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FBに米300社以上が広告費増加 ヘイト対応へのボイコットにもかかわらず

 フェイスブック(FACEBOOK)がヘイトスピーチや人種差別的な投稿を放置しているとして、6月に全米黒人地位向上協会/全米有色人種地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored People)などの市民団体によって「利益のためにヘイトを許すな(Stop Hate For Profit)」というボイコット・キャンペーンを立ち上げられ、米百貨店のノードストローム(NORDSTROM)やギャップ(GAP)をはじめとした多くの企業が広告の出稿を取りやめる動きが相次いだ。しかし、同時にフェイスブックに広告の出稿を増やす企業も続出している。

 今回の結果はボイコットの開始直前までの期間に基づいたものではあるが、アナリティクス企業のパスマティクス(Pathmatics)によると、フェイスブックの大型広告主の多くが7月の広告支出を増やしているという。7月は300以上の広告主が支出を20%、もしくはそれ以上増加させており、支出を大きく削減した広告主はおよそ150にとどまった。

 フェイスブックへの広告支出が増加した主要企業は以下の通り(1日当たりの平均支出額に基づいて算出)。

 AT&T150%増、スプリント(SPRINT)78%増、ギャップ158%増、J.C.ペニー(J.C.PENNY)272%増、ハースト マガジンズ(HEARST MAGAZINES)120%増、QVC 234%増、ルックスオティカ(LUXOTTICA)527%増、ウォール・ストリート・ジャーナル(THE WALL STREET JOURNAL)27%増、ポストメイツ(POSTMATES)74%増、ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)を傘下に持つL ブランズ(L BRANDS)164%増、ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)448%増、ノードストローム58%、タイム社(TIME INC.)281%増、メイシーズ(MACY’S)175%増、エコノミスト(THE ECONOMIST)79%増、アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)284%増、ロレアル(L’OREAL)40%増、アリババ(ALIBABA)89%増、イプシー(IPSY)72%増、ディズニー(DISNEY)傘下のマーベル・エンターテイメント(Marvel Entertainment)91%増、J.クルー(J.CREW)70%増、コーチ(COACH)35%増

 これらの企業による1日の広告費用は約1万ドル(約106万円)程度のものから高額なものでは約47万ドル(約4980万円)と幅広いが、ほとんどの企業では1日あたりおよそ3万ドル(約318万円)から10万ドル(約1060万円)の広告費を支出している。フェイスブックはこれらの企業から支払われる広告費をもとに、毎日数億ドルの収益を生み出している。

 ボイコット運動のリーダーによると、いまだ何百社もの企業がボイコットに参加していることを公表しており、少なくとも7月中はフェイスブックへの広告の出稿を取りやめていたという。しかしパスマティクスは、ボイコットに参加したパタゴニア(PATAGONIA)やアール・イー・アイ(REI)など主要ブランドを含む約100社の、出稿を取りやめる以前の1日の平均広告支出額は比較的少額の1万ドル程度だったことを明らかにしている。ベスト・バイ(BEST BUY)、ルルレモンアスレティカ(LULULEMON ATHLETICA)、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.)、リーボック(REEBOK)も同様で、ボイコット参加以前にフェイスブックに充てていた1日当たりの広告費用は比較的少額であった。

 フェイスブックへの広告支出が高額だった企業で、7月の出稿を取りやめた主な企業は以下の通り。

 スターバックス(STARBUCKS)、ウォルマート(WALMART)、ターゲット(TARGET)、ファイザー(PFIZER)、プロアクティブ(PROACTIVE)、コンデナスト(CONDE NAST)、フールー(HULU)、JPモルガン・チェース(J.P. MORGAN CHASE)、ネットフリックス(NETFLIX)、ユニリーバ(UNILEVER)、リンクトイン(Linkedin)、マクドナルド(McDonald’s)、デル(DELL)、CVS、コールズ(KOHL’S)、ナイキ(NIKE)、サウンドクラウド(SOUNDCLOUD)、ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)、セールスフォース(SALESFORCE)、ウルタ(ulta)、アディダス(ADIDAS)、ブルームバーグ(BLOOMBERG)

 なおブルームバーグ、ダラー ゼネラル、コンデナスト、ウルタ、ウォルマート、ネットフリックス、マクドナルド、フールー、JPモルガン・チェースに関しては、フェイスブックへの出稿の取りやめを公言していない。これらの企業が出稿を取りやめた背景には、新型コロナウイルスの影響による広告予算の削減や、一連の社会問題に対する自社の明確な立場を明かさない方針を取ったことなどが考えられる。

 一連のボイコット運動のリーダーによると、およそ1100の企業が7月のフェイスブックへの出稿を取りやめており、この動きは米国だけでなく欧州やそのほかの地域にも拡大しつつあるという。しかし広告収入を主軸とするフェイスブックの現在出稿する広告主は800万以上に上り、またインスタグラムなども傘下に収めているため、同社は今回のボイコットによる影響をさほど大きくは受けていない様子だ。7月30日に公開された同社の2020年4〜6月期(第2四半期)の広告収入は、前年同期比10%増の183億ドル(1兆9398億円)。1日あたりのアクティブユーザー数は12%増の17億9000万だった。一方でフェイスブックの広告主であった153社が7月に出稿を取りやめた影響により、7月全体の損失はおよそ1億4000万ドル(約148億円)に上り、1日あたり平均450万ドル(約4億7700万円)の損失が生まれた。しかし同社の19年の年間収益が700億ドル(1兆4200億円)だったことを考えると、年間の損失はわずか0.2%に満たないのが実際と言える。

 フェイスブックに対するボイコット運動のきっかけは、米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件に端を発した抗議運動を受けて、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がツイッター(Twitter)に投稿した内容が批判を受けたが、フェイスブックは「同ツイートはフェイスブックの規約に違反していない」として、表示されたツイートを削除するなどの対応を行わなかった。ボイコット運動のリーダーは、フェイスブック側に改善の動きが見られない場合はさらなるアクションを起こす考えだとしているが、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)=フェイスブック最高経営責任者は7月29日、「問題を重視しているが、広告主の意見に基づいてポリシーを決定するつもりはないし、それが正しい行動だとも思わない」と発言している。

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