある素晴らしい場所で、自然いっぱいの敷地内で、自然に触れ、美しさを再発見することができました。そこで、新たなニーズにも対応するクリエイションに取り掛かりました。
“これまで以上に着る人のニーズを見極める必要がある”
WWD:今後のコレクション発表はどうなっていく?
シェルヴィーノ:無観客ショーを行うということは、海のない砂浜に行くような感覚に似ていると思います。元の日常に戻るまで、テクノロジーを駆使したショーを発表することになるでしょう。イタリアの職人の手によって丁寧に作られた服は、モニター越しでもその良さが伝わると思っています。
WWD:日本ではウールン商会が新たなパートナーになった。
シェルヴィーノ:ウールン商会と取り組めることを楽しみにしていました。メード・イン・フィレンツェの私たちの哲学と魅力をお客さまに伝え、一緒にブランドを盛り上げていきたいと思います。
WWD:何か日本に関する印象的なエピソードがあったら教えてほしい。
シェルヴィーノ:日本は特別な場所だと思います。大都会の熱狂的なリズムと庭園や寺院の神聖な静寂が共存し、古代からの魂を現代も受け継ぐ魅力にあふれています。また、おもてなしの文化は本当に魔法のようです。東京を初めて訪れた日を今でもよく覚えています。それは“感情の旋風”とも言える経験で、目にするもの全てが、インスピレーション源になるというような感覚でした。日本の女性もまた独特の優雅さと謙虚さを併せ持っていますね。イタリアのクリエイションに理解が深く、素材やモノ作り、スタイルへの敬意を持っています。品質、洗練されたコンセプトを高く評価していただいています。
WWD:今後の課題や目標は?
シェルヴィーノ:これまで以上に着る人のニーズを見極める必要があると思います。シャツやストリートウエアなどを充実させる一方で、イブニングドレスなどは縮小していくでしょう。新型コロナはファッションを殺すことはできませんが、私たちはサステナビリティにも取り組みながら、洋服の個性を大切にしていくべきだと思っています。そして、これまで培ってきたDNAを生かしつつ、女性をさらに美しくする服をデザインし続けていきたいです。