ファッション

パーソナライズD2Cを強みにビジネスを拡大 「メデュラ」や「ホタル」のスパーティーが見据える未来

 “色気のある時代を創ろう”をビジョンに掲げ、2018年5月にD2Cパーソナライズヘアケア「メデュラ(MEDULLA)」をスタートさせたスパーティー(SPARTY)。19年12月に丸井グループ、Xテックベンチャーズ、アカツキ、ジンズホールディングスから約6億円の資金調達を実施。3月1日には有楽町マルイ1階に「メデュラ」の常設店舗をオープンし、5月にはパーソナライズスキンケア「ホタル パーソナライズド(HOTARU PERSONALIZED)」(以下、「ホタル」)をスタートした。さらに7月からはD2Cパーソナライズを支援する新たなサービスの提供も開始するなど、加速度的に成長を続けている。今回、あらためて深山陽介代表に話を聞いた。

WWD:昨年12月から有楽町マルイで期間限定で運営していた店舗を今年の3月から常設にした。リアル店舗を運営してみた実感は?

深山陽介代表(以下、深山):常設にした3月から新型コロナの感染が拡大し、ちょうど店舗スタッフの教育や運営も安定してきたところでマルイ自体が休館になってしまい、それから約2カ月間休館していました。そのため店舗運営に関しては、まだ改善していく必要がありますし、できていない施策も多い。そんな中で、館が営業を再開した6月は実際に来店するお客さまは減ったのですが、来店していただいた方の購入率が上がっています。ウェブで「メデュラ」のことを知って気になっていて、リアルで見ることで、安心感を持って買っていただくという行動が増えてきています。予想以上にリアルな体験が重要だと肌身で感じていて、今後はさらにリアル店舗ならではの体験を強化していきたいと考えています。

WWD:来店する人は「メデュラ」のことを知っている人が多い?

深山:そうですね。ブランドを認知していて、購入する目的で来店するお客さまが多いですが、一方で「このブランド見たことある」と立ち寄るお客さまもいます。またギフト用に購入される方もいらっしゃいます。

WWD:「メデュラ」はパーソナライズを打ち出す一方で、伊藤千晃さんやテリさん、ディズニーといったコラボアイテムも製作している。その意図は?

深山:ファンの心理として、「その人が選んだ処方と同じものを使いたい」というニーズはあるので、そのファンの人たちに買っていただけるように作っている。今後もコラボ製品は続けていく予定で、マイクロインフルエンサーなどでもできないかと考えています。

WWD:コロナ禍でECでの売り上げが全体的に上がっている。「メデュラ」の売り上げも伸びた?

深山:ECは予想以上に伸び、現在「メデュラ」だけで月商3億円ほどになりました。

WWD:1月のときは月商2億円ほどと言っていたので、かなり伸びている。実際、どんなウェブ施策を行った?

深山:特に一般向けに何かをしたという訳ではなく、新しいクリエイティブを試したくらいです。一方で美容室向けの施策で、初期費用無料、初回マージンの先払い、特別価格での提供などを行いました。3月末くらいから美容室、美容師から「厳しい」という声が聞こえてきて、何かサポートできないと思いこの施策を行いました。これはすごく反響があり、美容室、美容師からの取り扱いが増えました。

WWD:少し話は戻るが、昨年12月には丸井グループなどから約6億円の資金調達を行った。主に5月からスタートした「ホタル」に投資する?

深山:そうですね。丸井グループからは店舗運営に関して出向もしていただいていて、株主というよりはパートナーに近いです。

WWD:最近はコロナ禍で資金調達しにくいという話もあるが?

深山:既存株主に聞くと、資金調達の環境自体は全然悪くない。インバウンド関連など、コロナの影響を受けるところは厳しいと思いますが、そうじゃないところは、資金調達はしやすくなっているのでは。

D2Cパーソナライズスキンケアの可能性

WWD:5月にはD2Cパーソナライズスキンケア「ホタル」をスタートさせた。いつごろから構想していた?

