アシックスの2020年1〜6月期連結決算は、売上高が前期比21.5%減の1468億円、本業のもうけを示す営業利益は38億円の赤字(前年同期は85億円の黒字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大による直営店の臨時休業やインバウンド低迷により大幅な減収、赤字に転落した。一方で、EC売上高は同103.3%増の233億円と大きく伸長した。
カテゴリー別では、主要カテゴリーであるランニングシューズの売上高が同15.1%減の709億円だった。ただし、多くの直営店が営業再開した6月は北米と中華圏がけん引し、単月では前年を上回った。また広告費の削減やデジタルコミュニケーション促進による旅費の縮小など販管費をコントロールしたことで営業利益率も0.1ポイント改善した。今後は、SNSやランニングアプリなどを活用しデジタルでの顧客接点を拡大するほか、8月発売の新作“ダイナブラスト(DYNABLUST)”で新客の取り込みを目指す。またランニング専門店との関係強化を継続し、シェア拡大に向けた取り組みを加速させる。
地域別の売上高は、日本が同24.0%減の470億円、現地通貨ベースで北米が同25.7%減の284億円、欧州が同17.4%減の370億円と大きく減収した一方、中華圏は同3.8%増の185億円、オセアニアが同9.6%増の85億円と伸長した。廣田康人社長COO(最高執行責任者)は「(日本市場の)インバウンド低迷による影響は大きく、短期での戻りは考えられない。好調な中国と東南アジアでしっかりと売り上げを立てていく」と語る。
通期は売上高3000億円(前期比20.6%減)、営業利益140億円の赤字(前期は100億円の黒字)、経常利益170億円の赤字(同101億円の黒字)、純利益220億円の赤字(同70億円の黒字)と予想する。今後は好調なECの勢いを生かし、ライブ配信を活用したEC戦略やデジタルと連動した店舗運営で売上高を拡大させる。廣田社長は「地域によってデジタル戦略にばらつきがある。5Gの普及でライブコマースがやりやすくなった中国がトップで、欧米がそこに追いつきつつある。日本はまだこれから」と話す。加えて「ECがこれだけ伸びると、リアル店舗もショーケースのような役割に変わっていくだろう。現時点で店舗再編は考えていないが、『オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)』が好調な上海や北京、バンコクにアシックスの世界観を感じてもらえる旗艦店を出店し、日本でのインバウンド需要が見込めない分を現地で取り返したい」と説明した。また、生産拠点を集約して効率化を図るほか、販管費のコントロールも継続して営業利益のさらなる改善も目指す。
公式スポンサーを務める東京オリンピック・パラリンピックについては「あくまで2021年に延長されただけ。すでに投資した予算もあるが、来年には大会が開催されるつもりで準備しており、回収できると考えている」と話した。