黒パンツは“地味で無個性”だと思い込んでいませんか。確かに出番やシーズンを選ばないオールマイティーなボトムスです。でも、実は着こなしマスター(達人)たちのお気に入りアイテム。なぜなら自分好みのトップスに合わせやすいから。要するに、黒パンツならではの“きちんと感”を頼りに、残りのピースで遊べるわけです。ファッショニスタの“やりたい放題”系アレンジは黒パンツの着回しバリエーションも増やしてくれます。
スタイリングの軸は“上半身でプレイフルに”。たとえば、コペンハーゲン在住のファッションエディター、ジャネット・フリス・マドセン(Jeanette Friis Madsen)は、黒のワイドパンツに淡いイエローのスリット入りロングプルオーバーを重ねました。ほとんどワンピースに見えるドラマチックなトップスを、黒パンツがしっかり目立たせています。ロング丈のチュニックやベスト(ジレ)などと合わせても、似たような効果を期待できます。思い思いのアイデアを生かしたファッショニスタたちの着こなし技は、“黒パンツ=コンサバ、平凡”といった思い込みを、素敵に裏切ってくれます。
パフスリーブ、シアー素材のトレンドを印象づける
プレーンな仕立ての黒パンツは、アイキャッチーなトップスを引き立て役に使って。ストリートファッションに強い人気スタイリストのエミリー・シンドレフ(Emili Sindlev)は、ロマンチックなパフスリーブのトップスでお出かけ。ボトムスはシンプルな黒パンツをチョイスして、パフの量感を際立たせました。あえてスニーカーで“はずす”のが足元コーデのコツ。甘いトップス、無個性パンツ、軽快スニーカーの3点セットでこなれミックスのでき上がりです。
センタープレス(クリース)を利かせたスラックスは、メンズの代名詞的なボトムス。真逆のシアー素材を組み合わせれば、絶好のノイズ入りミックスに仕上がります。パリ在住のインフルエンサー、クセニア・アドンツ(Xenia Adonts)は、げた風サンダルを合わせて究極のイメージずらしを企てました。“きちんと×のどか”のアンバランスに、透けるトップスを添えて、今年らしいトレンドコーデに。オレンジのバケットハットも加えて、ヒッピー感も上乗せしています。
腹見せ・素肌見せを、シックに大人っぽく落ち着かせる
素肌の露出に抵抗を感じる人も、オールブラックの装いであれば全体がシックに見えるから試しやすくなります。着こなしのコツはワンポイントだけ白を添えるところ。上海ファッション・ウイークに来場したファッショニスタは、黒のブラトップを主役に据えた大胆なコーデを披露。黒トップスを正面で結んで、隙間から広めに肌見せ。過剰に見えないのは、マニッシュなイージーパンツで合わせたから。パンツ裾はロールアップして白スニーカーを目立たせ、肌見せのイメージを和らげました。
ブルゾンの丸みを生かして、シルエットのめりはりアップ
細身の黒パンツはシャープな脚線イメージを引き出してくれます。そのスリミング効果を際立たせる“格好のパートナー”がブルゾン。ややフォルムに丸みを帯びたふっくらタイプは、腰から下をいっそうスレンダーに演出します。ファッションディレクターのアーニャ・ジローヴァ(Anya Ziourova)は、ツータックのメンズライクな黒パンツでりりしい装い。黒革のボマージャケットを重ねて量感のめりはりを強調し、キャップとブーツがクールな雰囲気を加えています。
メンズ風味を帯びたブルゾンと、やはりマニッシュな黒パンツのコンビネーションでは、残りのアイテムでフェミニン感を足すと、全体のバランスが整えやすくなります。キーアイテムは靴。「マリーン セル(MARINE SERRE)」のファッションショーに来場したファッショニスタは、ミリタリー風のブルゾンと黒パンツをマッチング。ショートヘアの印象も手伝って全体に男性的なコーデですが、足元のストラップヒールサンダルが女性らしさを宣言。素肌の露出が多いヌーディー靴で黒パンツの重さをクールダウンして。
無難な選択だと思われがちな黒パンツですが、上級者たちの手にかかれば、むしろ残りのピースで遊ぶ余地の大きいボトムスです。黒パンツを格好のバイプレーヤー(脇役)にして、スリリングなコーデを試しています。黒パンツを相棒に自分好みのミックスコーデに磨きをかけてみませんか。