サザビーリーグが2018年4月に立ち上げたD2Cジュエリーブランド「アルティ―ダ ウード(ARTIDA OUD)」が、継続的に売り上げを伸ばしている。EC中心で販売をしながら百貨店などでポップアップショップを開いてきたが、8月7日に東京・渋谷区松濤に多目的スペース、ジ アナザー ミュージアム(以下、ミュージアム)をオープンした。
設立当時から、色石を使用したモード感溢れるジュエリーと手に取りやすい価格設定、パッケージ選びの楽しさやオリジナルのフレグランスで受け取る側の五感を刺激する演出など、独自のアプローチに注目されてきた。今でこそD2Cブランドがちまたに溢れているが、当時はジュエリーをECで売るというのはチャレンジだった。しかし同ブランドは、試着アプリやカスタマイズ機能を導入して、EC上でのショッピングの楽しさを消費者に提供してきた。手頃で魅力的な商品、消費者を楽しませるための考え抜かれた仕組みや工夫、効率的で新しいビジネスモデルに感心したものだ。
ミュージアムの内覧会でブランドの立役者に会うことができた。ここでは、その人安部真理子サザビーリーグ 営業統括 ECブランド事業部 ディレクター&デザイナーに聞いたブランド設立の背景やビジネスモデルを紹介する。
WWD:18年のブランド設立以降の売上高の伸び率は?
安部真理子「アルティ―ダ ウード」ディレクター&デザイナー(以下、安部):昨年は初年度の売上高の1.8倍以上を売り上げた。ブランドを立ち上げて2年4カ月が経過したが、ほぼ同じペースで売り上げが伸びている。
WWD:継続して売り上げが伸びている理由は?
安部:EC中心の販売だったので、インスタグラムなどSNSでの発信に力を入れたのが認知度アップにつながった。ブランドの根底にある、手に届きやすいファインジュエリーを提供することで生産者と消費者の両方をハッピーにするという哲学に共感してくれる消費者が増えている。また、見た目と価格のギャップが好調の理由でもある。
WWD:ブランドを立ち上げた当時はまだD2Cブランドは少なく、特にジュエリーをECで買うというのは当時新しかったが?
安部:当時はまだショールーミングが中心だった。約3年前からアメリカのウェブサイトをリサーチし始めて、D2Cというビジネスモデルに出合った。中間マージンを排除することで高品質で低価格の商品を提供することができる。昨年9月に「アイ アム ドネーション」プロジェクトを立ち上げ、売上金の一部をインドに学校を建てるためのプロジェクトや国境なき医師団による「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」などに寄付しており、それがインスタグラムなどのコメントを通して広がり共感を得ている。
WWD:EC販売で重要なことは?
安部:顧客を楽しませることが大切。また、顧客とのコミュニケーションで最大限の驚きや喜びを与えられるように工夫している。喜んでもらえるノベルティーの用意も効果的だ。
WWD:ターゲットは?
安部:年齢を問わず、インポートジュエリーを買い慣れている人が多い。ブランドのコンセプトの“ありのままの姿が放つきらめき(RAW SCENTS OF GLIMMER)”にあるように石そのものの美しさを生かしたジュエリーが多いので、石が好きな人にも支持されている。
WWD:売れ筋商材とその価格帯は?
安部:一点もののリングが好調だ。色石と10金を使用したもので3万円台、18金だと4万円台が中心。毎月2回発売しているが、完売するものもある。最近ではピアスの人気も高まっており、中心価格帯は2万円台。ヒエログリフやイニシャル、ラテン語の定型文のメッセージを刻印できるカスタマイズシリーズも好評だ。これらで使用する素材はリサイクルした地金を使用している
WWD:フレグランスの販売もしているが?
安部:当初はジュエリーを届ける際の香りだったが、販売したところ好調だった。今は4種類の香りがあり、顧客に好評でSNSで広がっている。完全にオーガニックで、生産はサステナビリティにこだわるイタリアの工場で行っている。このような状況なのでハンドジェルも製作した。
WWD:多目的スペースのミュージアムをオープンしたのは?
安部:非日常空間で、アポイントメント制でゆっくりジュエリーを選んでもらうと同時に、ネイルや占いなども提供するなど特別な体験の場にしたいと思った。ミュージアムでは新作と店舗限定品だけ販売し、ECとのすみ分けを図っている。
WWD:今後どのようにブランドを発展させていきたいか?
安部:エシカルでサステナブルなジュエリーブランドとして選んでもらえるようになりたい。パッケージもリニューアルして、フランス人のアーティストが手掛けたジュエリーポーチにしたが、パッケージなしを選ぶとポイントが付くような仕組みにしている。これからは、ECとリアル店舗両方で顧客とスタッフとともにブランドを作り上げていきたい。