ファーストリテイリンググループで社内改革を推進する「有明プロジェクト」をけん引し、史上最年少で上席執行役員に昇格した神保拓也はこのほど、人の「心に火をつける。」ことを目指し、株式会社トーチリレーを設立した。まず取り組む同社の主たる事業は、「心に火をつけることを主題に置きつつも、ティーチングやコーチングとは一線を画す」という「トーチング」。山に登るためのトーチ、登る山を見つけるためのトーチを提供する。ただ、その料金はタダだ。神保はなぜ、タダで「トーチング」を始めたのか?人の心に火が付くことで起こった、ファーストリテイリング時代の「ユニクロ(UNIQLO)」の「奇跡」をたどり、「トーチング」の魅力を考える(「トーチング」のビジネスモデルは、コチラから)。
(前回からの続き)
連続の「低評価」から1ランクアップ、あっという間に郊外のロードサイド店が単月ながら日本一の「ユニクロ」に。店長とスタッフ、そしてスーパーバイザーの心に火をつけた神保“隊長”は、すでに別の地方店のサポート業務に移っていたが、「自走が可能な組織になった」ロードサイド店の奇跡はとどまることを知らなかった。
そして神保“隊長”が最初に店舗を訪れてから1年半、離れてから10カ月。ロードサイド店のスタッフから、神保“隊長”のスマホにメッセージが届いた。半年間の総合成績で争う「U-1グランプリ」で表彰されることになり、全世界5000人の店長や本部社員、経営幹部が日本に集結する最重要イベントのコンベンションに、ロードサイド店の店長が招かれるという。すでに異動が決まっていた店長にとって、「U-1グランプリ」は文字通り最後の花道。初めての店舗朝礼で、「20代で執行役員になります。だからさっさと結果を出して、半年で、大きな店に異動します」と豪語し、スタッフに総スカンを食らってから2年。そのスタッフは、「店長がコンベンションの壇上で表彰されるのが、今から楽しみで楽しみで仕方ない。順位は当日発表。どんな結果かわからないが、2年間、彼を支えてきたことに悔いはない」と神保“隊長”に連絡してきたという。
結果は、2位だった。
連続の「低評価」を脱して、やっと1ランクアップしたあの時のように、スタッフは皆、悔しくて泣いた。
「日本制覇は叶わなかった。悔しくて、悔しくて、店長と泣いた」。
「私たちスタッフは、店長を日本一にさせてあげたくて、壇上に立たせてあげたくて、ただただみんな、そう思って頑張ってきた」。
「店長は、壇上で私たちスタッフに感謝の言葉を述べたかったみたい。でも壇上でスピーチができるのは、優勝店舗の店長だけ。2位だったことが悔しいのではなく、それができなくて泣いているのがわかった」。
「店長は、たくさんのことを教えてくれた。お客様のために前を向くこと、諦めないこと、そして勇気を出して変わること」。
「みんなにあれだけ愛された店長。『店長のために頑張ろう』と、みんなが思えた店長。人は、誰かのためにたくさん頑張れるんだ。それがチームなんだ。たくさんのスタッフ愛、上司愛を教えてくれた」。
こんなメッセージが、神保“隊長”のもとに寄せられた。
神保“隊長”は、「低評価」だった店舗が、これだけの短期間で、全国2位にまで躍進したこと、そして嬉し涙ではなく悔し涙を流すまでに成長したことに心底驚いた。そして「人の心に火をつけること」「チームの心に火をつけること」の大切さを改めて学ぶ。これが、今のビジネスに繋がっていることは、言うまでもない。
(次回に続く)
お知らせ:申し込み殺到中という神保“隊長”のトーチングを受けてみませんか?「WWD JAPAN.com」は取材させていただくことを条件(企業名や個人名は匿名でも構いません)に、トーチングを受けたいファッション&ビューティ業界の皆さまを募集します。トーチリレーの業務には、アナタの登る山を見つけたり山への登り方を一緒に考えたりするトーチングと、神保“隊長”の経験を語るグループ向けのセッションがあります。どちらでも構いません。ご興味がある方は、コチラまで簡単な自己紹介をお送りください。神保“隊長”と相談の上、ご返信差し上げます(お送りいただく情報は取材後、速やかに破棄します)。