ナイキ(NIKE)は、工場や消費者の廃棄物から作った実験的プロダクト“スペース ヒッピー”の第一弾を6月11日に、第二弾を7月16日に発売したところ、あっという間に完売になり話題となった。これはナイキが取り組む廃棄物の再利用と二酸化炭素排出量の削減を実現したプロダクトでもある。
ナイキは1990年代から企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開も始め、05年にはサプライチェーンを公開した。多くの企業がこれから取り組むべきことを先んじて行っている。
「サーキュラリティー(循環性)はデザインから生まれる」と話す、“スペース ヒッピー”の開発担当者ノア・マーフィー・ラインヘルツ(Noah Murphy-Reinhertz)=イノベーション サステナビリティ デザイン リードに、ナイキが取り組むサステナビリティについて話を聞いた。8月17日号に収めきれなかったインタビュー全文を紹介する。
WWD:“サーキュラリティー(循環性)”はファッション&スポーツ業界で重要なキーワードになっている。「ナイキ」では、廃棄物を無駄にしない取り組みやリサイクル素材の利用などの取り組みがある。工場での廃棄物の再利用が進んでいると思うが、現在どの程度リサイクルできているか?
ノア・マーフィー・ラインヘルツ=イノベーション サステナビリティ デザイン リード(以下、ラインヘルツ):私たちはプロダクトを作るときに、それがまた使われ、愛用されたり、作り直されたり、あるいは全く新しいものに生まれ変わることを考えている。「ナイキ」が取り組んでいるのは、サーキュラリティーが一つのモデルや一つのブランドとしてのみ存在するというパラダイムからの脱皮だ。古いTシャツなど、ゴミとして捨てられるはずのものを機能性に優れた糸に変身させたり、「ナイキ」の製品の一部であったゴムやフォームのスクラップを素晴らしいミッドソールに変えたり――このような廃棄物は豊富にあり、誰もが使えるものでもある。
“スペース ヒッピー”は、廃棄物処理の流れを変える優れた一例だ。生産工程においては、廃棄物を埋め立てるのではなく、そもそも廃棄物を減少させると同時に、リサイクル率も高めている。これらの取り組みで2019年第4四半期にはフットウエアの最終製品の生産工程で発生した廃棄物の99.9%がリサイクルされたか、あるいはエネルギーとして転用されている。
私たちはまた、1990年から「リユース ア シューズ」や「ナイキ グラインド」などのリサイクルプログラムを実施している。これまでに3300万足以上のシューズをリサイクルし、新しい製品作りに生かしたり、あるいは1億ポンド(約4万5360t)のグラインド素材として、10億平方フィート(約9300万平方メートル)のスポーツ場や遊び場の路面材に活用している。さらに、製品にもよりサステナブルな素材を活用している。2010年以来、75億本以上のプラスチックボトルを再生ポリエステルの材料として活用している。19年度だけでも10億本以上使用した。
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