ファッション

企業活動の透明性評価3点 「ロンシャン」CEOが語った、絆を軸に据えたサステナビリティ施策

 いま企業にとって“透明性”がビジネスの要になっている。ファッション産業において透明性とは、「サプライチェーン、ビジネスの手法、それらが労働者・コミュニティー・環境に与える影響について、広く一般に情報公開していること。そしてそのデータは包括的で信頼性が高く、他企業と比較できるものであること」だ。これは英国のNPO団体ファッションレボリューション(Fashion Revolution)による定義だが、彼らはまた、ファッション企業が透明性をどのように追求すべきか、その指針を示している。ファッションレボリューションは、2013年に1000人超の死者を出したファッション史上最悪の事故、バングラデシュのダッカで起きたラナ・プラザ崩落事故をきっかけに発足。透明性に重きを置いたビジネスの重要性を訴えて続けている。17年からは「ファッション トランスペアレンシー インデックス(Fashion Transparency Index 以下、FTI)」を毎年発表し、220の指標をもとにファッションブランドが情報を開示しているかを調査し、スコア化している。

 同インデックスで、“透明性3%”の評価を下されたのが、日本でも根強い人気の“ル プリアージュ”シリーズのバッグでおなじみの「ロンシャン(LONGCHAMP)」だ。ジャン・キャスグラン(Jean Cassegrain)最高経営責任者(CEO)に今回の結果についての反論を求めたところ、同社が押し進めるサステナビリティ施策について語った。

WWD:ファッションレボリューションの「FTI」ではスコアが3%だった。透明性についてどのように考えているか。

ジャン・キャスグランCEO(以下、キャスグランCEO):70年以上におよぶ家族経営の中で、透明性を追求するために私たちが最初に取り組んだのが、サプライチェーンとの関係構築だ。「ロンシャン」は他のブランドと違い、小売業だけでなく製造業も営むメゾンだ。フランスやチュニジア、モーリシャスに8つのアトリエと1000人以上の職人を抱え、外部のアトリエとは50年以上、サプライヤーとも30年以上にわたり提携している。私は父が昔一緒に働いていた職人の子どもたちと仕事をしており、この何世代にもわたる家族のような絆が“メイド・バイ・ロンシャン”の品質を維持しているといえるだろう。

また、透明性を含む社会的責任に応えられる組織づくりを推進するため、商品開発部門と密に関わる「エンバイロンメンタル・コミッティー」を立ち上げた。担当者は品質管理部門も統括しており、生産で直面する環境問題を解決しながら、品質を最大限維持する道を探る業務にあたっている。

WWD:「エンバイロンメンタル・コミッティー」の具体的な活動例は?

キャスグランCEO:サプライチェーンや環境に関する方針「コード・オブ・グッド・プラクティス」を2019年に公式オンラインストア上で公開した。内容は、サプライチェーンの透明性をはじめ、レザーの仕入れ管理、廃棄物ならびにエネルギー消費の削減などだ。

また、「エンバイロンメンタル・コミッティー」は、日本では今年4月にローンチしたパーソナライゼーションサービス、“マイ プリアージュ シグネチャー”ラインの立ち上げにも携わっている。商品開発部門・品質管理部門と連携して、環境に配慮した再生ポリエステル繊維を100%使用したリサイクルボンディングキャンバスを素材に採用。さらに、提携しているなめし革工場も下水処理システムを見直し、排出する水が汚染されないよう作業工程の見直しを行った。

WWD:その他、サステナビリティに対してどのような取り組みをしているのか。

キャスグランCEO:私たちは、長く使い続けることができる耐久性に優れた製品を生み出すことを常に目指している。フランスのメーヌ・エ・ロワール県スグレにあるアトリエの修理サービス部門では、毎年4万点以上の製品を修理しており、購入してくれた顧客と、その次の世代にも愛されるもの作りを続けている。また、ブランドのサヴォアフェール(メゾン伝統の技術)を継承するため、スグレに職人を育成する学校も設立した。代々受け継がれてきた匠の技を持つ職人を育てることが、“メイド・バイ・ロンシャン”の品質と、そこにつながるサステナビリティを生み出す原動力となると信じている。

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