深山:「メデュラ」をローンチしたときにはもう考えていました。ただ実際に動き出したのは19年4月くらいからです。

WWD:パーソナライズの仕組みを作るのは大変だった?

深山:「メデュラ」と同じチームでやっているので、パーソナライズのノウハウは持っていました。処方開発もデザイナーもすべて全く同じなので、意思疎通も取れていたこともあり、短時間でできました。ランアップも「ローション」と「モイスチャライザー」というのは早い段階で構想にありました。

WWD:カメラで肌分析する技術はどうしている?

深山:バーチャルメイクアプリ「ユーカムメイク(YOUCAM MAKEUP)」を展開するパーフェクトに依頼しています。もともと自社で開発しようと考えていたのですが、やはり費用も時間もかかってしまう。“パーソナライズ”自体は今後もどんどん出てくると思うので、最終的には性能だけでなく、精度も含めた体験設計全体でお客さまに選ばれると思っています。だからカメラの肌分析の精度はひとつのファクターでしかなく、中期的に見るとそこだけで優位性をつくれない。それならよりいい体験を提供することの方が大切だと考え、パーフェクトに依頼しました。

WWD:ローンチしてみて、ユーザーの反応は?

深山:反応は非常にいいですね。売り上げ的には計画以上で推移しています。驚きだったのは、僕たちが思っている以上に「メデュラ」ユーザーが「ホタル」も購入してくださっている。「自分に合ったものを選べない」というのは、ヘアケアもスキンケアも同じ課題があったんだなと実感しました。また、コロナの影響もあって、店頭での診断は気が進まないという人が「家で気軽に診断できて、自分に合ったものを提供してくれる」というので購入されているようです。今後は「メデュラ」と同じように、フィードバックをもらって改善していき、処方数も増やしていければと考えています。

WWD:注文のたびに処方も変えられるのがいい。

深山:季節的なこともあったりするので、そのときのお客さまに合ったものを提供できるようにと考えています。現状だと20代後半から30代がメイン。40〜50代の購入も比較的多いです。

WWD:店頭での展開は?

深山:これから店舗展開は考えていこうと思っています。ただコロナの影響がいつまで続くのか見えないので、どのタイミングで店舗をやっていくのかは悩んでいます。今後は「メデュラ」「ホタル」の上段の概念として“made to order store”というものを考えています。コンセプトとして“いいものより、合うものを”で、ここに行くと自分に合ったさまざまなパーソナライズ製品を提案してくれる、そんなお店も考えています。

WWD:7月にはパーソナライズD2Cを支援するサービスも始めた。その狙いは?

深山:パーソナライズをもっと広めていきたいと考えていて、他社と提携した方がさまざまなことができるからです。カートサービスを提供している企業と組んで、パーソナライズD2Cブランドに必要な全てのソリューションを提供していきます。

WWD:そうすると競合が増えるのでは?

深山:全く同じコンセプトのところへのサービスの提供は難しいですが、僕らとしては簡単に自分に合ったものを提供できる、そういう世界をつくっていきたい。スタートアップだけでなく、大手の企業でもお互いにいいと思えばやっていこうと思っています。さらに美容だけでなく、いろいろなカテゴリーでの協業を考えています。

WWD:D2Cブランドも今後さらに増えていきそう。

深山:スタートアップだけではなく大手企業も含めて、D2Cブランドは今後も増えていくと思います。特にコロナ禍でEC化率が上がっていることもあり、今後はさらにECで売ることが当たり前になります。とはいえECだけでは限界があるので、ECとリアルの融合を考えていかないといけない。それをビジネス的に成功させているところはまだ少ないので、その成功例や正解をどうつくっていくのかが、D2Cの先のテーマになっていくと思います。

僕らとしてはD2Cではあるが、それよりもパーソナライズに魅力があると思っています。パーソナライズのメリットは、データが全部とれるところですが、販路や価格、利益率のコントロールができるのも強み。僕らはそのパーソナライズの強みや仕組み的な面白さをもっと世の中に広めていきたいと思っています。

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