「WWDジャパン」8月24日号は「サステナビリティ特集2020 持続可能な企業への道」の第1弾として“透明性”に取り組む企業を特集している。環境負荷の測定や労働環境の把握など、サプライチェーンを透明化させていくことは決して容易ではないが、そこに取り組む意義を見いだし、業界全体に変化を生み出そうとしている企業も存在する。透明性を重視する11人に取り組む理由を聞いた。
森摂/「オルタナ」編集長
企業はサプライチェーンにおけるネガティブな要素も目に見える形で説明する責任がある。それらをポジティブな要素に転換していくことこそが透明性に取り組む意義だろう。消費者の情報感度が上がっている昨今、企業の社会対応力が問われている。できていることもできていないことも透明性をもって開示することが結果的には信頼獲得のための最短距離となるはずだ。
レベッカ・マーモット/ユニリーバ チーフサステナビリティオフィサー
世界最大級の消費財企業であるユニリーバにとって、事業活動を把握し、状況を共有することは非常に重要。だからこそ、何をしているのかをオープンにし、進捗状況を報告し、さらにやるべきことがあれば公表する。また、サステナビリティの目標を達成するためには、さまざまなパートナーとオープンに協力する必要がある。透明性を保つことは企業が政府やNGO、そのほかのパートナーと協働し、社会全体のシステムをよりサステナブルに変えていくための鍵だと考えている。
セバスチャン・コップ/ヴェジャ創業者
ダフト・パンクのドキュメンタリーの中で、音楽プロデューサーのジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)が、3つの異なるマイクを設置した部屋で彼らのアルバムを録音していた。古いもの、一般的なもの、そして未来的なもの。彼は一緒に作業をしていた技術者に「一般の人がマイクの音の違いに気付くと思う?」と聞くと、技術者は「いいえ。しかしダフト・パンクはそれらの違いを生み出すでしょう」と答えた。まさに私たちの哲学と重なると感じた。私たちはやるべきことを誰よりも先に行い、人々が私たちを探り出せば、その取り組みを理解するだろう。私たちが目指すのは、「地球と人に敬意を表するスニーカー」を作ることだ。
シダーサ・シュクラ/「セオリー」チーフブランドオフィサー、ウェンディ・ウォー/サステナビリティ&原材料担当シニアバイスプレジデント
「セオリー(THEORY)」の服を作る人や着る人、地球に対して果たすべき責任へのコミットメントとして、2020年春に「Theory For Good」 をローンチした。25年までに全ての代表的な素材について、完全トレーサビリティーの実現を第一目標に、服作りの変革を進めている。ファッション産業が進化するためには、未来を考え、透明性を高め、一つ一つの素材に責任を持つべき。同じ志を持ったサプライヤーと共に進化を続けたい。
ティム・ブラウン/オールバーズ共同創業者
私たちはカーボンフットプリントのゼロ化を実現することを目標に起業した。全商品にカーボンフットプリントを表示したのは企業として責任を持つためであり、また、あらゆる食品にカロリー表示がされているのと同じようにカーボンフットプリントを見て消費者が物を選ぶ時代が来ると信じているから。そうすれば一人一人の意識が変わり、行動も変わるはずだと思う。私たち人間がこの地球上に住み続けるには、ビジネスも社会もカーボンニュートラルに向けて、取り組む必要がある。
マイケル・プレイズマン/エバーレーン創業者
透明性を追求することは信頼を築くことにつながる。私たちは商品の質やモノの真価を伝えるための情報を開示することで、消費者に賢い選択をするための力を与えたいと思っている。製造原価、労働環境、環境負荷全てにおいて透明性を追求することで、私たちは説明責任を果たすことができ、われわれのブランドに携わる人々とこの地球を守ることができる。
デイブ・マンツ/花王執行役員ESG部門統括
透明性とはステークホルダーがわれわれを信頼のおけるパートナーとして、そして持続可能な社会の実現に欠かせない企業として受け入れるために知りたいと願うことによって定義付けられるものだ。今日においてはステークホルダーの信頼はどの企業、ブランドにとってもビジネスの成功の基本である。そのためわれわれは、透明性とは絶対的に欠くことができないものであると考える。情報開示にあたっては目標達成までの長い道のりのどの地点にいるのか、敬意と公正さを持って、誠実に説明することを何よりも重視している。
ハビエル・ゴジェネーチェ/エコアルフ創業者
われわれが使用したいと考えるリサイクル素材はサプライヤーとの密接な協力があってようやく開発ができるもので、そもそも透明なサプライチェーンの構築が不可欠だった。そのため創業当初から透明性に取り組み、スペインで初めてB Corp認証を取得した。われわれは“Storytelling”ではなく、“Storydoing”のブランドだ。問題を発信するだけでなく、実際に行動して解決の一助になりたいと思っている。
福田稔/ローランド・ベルガー パートナー
現在、世界でESG(環境・社会・ガバナンス)銘柄に対して投資が進んでいる。ESGにきちんと取りかかる企業は成長性が高く、利回りがよいということが分かってきているからだ。当然ESGは透明性を持って活動内容を把握し、公表していくことが前提となる。また、これまでの“ちょっとエコ”のような柔らかい打ち出し方では消費者に響かなくなってきているのが現実だ。企業はより本質的な活動が見られていくことを意識するべきだ。
ジェローム・ブリュア/日本ロレアル社長
ロレアルでは、企業行動は経済的活動や製品の質などと同様に重要と考えている。世界的な模範企業になることを目指し、倫理をわれわれのビジネスの中核に根差している。当社の倫理規範は「誠実さ」「尊重」「勇気」「透明性」の4つ。透明性は私たちの価値観を形成するコアであり、企業文化を形成する重要な要素だ。私たちの行動や決定を正しいものとするために、常に誠実でいなければならない。そのために透明性は必要不可欠なものだ。
豊島半七/豊島社長
透明性の要素の一つとしてトレーサビリティーが正確に取れることが挙げられる。この考えから昨年3月にオーガニック綿花農場から紡績工場までを運営するトルコのウチャクと日系向けのオーガニックコットン糸の独占販売契約を結んだ。綿花のトレーサビリティーを確保することは生産者の顔が見えるという新たな価値と同時に双方の責任を生み出す。世界へ発信する上で“TRUECOTTON”という名前をつけて販売することが、一般的には難しいと言われる綿花の透明性を高めると考える。