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「セフォラはブランドの味方だ」 競合との差別化や新型コロナ禍の戦略について米セフォラCEOが語る

 米セフォラ(SEPHORA AMERICAS)のジャン・アンドレ・ルージュ(Jean-Andre Rougeot)最高経営責任者(CEO)に、コロナ禍におけるビジネス戦略から黒人の人権を掲げた一連の抗議運動に対する取り組みに至るまで話を聞いた。ルージュCEOはメイクアップブランド「ベネフィット(BENEFIT)」で12年間のCEO経験もあり、ブランドとリテール双方でのビジネスを熟知している人物だ。

若手ブランドの投資で競合と差別化

 かつては米国で業界の一強であったセフォラだが、近年は化粧品専門店のウルタ(ULTA)がカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner) の「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」や「モルフィー(MORPHE)」といったZ世代に人気のあるブランドを扱うなど、競合他社が勢いを増している。ユーロモニター(EUROMONITOR)によると、ウルタは米国におけるマーケットシェアの26.7%を占めており業界1位、セフォラは2位の「バス&ボディワークス(BATH & BODY WORKS)」に次ぐ3位でシェアは14.9%だ。業界3位といえども、プレステージビューティにといては百貨店のメイシーズ(MACY’S)の上を行くセフォラの存在感の大きさに変わりはない。

 「われわれはDNAが確立しているユニークなブランドを取り扱うことで、ほかとの差別化を図っている。例えばリアーナ(Rihanna)の『フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA)』や『タチャ(TATCHA)』『ドランクエレファント(DRUNK ELEPHANT)』『オラプレックス(OLAPLEX)』『パット・マクグラス ラボ(PAT MCGRATH LABS)』などは売り上げ面だけでなくリピーターの獲得においても大きな原動力になっている」。

 セフォラは将来有望な若手ブランドの発掘や育成、支援にもたけており、次世代ブランドにもすでに目を向けている。米人気インフルエンサーのパトリック・スター(Patrick Starrr)による新ブランド「ワン/サイズ(ONE /SIZE)」や歌手のセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)によるビューティブランド「レア ビューティ(RARE BEAUTY)」など、注目のブランドもいち早く導入している。

新型コロナ禍での戦略 ブランド支援やEC戦略に注力

 2019年にNYのタイムズスクエアにオープンした旗艦店ではメイクアップ製品が売り場の半分以上を占めているが、新型コロナウイルスによって4〜6月の米国でのメイクの売上高は前年比52%減の8億6900万ドル(約912億円)に落ち込んだ(NPD調べ)。一方で、スキンケアの売り上げが急伸しており、大きな可能性を見出しているという。中でも最近はクリーンスキンケアに注力している。「35歳以下をターゲットにした戦略として、4〜5年前にクリーンビューティの扱いを始めた。これまでスキンケアは比較的年齢層が高めの消費者からの需要が高かったが、最近は若者からの(スキンケアに対する)問い合わせが増えている。若者はクリーンスキンケアの環境に優しいパッケージや、使用方法等がわかりやすいところに興味を持っている。彼らはいくつもの高価なアイテムを求めているのではない」と説明する。

 また、セフォラは以前からEC事業にも力を入れてきたことも、新型コロナ禍で強みとなっている。パンデミック以前からEC化率は40%ほどとかなり高い水準だったが、今はその売り上げが70〜80%にまで高まっているという。「ウルタやメイシーズなど他社は新型コロナによる急速なEC需要の拡大に対応する用意ができていなかった。セフォラのサプライチェーンはパンク寸前だったが、(ECへの継続的な投資により)どうにか持ちこたえながら供給できた」という。

 そしてブランドと良好な関係を構築するために、コロナ禍では支払期日の順守など取り扱いブランドを支援している。「私たちはブランドとの約束を守り、30日以内に支払いを行った。多くのブランドの創設者たちは電話口で泣きながら『きちんと支払いをしてもらえたなんて信じられない』と言った。中には90日以上も支払いを引き延ばす小売店も存在するため、私たちが期日までに支払いを行うとは思ってもいなかったようだ。セフォラはブランドの味方だ。パンデミックのさなかでも強い企業であり続け、将来有望なブランドのサポートを適切に行うことで小売業界の模範となる」。

ダイバーシティーのために人員調整をはじめとした戦略

 セフォラが全ての人種にとって心地よく買い物ができる場所であるためには、改善すべき点もある。19年に黒人R&B歌手のシザ(SZA)がセフォラのスタッフに万引きを疑われ、警備員を呼ばれるに至った旨をツイートした騒動の後、セフォラは全店で1日休業し、従業員に対して偏見に関するトレーニングを実施した。セフォラでリーダーの役割を担う黒人はわずか6%に過ぎず、今後さらなる取り組みが必要とされている。

 また今年5月に黒人男性が白人警察に押さえつけられて窒息死した事件を受け、デザイナーのオーロラ・ジェームズ(Aurora James)が掲げる「15パーセント プレッジ(15 Percent Pledge)」イニシアチブに参加することを表明した。これは小売り店に対して黒人が手掛けるブランドを15%扱うように求めたもので、15%の数字は全米におけるおおよその黒人の割合に相当する。また21年には、新しいビューティブランドがビジネスのコツを学んで投資コミュニティーとの結び付きを得ることにもつながる「セフォラ・アクセレレート・プログラム」に、20〜25のBIPOC(black, indigenous and people of colorの略で、黒人、先住民および有色人種の総称)のブランド創設者を招き入れる予定だ。

 「全ての小売り店において偏見の問題は存在する。セフォラの顧客や従業員は多様性に富んでいるが、偏見が存在するのもまた事実だ。そのため、多様性に関するトレーニングやリーダーの多様化に向けた取り組みを全ての部署で行っている。ウェビナーを行い、有色人種の従業員の声に耳を傾けることで人種差別などの問題にも向き合っており、私も時々こっそりと話を聞いている。彼らのストーリーはとてもパワフルだ。ダイバーシティーに向けた今後のアクションを起こす上で大きなモチベーションになる」。

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