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「グッチ」の親会社、上半期は厳しい結果に 6月以降は中国などでV字回復

 ケリング(KERING)の2020年1〜6月期決算は、売上高が前年同期比29.5%減の53億7830万ユーロ(約6669億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は同40.3%減の16億7500万ユーロ(約2077億円)、純利益は同52.9%減の2億7260万ユーロ(約338億円)と減収減益だった。

 地域別の売上高では、西欧が同29.0%減の16億7060万ユーロ(約2071億円)、北米が同32.1%減の9億5550万ユーロ(約1184億円)、日本を除くアジア太平洋地域が同25.3%減の20億4800万ユーロ(約2539億円)、日本が同37.5%減の3億9900万ユーロ(約494億円)、東欧・アフリカ・中東が同34.9%減の2億5520万ユーロ(約316億円)だった。

 ブランド別の売上高では、「グッチ(GUCCI)」が同33.8%減の30億7220万ユーロ(約3809億円)、「サンローラン(SAINT LAURENT)」が同30.0%減の6億8110万ユーロ(約844億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が同8.3%減の5億310万ユーロ(約623億円)だった。

 フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者は、「20年上半期はこれまでで最も厳しい結果となった。これは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がいかに大きく影響したかという証左だが、この危機的な状況を耐え抜いた当社のビジネスモデルの強さをも示すことができた。事態が収束した際には、さらに力強く発展できるものと確信している」と語った。

 ジャン・マルク・デュプレ(Jean-Marc Duplaix)最高財務責任者(CFO)は、「アジア太平洋地域では中国、台湾、韓国が好調だが、香港とマカオは業績が低迷したままだ。アジア市場の数カ国、またヨーロッパの主要国は中国人観光客がいないことでかなり苦戦している」と述べた。

 ジャン・フランソワ・パル(Jean-Francois Palus)=マネジング・ディレクターは、「小売業界は激動の最中にあるが、当社がサステナビリティや多様性の推進に尽力していることはプラスに働くと思う。今後もラグジュアリー市場がなくなることはないし、ミレニアル世代やZ世代のラグジュアリー製品に対する購買意欲も落ちていない。実のところ、ロックダウン(都市封鎖)が解除されて店舗の営業を再開したときに、真っ先に買い物に来たのはそうした若年層だった」と述べた。

 ケリングは、「今後数カ月間における個人向けのラグジュアリー市場に関する見通しが立たないため、下半期の業績について信頼性のある予測をすることはできないが、上半期での売り上げ減少を補うことはできないだろう。しかし上半期に導入したコスト削減策などの効果が下半期に表れると思われる」と分析した。なお、店舗の営業再開とともに業績は順調に回復しており、20年4〜6月期(第2四半期)における中国本土での売り上げはそれ以前と比べて40%以上の伸びを見せているほか、6月中旬からは欧米でも好調だという。またECも72.4%増と急激に売り上げを伸ばした。

 同社の稼ぎ頭である「グッチ」は、20年4〜6月期における既存店ベースでの売上高が同44.7%減となり、20年1〜3月期の同23.2%減からさらに減少した。またコロナ禍の影響に加えて販売網を整理していることから、卸の売り上げも減少した。しかし店舗が営業を再開してからは主要な市場で業績を伸ばしているという。またECが非常に好調で、上半期はそれ以前と比べて51.8%の売り上げ増となっている。

 「サンローラン」は20年4〜6月期における既存店ベースでの売上高がやはり同48.4%減と大幅に減少したが、これは西欧と北米への依存度が高いためだという。「ボッテガ・ヴェネタ」も同24.4%減となったが、中国本土と韓国で店舗が営業を再開してからは売り上げがV字回復していることから、減少の度合いが抑えられた。

 デュプレCFOは、「当社の傘下ブランドが危機的な状況の中でも耐え抜き、強い回復力を見せていることをうれしく思うが、下半期の動きについては慎重に注視していきたい。多くの不確定要素がある中ではっきりしているのは、20年は観光客による売り上げは望めず、少なくとも21年の上半期まではその状態が続くということだ」と述べた。

 同氏は一方で、「ECが今後も成長していくことは間違いないと考えている」と話した。ケリングの小売り分野の売上高においてECが占める割合は、19年上半期は6%程度だったが、20年上半期では13%となっている。同氏は、「もともとECが販売チャネルとして確立している北米で記録的な売り上げとなったことに加えて、アジア太平洋地域では前年比でおよそ2倍の浸透率となり、さらなる伸びが期待される。6月は各国の店舗が次第に営業を再開していたにもかかわらず、全地域のECが2倍前後の伸びを見せるなど力強い勢いが感じられた」と説明した。

 ケリングではAI(人工知能)の導入を進めており、サプライチェーンにおける需給予測から顧客への“お薦め商品”の選択まで、さまざまな場面で活用している。パル=マネジング・ディレクターは、「以前から取り組んできたため、当社はこの分野において業界内でも優位にある上に、現在のように過酷な状況下でそれをさらに発展させることができてうれしく思う。事態の収束後は速やかに成長軌道に戻り、いっそう利益性の高い企業として発展できるだろう」と話した。また同氏は、ケリングが「ブリオーニ(BRIONI)」など業績が低迷しているブランドを手放すのではないかとの臆測を否定。「事態が収束して小売り環境が落ち着けば、堅調に業績を伸ばしていくと確信している」と述べた。

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