ドイツ・ベルリンでプライベートコレクションのギャラリーを運営する非営利団体のボロス・ファウンデーション(Boros Foundation)は9月9日から12月末まで、同じくベルリンにある世界的に有名なナイトクラブのベルクハイン(BERGHAIN)でアート展「ストゥディオ ベルリン(STUDIO BERLIN)」を開催する。かつて発電所だったベルクハインの広さは3500平方メートル以上。その巨大な空間に、写真や彫刻、絵画から、音楽や映像、インスタレーションまで、ベルリンを拠点にするコンテンポラリーアーティスト80組以上がロックダウン中に制作した作品を展示する。その中には、ドイツ人写真家のヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)やアーティストのイザ・ゲンツケン (Isa Genzken)、デンマーク出身のオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)、イギリス出身のタシタ・ディーン(Tacita Dean)といった著名アーティストの作品も含まれる。
開催の背景にあるのは、新型コロナウイルスによる影響だ。多くのアーティストは予定されていた展覧会やアートフェアの中止や延期により、経済的にも大きな打撃を受けた。一方、ベルクハインをはじめとするナイトクラブも3月から長期にわたって一時閉鎖を余儀なくされてきた。現在は屋外スペースをビアガーデンとして営業したりしているクラブはあるものの、“ダンス禁止”のルールがあり、街を象徴するクラブシーンやナイトライフが完全に復活するまでにはまだ時間がかかりそうだ。そのため同展は、アーティストの視点を通してアートと社会の現状と変化を映し出すとともに、彼らに作品発表のプラットフォームを提供することを目的としているという。
ボロス・ファウンデーションが2008年にオープンしたギャラリーのボロス・コレクション(Boros Collection)はもともと予約制で、ガイドと一緒に最大12人のグループで館内を回りながら鑑賞するシステムを導入している。今回の展覧会では同様のシステムを取り入れつつ、来場者が自由に作品を見られる日も設けるという。また、ベルクハインは入場待ちに長蛇の列ができ、入り口では“バウンサー”と呼ばれるスタッフの独断で入れるかどうかがを決められることでも有名だが、今回は公式ウェブサイトでチケットを購入すれば誰でも入場可能。ただし、対象は16歳以上のみ。クラブとしての営業時同様、写真やビデオの撮影は一切禁止だ。