ファッション

「THREE」「ファイブイズム」のクリエイティブ・ディレクターが語るファッション×ビューティの可能性

 「THREE」と、派生するメンズメインの総合ブランド「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」は、既成概念にとらわれない“個性”や“美しさ”を提案してきた。そのブランドアイデンティティーを支えるのが、両ブランドのグローバル・クリエイティブ・ディレクターを務めるRIE OMOTOだ。メイクアップアーティストとしてモード界で活躍し、ファッションとビューティの枠を超えたクリエイティビティーを発信する。OMOTOディレクターに発想の原点やファッションとビューティの融合の可能性について聞いた。

WWD:2019年に「ファイブイズム バイ スリー」の新作発表会をファッションショー形式で行った。ファッションとの融合を図る狙いは?

OMOTOディレクター:「ファイブイズム」はインディビジュアリティー(個性)を表現するブランドです。個性の表現に体は欠かせません。トータルビューティで見せないと意味がない。ファッションとヘア&メイク、音楽を組み合わせて表現することでメッセージがより伝わり、印象にも残ると思ったんです。私はただ製品を見てほしいのではなく、人間像を提案したいんです。

WWD:今年7月には東京・渋谷、宮下公園の複合型商業施設ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)内のショップのオープンを記念してファッションブランド「ハイク(HYKE)」と「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」とコラボした。

OMOTOディレクター:「N.ハリウッド」の尾花大輔さんとはニューヨーク・コレクションなどでご一緒したことがありました。「ハイク」の吉原秀明さんとは面識がありませんでしたが、生き方を提案するブランドの哲学に共通点を感じていました。どちらのブランドも感覚が鋭い面がありながら、モノ作りの基礎もしっかりしている。「THREE」と「ファイブイズム」に通ずるところがあり、今回のコラボに至りました。クリエイティブな仕事をしているお互いが、良い刺激を与え合うことができました。

ファッションとビューティを
融合させる発想の原点

WWD:ファッションとビューティを融合させる発想はどこから?

OMOTOディレクター:大きなきっかけは、19歳で雑誌「i-D」に憧れてイギリスに渡ったことでしょう。メイクとヘア、洋服が一つになって“ファッション”なのだと教えられました。日本で美容師として働いていましたが、メイクとファッションがつながっていない、メイクとヘアさえ交わっていないことにずっと違和感を覚えていました。私自身は小さい頃からファッションも大好きだったので、美容室に来たお客さまと一緒にブティックに行って、髪型に合う洋服を一緒に選ぶなどもしていました。ファッションは“こうなりたい”というビジョンを大胆にドリーミーに表現できる一方、従来のメイクは“鼻を高く見せたい”とか、“目を大きく見せたい”など、自分のコンプレックスと向き合う現実的な作業でした。私は鼻が低いならそれをファッションの力を借りながらチャーミングに見せる方法を考えればよいと思う。常にファッションとしてバランスを取るべきだと考えています。

WWD:当時なぜ、ファッションではなくメイクの道を選択したのか?

OMOTOディレクター:ファッションデザイナーの道を考えたこともありました。渡英直後はコシノミチコさんのブティックで働かせてもらい、デザイナーのお仕事を見てきました。けれどメイクの仕事を通して、ブラシのワンストローク、ラインの1本で人が美しく変化した瞬間に、とりこになっていたんです。

WWD:モード誌の撮影などファッションの現場を多く経験しているが、そこでの経験は「THREE」「ファイブイズム」にどう生かされている?

OMOTOディレクター:ファッションシューティングの現場では、トータルビューティのつくり方を学びました。それは波乗りの感覚に似ています。モデルやスタイリスト、フォトグラファー、ネイリストといったスタジオのさまざまなところから湧き上がるウエーブをキャッチして、いかに皆と同じ表現に向かって一つの波に乗れるかということです。現場では「70年代のイメージで」という会話が交わされますが、誰かが教えてくれるわけではないので、自分で勉強していくことでファッションを通して時代の流れを察知する力も磨きました。ファッションの仕事に関わると、自分の殻を破って自由に表現する面白さに気付きます。日々自分への挑戦ですから、美意識を高めて自分磨きを怠らず、同時になんでも吸収できる柔らかい自分でいる姿勢も学びました。

ファッションとビューティを
掛け合わせて業界全体にウエーブを

WWD:今後ファッションブランドと挑戦したい企画などはあるか?

OMOTOディレクター:ファッションシューティングの現場を疑似体験できるようなコンセプトショップを作ってみたいです。ショップの名前は「HEAD-TO-TOE」などでもいいかもしれない。ファッション、ヘア、メイクアップ、スキンケア、ネイルそれぞれのプロフェッショナルがいて、そのスタイルに合った音楽やアートまでも提案してくれるような空間です。個性を磨く一つの体験として面白いのではないでしょうか。

WWD:業界全体を通してファッションとビューティが近付くには何が必要?

OMOTOディレクター:イベントやコラボなどを通してもっと深く関わってほしいですね。「パフュームを持っているファッションブランドとはコラボできない」といった業界の“政治”はもう不要です。お互いの価値を認め合っているブランド同士が積極的にコラボしあうことで、業界全体にウエーブを起こしたいです。

WWD:あらためて「THREE」「ファイブイズム」で今後成し遂げたいことは何か?

OMOTOディレクター:世界平和です。大げさに聞こえるかもしれませんが、自分がチャーミングになって褒められる経験は、人を幸せにします。自信がつくことで人は積極的に他人とつながろうとします。小さいけれど、美しさを通して人と人をつなげることは今すごく大切。人間はすごく単純な生き物で、考え方一つで見た目も変化します。だからこそ、「THREE」も「ファイブイズム」も美しく健康に楽しく生きられるマインドを磨くブランドでありたいと思います。

※ファッション週刊紙「WWDジャパン」はこのほど、ビューティ・コンテンツも加えてパワーアップします。第1弾となる9月7日号では、「ファッション×ビューティの可能性」をテーマに両業界を自在に行き来する業界人を特集します。

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