繊維商社の豊島による「レルディ(RELDI)」は2019年春にスタートしたワンピースブランドだ。“現代を強く生きる女性が、有意義な時間を手に入れることができるワンピース”をコンセプトに、1着でサマになり、何通りにも着こなしが楽しめるデザインを生み出している。ECを中心に販売し、「受け取ったときに気分が上がるものを」というデザイナーの山本雄矢の思いを込めて、ピザ箱をイメージしたパッケージで商品を届けているのも特徴だ。
そのパッケージの絵を担当したのが、絵描きとして活動するリー・イズミダ(Lee Izumida)だ。アメリカで絵を学び、東京でビームスの「ピルグリム サーフ+サプライ(PILGRIM SURF+SUPPLY)」で販売員を経験し、昨年絵描きとしてのキャリアをスタート。デビューして間もないが、すでにルミネやパルコの広告をはじめ、「ピルグリム サーフ+サプライ」のビジュアルや、店舗のウインドーペイントなども手掛けている。
ピザ箱風のパッケージでのコラボレーションを経て、「レルディ」は20-21年秋冬コレクションで再びリー・イズミダとコラボレーションを行った。イズミダによる手描きの花柄をのせた7型のアイテムを8月末〜10月末に順次発売していく。コラボを行ったデザイナーの山本とイズミダに、出会いやコラボの経緯について聞いた。
WWD:2人の出会いは?
山本雄矢「レルディ」デザイナー(以下、山本):東京・池尻にあるカフェでイズミダさんの絵が飾られているのを見て、「すてきだな」と思ったのがきっかけでした。
リー・イズミダ(以下、イズミダ):私はウェブで「レルディ」を知って、ワンピースを買って着ていたんです。もともと勤めていた「ピルグリム サーフ+サプライ」を辞めた後にいろんなテイストの服に挑戦したいと思い、購入したアイテムの一つだったんです。
山本:現在ブランドの店舗がなく、販路は99%が自社のオンラインストア。お客さまとのコミュニケーションツールとして、何かできないかなと考えたときに、発送用のパッケージをイズミダさんに依頼しました。デリバリーのピザ箱の形にして、届いたときに気分が上がるものにしたかったんです。それに僕、ピザ好きなんで(笑)。
イズミダ:私もピザ好き(笑)。やっぱりこのピザの箱は届いたときにテンションが上がります。箱が捨てられなくて重ねて飾っているんです。
山本:お客さまからもとてもいい反応をいただいています。イズミダさんのファンの方にもこのパッケージのコラボをきっかけでブランドを知っていただいて、アート作品を一つ手に入れる感覚で購入してくださっていますね。
ペルーの鮮やかな色彩を
秋冬に開花する花で表現
WWD:今回は洋服でのコラボレーションだが、どのように取り組んだのか?
山本:今季は ペルーをシーズンコンセプトにしています。世界遺産の遺跡であるマチュピチュがありながらも、“レインボーマウンテン”といわれる虹色の山、ビニクンカ山が“インスタ映え”スポットとしても人気だったり、歴史的なものと新しい流行を受け入れる文化が素晴らしいなと思ったんです。そのペルーの鮮やかな色彩をコレクションで表現しようと思ったときに、イズミダさんのアートと親和性が高いと思ってお誘いしたんです。モチーフは商品展開の時季(秋冬)に開花するマグノリア、クリスマスローズ、アネモネ、エリカを選びました。
イズミダ:私は「どんな洋服になるんだろう?」と考えながら、楽しんで描きました。アネモネ、エリカはこれまで描いたことがなかったので新鮮でしたし、チェックは寝起き一発で仕上げたんです。あんまり頭がちゃんと働いていないときに描いた方がいいものができる気がして(笑)。
WWD:イズミダさんの絵は花の印象が強いが、得意なモチーフなのか?
イズミダ:皆さんにはそのように思われていることが多いんですが、実は去年から描き始めたばかりなんです。飽きるまでずっと同じものを描き続けるタイプで、去年は花、カットフルーツを描いて、今年は魚とか昆虫を描いています。だから花は私にとっては新入りで(笑)。今回もそうなのですが、花を描くときはちゃんと生態を調べてます。色の種類、咲く時期だとか覚えちゃったり。散歩中に花を見たら写真を撮っておきます。昆虫とかも図鑑でじっくりながめるのも好きなんです。
WWD:コレクションに合わせてマスクも制作した。
山本:フラワーショップに寄付をしたいと思い作りました。南青山のロジ プランツ&フラワーズさん、代々木上原の終日フラワーさん、松陰神社前のドゥフトさんの3店舗にお届けして、店員さんにつけていただいたり、お店のノベルティとして配ってもらったりと使っていただく予定です。お花は今回のコレクションと連動していますし、僕も実は大好きなので。
イズミダ:偶然ですが、実はドゥフトのお店の方とは友人で、ロジ プランツ&フラワーズさんではクリスマスウインドーのペイントを担当したことがあるんですよ。
「レルディ」は販路拡大、
イズミダは絵を描き続けることを目標に
WWD:コロナ禍で何か変わったことは?
山本:緊急事態宣言が出たときには、時間がたっぷりあったのでインプットとアウトプットを繰り返せたと思います。特に写真家のスティーブン・ショア(Stephen Shore)の作品が気になって、写真集を買いあさったのですごく影響を受けそうです。
イズミダ:私はカッコつけるのをやめました。絵は年齢も性別も関係なく多くの人が楽しめるもので、もっと親しみやすく作品を楽しんでもらいたいといろいろ企画しました。インスタライブもカッコつけずに、とにかくやってみようという思いで、絵を描いているところを配信したり、作品のポスターを販売してみたりと挑戦して。昆虫を描き始めたのも子どもたちに喜んでもらえるかな?と思ったのがきっかけでした。
WWD:イズミダさんの肩書が“絵描き”なのはなぜ?
イズミダ:致命的なんですけど、パソコンが使えなくてイラストレーターにはなれないんです……。しかも、自分の色しか出せない。画家というのはちょっと偉大なイメージがあるし、ペインターと名乗ることもあるんですけど、“絵描き”が一番しっくりきています。
WWD:2人の今後の目標は?
山本:「レルディ」の販路の拡大です。現状ではリアルで試着できる場所がなく、問い合わせを多くいただいて、ウェブで購入してくださる方の不安を解消できたらと思っています。本当はこの秋冬シーズンからバイヤー向けの展示会を開きたいと思っていたんですが、コロナの影響でアプローチができませんでした。ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS)やレイビームス(RAY BEAMS)などのようなセレクトショップに扱ってもらうことが目標です。
イズミダ:もし店舗で扱われたら、私がウインドーに絵を描きに行きますよ!販売員だったんで店にも立って販売も手伝えます(笑)。私は個展がなかなかできない状況ですが、また気になった人に気軽に来ていただけるような個展を開きたいと思っています。子ども向けのワークショップもやってみたくて、傘に絵を描くような企画も考えていたんです。あとは絵本の挿絵やワインボトルのラベルも描いてみたい。ずっと思っていることなんですが、おばあちゃんになるまで絵を描き続けたいんです。