ワコールはギンザ シックス(GINZA SIX)4階に8月26日、新業態「ワコールメゾン(WACOAL MAISON)」をオープンした。メゾン=家という名のとおり、254平方メートルの広々とした店舗は邸宅風の作りで、一見ランジェリーショップには見えない。エントランスには多くの観葉植物が置かれ、「ここは何のショップだろう」と思わず入りたくなるようなリラックス感がある。
ショップに入ると、右手にライブラリー、左手にサンルームをイメージした空間がある。リビングルームを想定した中央の空間にはビンテージのワードローブが置かれ、ソファのある左右の売り場スペースと合わせるとまるで大きなウオークインクローゼットのようにも見える。その奥にはサロンがあり、左手にはゆったりしたフィッティングルーム、その奥のシャワールーム風の空間には3Dボディー スキャナーが置かれている。自分の体をさらさなければならないデジタル計測やフィッティングも、まるでシャワーを浴びてワードローブ選びをするような演出を施すなど、すみずみに気配りが感じられる。右手のVIPルームはさらに広々としており、自然光の入るプライベートな空間でゆったりとランジェリー選びができるようになっている。もちろんVIPルーム専用の3D ボディー スキャナーも設置されている。ワコールメゾンのビューティアドバイザーは、航空会社のファーストクラスのキャビンアテンダントと同レベルのホスピタリティートレーニングを受けており、VIP顧客の購入履歴などのデータをもとにVIPルームに顧客の好みに合いそうな商品をそろえて提案することも可能だという。
ワコールメゾンで販売されるブランドはワコールのプレステージブランドが中心で、「ワコール ディア(WACOAL DIA)」「トレフル(TREFLE)」「サルート(SALUTE)」、インポートインナーの「ハンロ(HANRO)」のほか、一部「スタディオファイブ(STUDIO FIVE)」などで、今後はカスタムオーダーの「デューブルベ(DUBLEVE)」も取り扱う。サンルームは店舗の外から見える空間なのでプロモーション的な役割を果たし、今は「ワコール ディア」のブラックのランジェリーが展示されている。ライブラリーは、カップルや家族の来店者がゆったりくつろげるようにアートや下着関連の書籍が置かれているほか、メンズラインもある「ハンロ」のコーナーを設ける。リビングルームは、カラー別にブランドミックスで構成されている。百貨店の下着売り場に見られるボディーはサンルームの展示空間とワードローブ横に1体だけだ。
ワコールメゾンのコンセプトに関して、ワコールの井上博文・執行役員 卸売事業本部 販売統括一部長は、「世界中を旅した女性の邸宅がコンセプト。住みたくなるような空間、その日の気分でワードローブを選べるような雰囲気にした。基本的に家にないものは置かず、什器やインテリアにもこだわった。心地よく下着選びをしてもらえる空間になっている」と話す。通常なら狭いフィッティングルームもこの店舗では23平方メートルと広々としている。消費者が下着売り場やフィッティングルームの狭さに対して満足していないという仮説を立て、“メゾン=家”というコンセプトを打ち出したという。「ギンザ シックス内の他店舗との親和性も考えて空間を構成した。2年をめどに採算が取れるようにしたい。まずは、ワコールメゾンの顧客づくりからだ。ゆくゆくは多店舗化も視野に入れている」と井上執行役員。
ギンザ シックス リテールマネジメント営業部の篠丸由紀氏は、「ギンザ シックスの顧客の7割が20~40代で富裕層が多く、リピート率も高い。テナントの半分が旗艦店ということもあり、空間の心地良さを体験してもらっている。今まで館内にランジェリーショップがなく問い合わせが多くあった。世界的ブランドである『ワコール』の出店が実現し、今後が楽しみだ」と言う。新型コロナウイルス感染拡大でインバウンド客が激減したとはいえ、都内や地方の富裕層の高い支持があるようだ。
コロナ感染拡大でソーシャル・ディスタンシングが重要視される今、オンラインでのショッピングが増えているが、ワコールメゾンのラグジュアリーな空間で久々に実店舗におけるショッピングの高揚感を味わってみてはいかがだろう?