サザビーリーグが手掛けるセレクトショップのエストネーション(ESTNATION)は10月2日、銀座店1階をオフプライスストア「エストネーション セントラル(ESTNATION CENTRAL)」としてリニューアルオープンする。2~3階はエストネーション銀座店の業態を継続するが、21年2月には全フロアをオフプライスストアとしてグランドオープンする。シーズン遅れの商品を30~50%引きで販売する。利用はエストネーションの会員に限定するが、その場で入会することもできる。
従来のエストネーション同様の陳列と接客で、エストネーションの買い付け品やオリジナル品、サザビーリーグ傘下でアウトレットストアを持たない「サザビー(SAZABY)」「カンペール(CAMPER)」「ハウス オブ ロータス(HOUSE OF LOTUS)」「メゾン スペシャル(MAISON SPECIAL)」に加え、エストネーションの取引先ブランドなどを並べる。また、ハイブランド専門の中古通販サイト「リクロ(RECLO)」と協業で顧客からの買い取りも行い、一部を店頭に並べる。想定客単価は3万円。
エストネーションカンパニーを率いる大田直輝カンパニープレジデントは、「サステナビリティやSDGsの価値観がスタンダードになる中で、何ができるかを考えた。在庫はわれわれ小売りが抱える命題であり、今あるものにどう価値を出していくかを考えた。19-20年秋冬は天候不順、暖冬、増税などさまざまな要因で在庫を通常より多く抱えることになり、20年春夏はTTA型コロナウイルスの影響で2カ月近く店を閉め、在庫は通常の2倍。“買い付けた責任”と“作った責任”を全うすべきだと考えた。ファッションカレンダーの見直しの声が高まる中で、セールの極小化も命題だ。通常店舗でのセール時期を短縮する目的もある」と語る。銀座店の業態転換を決断したのは、緊急事態宣言が解除され、店舗営業が再開され始めた5月末だった。
エストネーションはすでにアウトレットストアを2店舗持つが、銀座店の業態変換を決めたのは「郊外では価格競争に陥りやすく、取り扱いも煩雑になりやすい。ブランド価値を守りながら丁寧に一点一点をあらためて届けたいと考えた。それが持続可能性を追求することではないか」と語る。加えて、路面店である銀座店は「自分たちのやりたいことをストレートに表現できる」からだという。一方で、多くのハイブランドを扱うエストネーションにとって、旗艦店が集中する銀座でのオフプライスストアの運営は一筋縄ではいかない。「NGが多いのは事実。しかし、会員制で丁寧な陳列と接客で理解していただけるようにしたい。VIPルームを備えているので、陳列はせずに顧客向けのみに提案する形も考えている」。
通常店舗での買い付け品やオリジナル品については「適時・適品・適量がこれまで以上に求められる。すでに20-21年秋冬は商品量をこれまでの7割程度に抑えている。少し足りないかなというぐらいが目安だ。長い期間着られ、またシーズンを通して着ることができる中軽衣料のモノ選びとモノ作りを強化する。商品をより厳しく見極めていく」とする。
アウトレットストアはブランドやメーカーが抱えた余剰在庫を自ら値引き販売するのに対し、オフプライスストアは事業者が多数のブランドの余剰在庫を買い集めて値引き販売する。日本では昨年から今年にかけてワールド、ゲオグループ、ドン・キホーテがオフプライスストアの出店に乗り出している。米国では最大手であるTJXカンパニーの売上高が4兆円を超えるなど、存在感を放っている。