ファッション

買収断念のLVMHをティファニーが提訴 契約の履行を求め

 ティファニー(TIFFANY & CO.)は9月9日、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)を相手取り、合併契約の履行を求めて米デラウェア州裁判所に提訴した。LVMHがフランスの欧州・外務大臣から買収の完了日を2021年1月6日まで延期するよう要請されたことを理由に「現在の情勢では、ティファニー社の買収を完了できない」と断念する姿勢を示したことを受けて提訴に踏み切った。

 ティファニーは、買収にあたって競争当局への届け出が必要なところ、LVMHが届け出を行わなかっただけでなく、買収対象企業の事業などに重大な悪影響を及ぼす事由が発生した場合において買い手が取引を中止できる権利を規定する、いわゆるMAE条項が契約に盛り込まれていることを理由に契約を破棄しようとしていることに異議を申し立てている。一方のLVMHは、公式にはコメントを出していない。

 ティファニーによると、「合併契約において、最終期限を20年8月24日と定めており、独禁法上の承認だけが残っている場合は、同年11月24日まで期限を延長できる権利を互いに有するとしている。8月24日時点でLVMHは必要な3つの法域で届け出自体を提出していなかった。その他の条件については全て期限までに完了していたため、当社は11月24日に延長することを決めた。しかし、延長した期限も現時点で3カ月を切っており、いまだにLVMHがEUおよび台湾において必要な届け出申請をしていないこと、また日本とメキシコでは届け出が未処理であり、これらはすべてLVMHが努力義務を怠ったことに起因する」という。

 また、LVMHがMAE条項を理由に買収を中止しようとしている点についてティファニーは、「新型コロナウイルスや米国内の不安定な社会情勢を無理やり引き合いに出して当初予定していた価格での買収を取りやめようとしているにすぎない。MAE条項は狭義に定義されるもので、LVMHの主張する新型コロナウイルスや社会情勢はMAE条項に抵触するかどうかを検討するまでもなくMAE条項の対象に含まれない。むしろこの期間中、ティファニーの経済状況は、LVMHを含む他のラグジュアリー企業と比べても良好であった」と主張する。

 ティファニーのロジャー・ファーラー(Roger Farah)会長は、「残念だが訴訟を提起して企業と株主を守る以外に方法がない。本件に関して自信を持ってティファニーは義務を全て果たしていると言える。われわれはLVMHにも同様の姿勢を求める」とコメントしている。

 LVMHとティファニーは19年11月24日、LVMHがティファニーを162億ドル(約1兆7172億円)超相当で買収すると発表していたが、20年6月頃から新型コロナウイルスの影響や、黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件による市場への影響を危惧してLVMHがティファニーの買収を再考していると報道されていた。

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